日本工業規格
JIS
C
6183
-1992
光スペクトラムアナライザ試験方法
Test methods of fiber-optic spectrum analyzer
1.
適用範囲 この規格は,光スペクトルのパワー分布を測定する光ファイバコネクタ用入力端子を備え
た分散分光方式の光スペクトラムアナライザ(以下,光スペクトラムアナライザという。
)の試験方法につ
いて規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1003
ディジタル電圧計試験方法
JIS C 6182
レーザビーム用光パワーメータ試験方法
JIS C 6830
光ファイバコード
JIS C 6831
光ファイバ心線
JIS C 6835
石英系シングルモード光ファイバ素線
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8120
光学用語
2.
用講の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 8103 及び JIS Z 8120 によるほか,次による。
(1)
光スペクトラムアナライザ 光ファイバコネクタ用の入力端子を持ち,入力端子に入射した光の時間
平均されたスペクトルの波長(周波数)に対するパワー分布を測定し,画面に表示する機能を持つ光
測定器。
(2)
測定波長範囲 仕様に記載されている性能規格を満たす入射光の波長範囲。
(3)
波長掃引幅 表示画面のフルスケールに表示される波長の範囲。
(4)
スペクトル分解能 光を単色光成分に分解する分解能。輝線スペクトルを測定したとき,表示される
スペクトル半値幅(ピーク値より 3dB 下がった点の波長間隔)を分解能とする。
(5)
パワーレベル 光スペクトラムアナライザの分解能当たりのパワーレベル。光スペクトラムアナライ
ザの場合,設定分解能当たりのパワーレベルが測定され表示される。
(6)
近傍ダイナミックレンジ 光スペクトラムアナライザで波長の近接した二つの光スペクトルのパワー
比を測定するとき,検出可能な最大パワー比。
(7)
高次(低次)光応答 回折格子を用いた光スペクトラムアナライザに現れる特有の応答で,波長
λ
の
光を測定したとき,m
λ
及び
n
λ
(ただし,m,n は整数)の波長の所にあたかも信号光として観測される
光出力。m=1 及び n=1 の 1 次光(基本光)に対し,m≧2 の光出力を高次光,n≧2 の光出力を低次
光という。
(8)
ゴースト及び迷光レベル 光スペクトラムアナライザに信号光を入射したときの信号光のスペクトル
及びその高次(低次)光以外のスペクトルで,入力光による光スペクトラムアナライザの漏えい(洩)
光成分。
2
C 6183-1992
ゴースト及び迷光レベルは,光スペクトラムアナライザに単色光を入射し,その測定波長範囲全域
でのスペクトルのパワー分布を測定したとき,信号光のスペクトルのレベルと信号光及びその高次
(低
次)光を除いたスペクトルの最大値とのレベル比で表す。
3.
標準試験条件 光スペクトラムアナライザ(以下,被試験器という。)を試験するとき標準となる条件
は,規定がない限り次のとおりとする。標準試験条件で試験することが困難な場合は,実施した条件及び
その影響について試験結果に記録しなければならない。
(1)
温度 23±2℃
(2)
相対湿度 (65±10) %
(3)
光ファイバ 光ファイバ長は 2m 以上とし,JIS C 6830,JIS C 6831 及び JIS C 6835 で規定されたシ
ングルモード光ファイバを用いる。
4.
試験の概要
4.1
試験の種類 光スペクトラムアナライザの性能は,波長確度及びパワーレベルの確度試験並びにス
ペクトル分解能,近傍ダイナミックレンジ,高次(低次)光応答,ゴースト迷光レベル,過負荷及び強度
の各試験を行って評価する。ただし,これらの各試験は評価項目の次元が異なるので,これらによって得
られた誤差は各項目ごとの評価値とし,それらを足し合わせて総合誤差とすることはしない。
4.2
確度の算出方法 光スペクトラムアナライザの測定確度は,波長確度とパワーレベル確度について
評価する。評価方法は,まず固有誤差試験で標準試験条件での固有誤差を求め,次に各個別誤差試験で被
試験器の部分誤差を求める。各誤差はパーセント (%) で求め,動作誤差の限界を式(1)及び式(2)によって
算出し,被試験器の確度とする。
なお,式(1)及び式(2)は JIS C 6182 で規定された評価式を用いる。
2
te
2
ti
1
2
cx
ti
1
tu
2
ε
ε
ε
ε
ε
+
+
+
=
=
=
å
å
i
p
i
p
(1)
2
te
2
ti
1
2
cx
ti
1
tu
2
ε
ε
ε
ε
ε
+
+
−
=
=
=
å
å
i
p
i
p
(2)
ここに,
ε
tu
:
動作誤差の上限
ε
t1
:
動作誤差の下限
ti
ε
:
部分誤差の上限,下限の平均値
2
1
tl
1
tu
ε
ε
+
ε
cx
:
被試験器の固有誤差(標準試験条件での被試験器の確度)
ε
t1
2
:
部分誤差の分散
(
)
12
2
1
tl
1
tu
ε
ε
−
ε
tui
:部分誤差の上限
ε
tl1
:部分誤差の下限
i
:
各部分誤差に対する添字
p
:
部分誤差の数
ε
te
:
測定値のばらつきの標準偏差
5.
