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B 8446-2

:2016

(1)

目  次

ページ

1

  適用範囲  

1

2

  引用規格  

1

3

  用語及び定義  

2

4

  リスクアセスメント  

4

4.1

  一般  

4

4.2

  危険源の同定  

4

4.3

  リスク見積り  

4

5

  安全要求事項及び保護方策  

5

5.1

  一般  

5

5.2

  電池の充電に関連する危険源  

5

5.3

  エネルギーの蓄積及び供給による危険源  

6

5.4

  ロボットの通常運転における起動及び再起動  

8

5.5

  静電電位  

8

5.6

  ロボットの形状による危険源  

8

5.7

  放射による危険源  

9

5.8

  電磁障害による危険源  

10

5.9

  ストレス,姿勢及び使用法による危険源  

10

5.10

  ロボットの動作による危険源  

11

5.11

  耐久性不足による危険源  

16

5.12

  動いている部品との接触による危険源  

17

5.13

  人がロボットに気付かないことによる危険源  

17

5.14

  危険な環境条件  

17

5.15

  電気火災による危険源  

18

5.16

  アシスト力による危険源  

20

6

  安全関連制御システムに対する要求事項  

24

6.1

  要求安全性能  

24

6.2

  ロボットの停止  

24

6.3

  運転空間の制限  

24

6.4

  安全関連速度制御  

25

6.5

  安全関連環境認識  

25

6.6

  安全関連力制御  

25

6.7

  特異点保護  

25

6.8

  ユーザインタフェースの設計  

25

6.9

  運転モード  

26

6.10

  手動制御装置  

26


B 8446-2

:2016  目次

(2)

ページ

7

  検証及び妥当性確認  

26

8

  使用上の情報  

26

8.1

  一般  

26

8.2

  マーキング又は表示  

27

8.3

  ユーザマニュアル  

27

8.4

  サービスマニュアル  

27

8.5

  インストールマニュアル  

27

8.6

  エラー及びアラート  

28

9

  使用の限定及び管理  

29

9.1

  一般  

29

9.2

  教育及び訓練  

29

9.3

  環境整備  

29

9.4

  定期検査及び保守  

30

10

  保護具  

31

附属書 A(参考)危険源の連鎖的な発展及びそのリスク低減  

32

附属書 B(参考)ロボットの構造及び各部の名称  

36

附属書 C(参考)ロボットの典型的な危害の発生シーン  

37

附属書 D(参考)検証及び妥当性確認のための試験条件の例  

38

附属書 E(参考)教育及び訓練の具体例  

39


B 8446-2

:2016

(3)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,一般社団法人日本ロボット工業会(JARA)

及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出

があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

JIS B 8446

の規格群には,次に示す部編成がある。

JIS B 8446-1

  第 1 部:マニピュレータを備えない静的安定移動作業型ロボット

JIS B 8446-2

  第 2 部:低出力装着型身体アシストロボット

JIS B 8446-3

  第 3 部:倒立振子制御式搭乗型ロボット


日本工業規格

JIS

 B

8446-2

:2016

生活支援ロボットの安全要求事項−

第 2 部:低出力装着型身体アシストロボット

Safety requirements for personal care robots-

Part 2: Low power restraint-type physical assistant robot

適用範囲 

この規格は,JIS B 8445 の 6.1.2.2.1(人間装着型)に規定するタイプ 2.1 の生活支援ロボットに相当する,

低出力かつ装着型の身体アシストロボットであって,次に示す一つ以上のユーザの動作をアシストするこ

とを意図した低出力装着型身体アシストロボット(以下,ロボットという。

)の安全要求事項について規定

する。

−  立ち・座り,歩行,走行などの運動補助

−  体重支持,上肢支持などの姿勢保持

−  運搬,上げ・下ろし,把持,操りなどの物体操作

この規格は,次の特徴をもつロボットに対して適用する。ただし,操作感をユーザに提示するフォース

フィードバック機能だけをもつロボットには適用しない。

−  一つ以上の非侵襲の拘束部をもつ。

−  ユーザの入力に応じたアシストは,拘束部を介して行われる。

注記 1  ユーザの入力は,操縦装置からの入力に限らない。体重移動,身体の動き,生体電位信号,

音声,ジェスチャーなどを含む。

注記 2  物体操作には,安全関連物体の操作も含む。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 8445:2016