波長確度試験
5.1
波長確度試験の概要 波長の確度を決める誤差要因は,被試験器の固有誤差と,個別誤差試験での
波長依存特性と温度依存特性による部分誤差からなる。波長の総合確度は,固有誤差と部分誤差を式(1)及
び式(2)に代入して求める。
3
C 6183-1992
5.2
固有誤差試験 図 1 に波長確度の固有誤差試験の試験系を示す。試験は,標準試験条件で行う。
図 1 波長確度の固有誤差試験の試験系
(1)
装置
光源:被試験器にその校正用光源が規定されている場合には,その光源を使用する。規定されていな
い場合は,光源のスペクトル半値幅が被試験器のスペクトル分解能より十分狭く,かつ,その波長安
定度が被試験器に規定された波長確度に対して十分よい光源を用いる。
表 1 に推奨する光源を示す。
表 1 推奨光源
光源
波長 nm
Ar
レーザ 487.9
514.5
He
−Ne レーザ 632.8
1
152
1
523
(2)
試験 図 1 の測定系で,光源の波長に対して,被試験器の波長掃引幅はその波長を含むように設定し
ておく。
また,被試験器の分解能は,式(3)を満足するように設定する。
N
S
R
≧
(3)
ここに,
R
:
光スペクトラムアナライザの設定分解能
S
:
波長掃引幅
N
:
表示ポイント数
光源の波長
λ
0
に対して,被試験器で測定されたピーク波長を
λ
1i
とする。この測定を
10
回以上繰り
返して行い,
λ
1i
のばらつきを求める。
波長について被試験器の標準試験条件での固有誤差
ε
cx
は,式
(4)
で求める。
2
ct
2
sx
cx
ε
ε
ε
+
=
(4)
ここに,
ε
sx
:
光源の波長の固有誤差
ε
ct
:
固有誤差試験時の測定値のばらつきの標準偏差,ただし,
( )
(
)
0
1
2
0
i
1
ct
100
λ
λ
λ
ε
×
å
m
m
i
=
−
=
%
(5)
m
は測定回数。
光源に波長の安定なガスレーザを用い,その性能が被試験器の波長確度に対し十分によい場合は,
光源の固有誤差
ε
sx
は無視してよい。
5.3
個別誤差試験
5.3.1
波長確度の個別誤差要因 波長確度の個別誤差要因は,次の 2 項目による部分誤差からなる。
(1)
波長依存特性
4
C 6183-1992
(2)
温度依存特性
被試験器の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
te
)
は,光源の波長安定度が被測定器の性能に比べ十分よい
場合には固有誤差試験での校正時の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
ct
)
と同一とみなせるため,被試験器
の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
te
)
は無視してよい。
5.3.2
波長依存特性 図 2 に波長依存特性の試験系を示す。試験は,標準試験条件で行う。
図 2 波長依存特性の試験系
(1)
装置
光源:スペクトル半値幅が被試験器のスペクトル分解能より十分狭く,かつ,その波長安定度が規定
された波長に対して十分よい光源を用いる。推奨する光源を
表 1 に示す。
波長計:光源の波長を測定するもので,波長試験の精度に対して十分な性能をもつものを用いる。
(2)
試験 図 2 の試験系で,光源の波長は,波長計で測定した値
λ
0n
とする。
次に被試験器に光源からの光を入射し,被試験器の指示値
λ
1n
を読み取る。
λ
0n
以外の波長での誤差
ε
(
λ
n
)
は式(6)で求める。
( )
( )
100
0
0
1
n
×
n
n
n
−
=
%
λ
λ
λ
λ
ε
(6)
次に波長を変えて同一の試験を行い
ε (λ
n
)
を求める。波長依存特性に基づく部分誤差の上限
ε
tui
は
ε
(
λ
n
)
の最大値で,下限
ε
t1i
は
ε (λ
n
)
の最小値で求める。
5.3.3
温度依存特性
図 3
に波長確度の温度依存特性の試験系を示す。試験は,温度を除き標準試験条件
で行う。
図 3 波長確度の温度依存特性の試験系
(1)
装置
光源:被試験器にその校正用光源が規定されている場合にはその光源を用いる。規定されていない場
合は,光源のスペクトル半値幅が被試験器のスペクトル分解能より十分狭く,かつその波長安定度が
被試験器に規定された波長確度に対して十分よい光源を用いる。
表 1
に推奨する光源を示す。
(2)
試験
試験は,標準試験条件及び被試験器に規定された使用温度範囲の上限,下限を含めた 5 点以上
の試験温度 (T
n
)
で,入射光の波長
λ
n
の測定を行う。入射光の標準試験条件での波長を
λ
0
とし,被試
験器での指示値を
λ
1n
とする。波長の誤差は式
(7)
で求める。
( )( )
100
%
T
0
0
n
1
n
×
λ
λ
λ
ε
−
=
(7)
温度依存特性による波長の部分誤差の上限
ε
tui
は
ε (T
n
)
の最大値で,下限
ε
tli
は
ε (T
n
)
の最小値で求め
5
C 6183-1992
る。
6.
パワーレベル確度試験
6.1
パワーレベル確度試験の概要
パワーレベルの確度を決める誤差要因は,被試験器の固有誤差と,
個別誤差試験での波長依存特性,偏光依存特性,直線性及び温度依存特性による部分誤差からなる。パワ
ーレベルの総合確度は,固有誤差と部分誤差を式
(1)
及び式
(2)
に代入して求める。
6.2
固有誤差試験
図 4
にパワーレベル確度の固有誤差試験の試験系を示す。試験は,標準試験条件で
行う。
図 4 パワーレベル確度の固有誤差試験の試験系
(1)
装置
光源:出力 0.1mW (−10dBm) から 1mW (0dBm) までの安定な光ファイバ出射光が得られ,被試験器
に規定された分解能より十分狭いスペクトル半値幅をもつ光源を用いる。
表 1
に推奨する光源を示す。
光パワーメータ:標準試験条件で次のいずれかによって校正されたものを用いる。
(a)
校正業務を行う公的機関で校正されたもの
(b)
(a)
を基に所定の基準で校正されたもの
(2)
試験
図 4
の試験系で,被試験器の分解能は測定に用いる光源のスペクトル半値幅より十分大きく設
定する。光源からの光を光ファイバに導入し,光ファイバ出射光が測定に最適なパワーとなるように
する。この際,光ファイバ出射光は基準の光パワーメータであらかじめ測定し,その値を
P
0
とする。
次に上記光ファイバ出射光を被試験器に接続し,被試験器で測定されたパワーレベルを読み取り
P
1i
とする。測定値はリニアスケール(mW 又は
µW 単位)で読み取る。この測定を 10 回以上繰り返して
行い,
P
1i
のばらつきを求める。
パワーレベルについて被試験器の標準試験条件での固有誤差
ε
cx
は,式
(8)
で求める。
2
ct
2
sx
cx
ε
ε
ε
+
=
(8)
ここに,
ε
sx
:
基準の光パワーメータの固有誤差
ε
ct
:
固有誤差試験時の測定のばらつきの標準偏差,ただし,
( )
(
)
0
1
2
0
i
1
ct
100
P
m
P
P
m
i
×
å
=
−
=
%
ε
(9)
m
は測定回数。
6.3
個別誤差試験
6.3.1
パワーレベルの個別誤差要因
パワーレベルの個別誤差要因は,次の各項目による部分誤差からな
る。
(1)
波長依存特性
6
C 6183-1992
(2)
偏光依存特性
(3)
直線性
(4)
温度依存特性
被試験器の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
te
)
は,光源のパワーレベルの安定度が被測定器の性能に比
べ十分よい場合には固有誤差試験での校正時の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
ct
)
と同一とみなせるため,
被試験器の測定値のばらつきの標準偏差 (
ε
te
)
は無視してよい。
6.3.2
波長依存特性
図 5
に波長依存特性の試験系を示す。試験は標準試験条件で行う。
図 5 波長依存特性の試験系
(1)
装置
光源:ハロゲンランプなどを用いたパワーが安定な白色光源で,被試験器の試験波長範囲で必要な光
パワーが得られるものを用いる。
分光器:光源の出力を被試験器の試験条件での分解能以上で分光し,被試験器の試験波長範囲以上で