  ロボット及びロボティックデバイス−生活支援ロボットの安全要求事項

JIS B 9960-1

  機械類の安全性−機械の電気装置−第 1 部:一般要求事項

JIS C 0365

  感電保護−設備及び機器の共通事項

JIS C 0448

  表示装置(表示部)及び操作機器(操作部)のための色及び補助手段に関する規準

JIS C 0920

  電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード) 

JIS C 9335-2-29

  家庭用及びこれに類する電気機器の安全性−第 2-29 部:バッテリチャージャの個別

要求事項

JIS C 60695-11-10

  耐火性試験−電気・電子−第 11-10 部:試験炎−50 W 試験炎による水平及び垂直

燃焼試験方法


2

B 8446-2

:2016

ISO 7000

,Graphical symbols for use on equipment−Registered symbols

ISO 13732-1

,Ergonomics of the thermal environment−Methods for the assessment of human responses to

contact with surfaces

−Part 1: Hot surfaces

ISO 13732-3

,Ergonomics of the thermal environment−Methods for the assessment of human responses to

contact with surfaces

−Part 3: Cold surfaces

IEC 61326-3-2

,Electrical equipment for measurement, control and laboratory use−EMC requirements−Part

3-2: Immunity requirements for safety-related systems and for equipment intended to perform

safety-related functions (functional safety)

− Industrial applications with specified electromagnetic

environment

IEC 62061:2012

, Safety of machinery − Functional safety of safety-related electrical, electronic and

programmable electronic control systems

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 8445 の箇条 3(用語及び定義)によるほか,次による。

なお,この規格で用いるロボットの構造及び各部の名称を参考として

附属書 に示す。

3.1 

ユーザ(user) 

ロボットを装着し,アシスト力を直接受ける人(JIS B 8445 の 3.26 参照)

3.2 

オペレータ(operator)

ロボットの起動,停止,及び設定を行う人(JIS B 8445 の 3.25 参照)

注記  ユーザと同一の場合もある。

3.3 

安全管理者(administrator)

環境整備を行う人。

注記  ユーザと同一の場合もある。

3.4 

保守作業者(maintenance personnel) 

ロボットの作動状態を維持するための保守・点検作業を行う人。

3.5 

設置作業者(installation personnel) 

ロボット及び環境システムの設置工事を行う人。

3.6 

第三者(third party) 

ユーザ,オペレータ,安全管理者,保守作業者及び設置作業者を除く人。

3.7 

製造業者(manufacturer) 

ロボットを設計し,製造する者又は組織。

3.8 

エラー(error) 


3

B 8446-2

:2016

製造業者があらかじめ正しいと規定する値,値の範囲又は状態からの逸脱。

注記  エラーは,ロボットが計測,観測,計算及び推定することで検出される。

3.9 

アラート(alert) 

エラーを人に伝える信号。

注記  アラートは,人に注意を喚起したり,又は素早い行動を人に求めたりするときに用いられ,通

常,視覚的信号,聴覚的信号,触覚的信号などが用いられる。

3.10 

電気火災(electric fire) 

電気的な要因で発生する火災。

3.11 

暴走状態(runaway state) 

ロボットが製造業者の意図した以外の動作を行う状態又は制御不能の状態。

3.12 

接触可能な部分(accessible part) 

通常使用において,人が接触することができるロボットの部分又は表面。

注記  接触可能な部分は,JIS C 0922 のテストプローブ B などによって確認できる。

3.13 

意図する使用(intended use) 