分光できるものを用いる。
波長計:分光後の光出力の波長を測定する。分光器の設定波長が校正されていれば必要ない。
光パワーメータ:波長依存性がないか,又は波長依存性の校正された光パワーメータを用いる。
レンズ 1:光源の出力を分光器に入力するレンズ系を用いる。
レンズ 2:分光器の出力を光ファイバに入力するレンズ系を用いる。
(2)
試験
図 5
の試験系で,光源,分光器及び光ファイバをレンズ 1,レンズ 2 で接続し,測定可能なス
ペクトル半値幅とパワーが得られるように化学系の調整をする。
(a)
環境温度を十分安定させた後,分光後の光出力を波長計に入射し,波長測定を行う。このときの波
長計の指示値を
λ
n
とする。
(b)
光パワーメータを使い分光後の光パワーを測定する。このときの光パワーメータの指示値を
S
0n
と
する。
(c)
分光器出射光を被試験器に入射する。この場合の被試験器のスペクトル分解能は入射光のスペクト
ル半値幅よりも広く設定する。被試験器の測定波長でのピークレベルの指示値を
S
1n
とする。波長
λ
n
での感度の誤差
ε (λ
n
)
は式
(10)
で求める。
( )
( )
100
n
0
n
0
n
1
n
×
S
S
S
−
=
%
λ
ε
(10)
(d)
波長設定を変えてこの試験を繰り返す(
λ
n
を変化)
。
波長依存特性に基づく部分誤差の上限
ε
tu1
は
ε (λ
n
)
の最大値で,下限
ε
t1i
は,
ε (λ
n
)
の最小値で求め
る。
7
C 6183-1992
この試験方法は,波長依存特性を連続的に測定するのに適した方法であるが,被試験器への入射
パワーが小さくなるため高精度な測定が難しい。高い試験確度を必要とするときは,分光器出射光
の代わりに幾つかの波長の異なる単一波長光源を試験光として用いる方法がある。ただし,この方
法では特定の波長だけの離散的な波長依存特性試験となる。
推奨する光源を
表 1
に示す。
6.3.3
偏光依存特性
図 6
に偏光依存特性の試験系を示す。試験は,標準試験条件で行う。
図 6 偏光依存特性の試験系
(1)
装置
光源:スペクトル半値幅が被試験器に規定された分解能より十分狭く,出力 0.1mW (−10dBm) から 1
mW (0dBm)
までの安定な光源を用いる。
表 1
に推奨する光源を示す。
偏光コントローラ:偏光子,及び
2
1
波長板を備えていて入力光の偏波面を 180°以上コントロールでき
る光ファイバ出力が得られるものを用いる。
光ファイバ:この場合の光ファイバ長は 1〜2m とし,
JIS C 6830
,
JIS C 6831
及び
JIS C 6835
で規定
されたシングルモード光ファイバを用いる。
(2)
試験
図 6
で,
被試験器の設定分解能は測定に用いる光源のスペクトル半値幅より十分大きく設定し,
次の手順で試験を行う。
光ファイバは,動かないように固定して,試験を行う。
(a)
光源(波長
λ
n
)の出力を,光ファイバ 1 によって偏光コントローラに入射し,その出力を光ファイ
バ 2 によって被試験器に入射する。
(b)
光ファイバ 2 の出射光を,偏光コントローラの偏光子で消光比 20dB 以上の直線偏光にする。
2
1
波長
板を回転させ,試験光の偏波面を 0°〜180°まで回転させる。そのときの被試験器での測定値の最
大値 R
1
(
λ
n
)
,最小値 R
2
(
λ
n
)
を記録する。
(c)
波長
λ
n
の偏光によるパワーレベル変動に基づく部分誤差の上限
ε
tu
(
λ
n
)
,下限
ε
t1
(
λ
n
)
は式
(11)
及び式
(12)
で求める。
( )
( )
( )
( )
( )
100
n
0
n
0
n
1
n
tu
×
λ
λ
λ
λ
ε
R
R
R
−
=
%
(11)
( )
( )
( )
( )
( )
100
n
0
n
0
n
2
n
1
t
×
λ
λ
λ
λ
ε
R
R
R
−
=
%
(12)
ただし,
R
0
(
λ
n
)
は,波長
λ
n
での偏光によるパワーレベル変動の平均値であり,
式
(13)
で求める。
( )
( )
( )
2
n
2
n
1
n
0
λ
λ
λ
R
R
R
+
=
(13)
8
C 6183-1992
(d)
異なる波長の光源で上記試験を繰り返す。
偏光によるパワーレベル変動に基づく部分誤差の上限
ε
tui
は
ε
tu
(
λ
n
)
最大値で,下限
ε
t1i
は
ε
t1
(
λ
n
)
の
最小値で求める。
6.3.4
直線性
図 7
に直線性誤差の試験系を示す。試験は,標準試験条件で行う。
図 7 直線性誤差の試験系
(1)
装置
光源:
6.2(1)
による。
可変減衰器:光パワーの試験範囲を可変できる可変減衰器を用いる。
光パワーメータ:測定光パワーレンジで確度の保証された光パワーメータを用いる。
(2)
試験
図 7
の試験系で,被試験器の分解能は,測定に用いる光源のスペクトル半値幅より十分大きく
設定する。被試験器への入射光パワーレベルがパワーレベルの固有誤差試験で用いた測定レベルにな
るように可変減衰器を調整し,そのときの被試験器による測定値と光パワーメータによる測定値の比
を
R
0
とする。
次に,可変減衰器によって被試験器への入射光パワーレベルを変化させ,そのときの被試験器と光
パワーメータの測定値との比を
R
x
とする。
被試験器への入射光パワーレベルを個別規格で規定した被試験器の入力レベル範囲内で 5 点以上の
光パワーレベルで測定し,
R
x
を求める。各
R
x
中の最大値を
R
1
,最小値を
R
2
とする。部分誤差の上限
ε
tui
及び下限
ε
t1i
は式
(14)
及び式
(15)
で求める。
( )
100
0
0
1
i
tu
×
R
R
R
−
=
%
ε
(14)
( )
100
0
0
2
i
1
t
×
R
R
R
−
=
%
ε
(15)
6.3.5
温度依存特性
図 8
に温度依存特性の試験系を示す。試験は,温度を除き標準試験条件で行う。
図 8 温度依存特性の試験系
(1)
装置
光源:
6.2(1)
による。
(2)
試験
図 8
の試験系で,被試験器の設定分解能を測定に用いる光線のスペクトル半値幅より十分大き
く設定する。まず,被試験器を標準試験条件で決められた温度に安定させ,被試験器への入射光パワ
ーは固有誤差試験で用いられた値になるようにする。このときの被試験器のパワー指示値を
P
0
とする。
次に,光ファイバはそのままの状態で,恒温槽の温度を被試験器に規定された使用温度の上限,下限
9
C 6183-1992
を含めた 5 点以上の任意温度に保持し,被試験器の指示値
P
x
を読み取る。その最大値を
P
1
,最小値
を
P
2
とする。部分誤差の上限
ε
tui
及び下限
ε
t1i
は式
(16)
及び式
(17)
で求める。
( )
100
0
0
1
tu
×
P
P
P
−
=
%
i
ε
(16)
( )
100
0
0
1
i
1
t
×
P
P
P
−
=
%
ε
(17)
7.
その他の性能試験
7.1
試験系
図 9
に試験系を示す。試験は,標準試験条件で行う。
図 9 試験系
7.2
スペクトル分解能
光源は,発振スペクトル半値幅が被試験器に規定された最小分解能より十分小
さい光源を用いる。試験用として推奨する光源を
表 1
に示す。
試験光のパワーは,測定に最適なレベルとなるようにする。
図 9
で,被試験器のスペクトル分解能を規定された値に設定し,スペクトルのピークレベルより
3dB
下
がった点の波長間隔を読み取りスペクトル分解能とする。
7.3
近傍ダイナミックレンジ
光源は,スペクトル半値幅が分解能より十分狭く,かつ測定誤差に影響
する他のスペクトル成分のレベルが被試験器に規定された近傍ダイナミックレンジより十分小さい光源を
用いる。試験用として推奨する光源を
表 1
に示す。
試験光のパワーレベルは,測定に最適なレベルとなるようにする。
図 9
で,被試験器は規定された分解能に設定する。このときのピークパワー
P
1
,ピーク波長から⊿
λ離れ
た波長でのパワー
P
2
を読み取る。
近傍ダイナミックレンジ
DR (dB)
は,式
(18)
で求める。
1
2
10
log
10
P
P
DR
=−
(18)
⊿
λの値は,被試験器に規定された値を用いる。被試験器に規定がない場合の推奨値としては,
0.5nm
,
1nm
,
5nm
及び
10nm
がある。
また,試験結果には,⊿
λの値を併記する。
7.4
高次(低次)光応答
光源は,スペクトル半値幅が分解能より十分狭く,かつ測定誤差に影響する
他のスペクトル成分のレベルが被試験器に規定された高次
(低次)
光レベルより十分小さい光源を用いる。
試験用として推奨する光源を
表 1
に示す。
試験光のパワーは,測定に最適なレベルとなるようにする。
図 9
で,被試験器の測定波長範囲全域にわたり,入射光の波長の整数倍及び整数分の一のスペクトルの
レベルを測定する。このときの入射光のピークパワー
P
1
,高次(低次)光のピークパワー
P
2
を読み取る。
高次(低次)光応答
H (dB)
は式
(19)
で求める。
1
2
10
log
10
P
P
H
=−
(19)
10
C 6183-1992
備考
被試験器が,回折格子の
1
次以外の回折次数を利用して光スペクトルを測定している場合には,
信号光の高次(低次)光の
k
1
(
k
は被試験器が利用している回折次数)が高次(低次)光とみな
せる。
例えば,
2
次の回折光を利用している光スペクトラムアナライザでは,信号光に対して,
2
λ,
3
λ,……などの高次光のほかに
2
3
λ
,
2
5
λ
……などが高次光として観測されることがある。
7.5
ゴースト及び迷光レベル
光源は,スペクトル半値幅が分解能より十分狭く,かつ測定誤差に影響
する他のスペクトル成分のレベルが被試験器に規定されたゴースト及び迷光レベルより十分小さい光源を
用いる。試験用として推奨する光源を
表 1
に示す。
試験光のパワーは,測定に最適なレベルとなるようにする。
図 9
で,被試験器の分解能の設定は,被試験器に規定が無い場合には被試験器で設定できる最低分解能
で試験する。被試験器の測定波長範囲全域で,入射光のピークパワー
P
1
と入射光及びその高次(低次)光
を除いたスペクトルのピークパワー
P
2
を読み取る。
ゴースト及び迷光レベル
S (dB)
は,式
(20)
で求める。
1
2
10
log
10
P
P
S
=−
(20)
8.
過負荷試験
被試験器に指定された最大許容レベルの光パワーを
10
分間連続入射し,
パワーレベル確
度試験の直線性試験を行う。
この試験に使用する光源は,被試験器に規定された波長範囲のものとする。最大許容レベルの指定が無
い場合は,最大測定レベルの
2
倍の光パワーで試験する。
また,最大許容レベルの光出力が得られない場合は,試験条件を明記する。
9.
強度試験
機械的な振動及び衝撃を与えて被試験器の損傷及び特性の変化の有無を試験する。
なお,被試験器が機械的にぜい(脆)弱な構造となっていて,強度試験によって回復不可能となるおそ
れがある場合には,この試験を省いてもよい。
(1)
振動試験
振動試験は,
JIS C 1003
の
8.3
(振動)による。
(2)
衝撃試験
衝撃試験は,
JIS C 1003
の
8.4
(衝撃)による。
11
C 6183-1992
財団法人 光産業技術振興協会 光測定器標準化専門委員会 構成表(平成 3 年度)
氏名
所属
(委員長)
藤 瀬 雅 行
株式会社 ATR
青 山 耕 一
日本電信電話株式会社
芦 川 栄 晃
株式会社東芝
石 川 邦 男
株式会社島津製作所
稲 葉 裕 俊
工業技術院標準部
大 岡 隆 雄
アンリツ株式会社
川 原 淨 彦
島田理化工業株式会社
黒 田 宗 郎
株式会社日立製作所
小 宮 啓 行
財団法人機械電子検査検定協会
佐 藤 宗 純
工業技術院電子技術総合研究所
泉 対 信太郎
古河電気工業株式会社
田 中 憲 三
株式会社アドバンテスト
山 田 剛
藤倉電線株式会社
波 平 宜 敬
国際電信電話株式会社
堀 松 哲 夫
株式会社富士通研究所
村 田 明 弘
横河電機株式会社
森 基 祐
セイコー電子工業株式会社
山 本 英 夫
安藤電気株式会社
渡 辺 弘 光
三菱電機株式会社
(オブザーバ)
古 川 眞 一
日本電信電話株式会社
(事務局)
児 玉 重 則
財団法人光産業技術振與協会
佐 藤 矗
財団法人光産業技術振興協会