製造業者が想定する通常のロボットの用途,使用方法及び使用条件。

注記  意図する使用とは,JIS B 9700 の 3.23(意図する使用)では,使用上の情報によって定まるも

のとされているが,この規格では,設計の最初に定めるものをいう。

3.14 

合理的に予見可能な誤使用(reasonably foreseeable misuse) 

製造業者が予測できる範囲での,

想定されるユーザによる,

意図する使用を超えたロボットの使用方法。

注記  JIS B 9700 の 3.24(合理的に予見可能な誤使用)では,“設計者が意図していない使用方法であ

るが,容易に予測できる人間の挙動から生じる機械の使用”と定義されている。

3.15 

定期検査(periodic inspection) 

製造業者の指定する(運転)時間間隔及び検査方法で,ロボットの動作及び機能が正しく働くかを確認

する検査。

3.16 

保守(maintenance) 

ロボットの動作及び機能が正しく働くかを確認し,必要に応じてロボットを修理・調整すること。

3.17 

環境整備(environmental maintenance) 

安全のために環境側の条件を整えること。

注記  環境側の条件の例として,ロボットの稼動する空間の温度,湿度,照明条件,ロボットの周囲

にいる人の密集度などがある。


4

B 8446-2

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3.18 

インストールマニュアル(installation manual) 

ロボットの設置工事の方法,初期設定,起動方法などが記載された,設置作業者のための文書。

3.19 

装着(attach) 

ロボットの使用を始めるために,ロボットをユーザに取り付けること。

3.20 

脱装(detach) 

ロボットの使用を終えるために,ロボットをユーザから取り外すこと。

3.21 

拘束部(restraint part) 

アシスト力の伝達のために,ユーザとロボットとを拘束する,ロボットを構成する部分。

注記  JIS T 0601-1 の 3.8[装着部(applied part)]とは異なる。

3.22 

アシスト力(assistive force) 

意図する動作のアシストのために,ロボットが出力する力・トルク。

リスクアセスメント 

4.1 

一般 

JIS B 8445

の 4.1(一般)による。ただし,必要な場合には,ロボットの使用を限定することによって,

特定の危険源が除去されていることを前提としてリスクアセスメントを行うことができる。また,使用の

限定を含むロボットの意図する使用は,ユーザマニュアルに記載しなければならない。

注記 1  例えば,段差,障害物などのない環境,雨風が防げる環境,監督下にない子供がいない環境

などに限定することで,特定の危険源を除去することができる。

注記 2  ロボットの使用を限定する手段及びその限定を保障する手段に関する要求事項は,箇条 

規定している。

注記 3  ロボットの使用の限定は,JIS B 9700 の 5.3(機械類の制限の決定)に規定されている機械類

の制限に相当する。

注記 4  ユーザマニュアルに関する要求事項は,8.3 に規定している。

4.2 

危険源の同定 

JIS B 8445

の 4.2(危険源の同定)によるほか,次による。

ユーザの発汗,意図しない排せつ(泄)

,ユーザが飲用する飲料の機器へのかけこぼしなどによる危険源

を考慮しなければならない。

注記  ロボットにおいて,JIS B 8445 の附属書 A(生活支援ロボットの重要危険源のリスト)に記載

されている危険源が危害に発展する典型的な発生シーンを

附属書 に示す。附属書 は,JIS B 

8445

附属書 と併せて参照することが望ましい。

4.3 

リスク見積り 

JIS B 8445

の 4.3(リスク見積り)による。


5

B 8446-2

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安全要求事項及び保護方策 

5.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.1(一般)によるほか,次による。

a)

各危険源について,本質的安全設計並びに安全防護及び付加保護方策を適用した後,それでも存在す

る残存リスクを低減するために採用する使用上の情報には,ロボットによるアラートを含む。

注記 1  使用上の情報に関する要求事項は,箇条 に規定している。

注記 2  JIS B 8445 の 5.1 の第 10 段落では,使用上の情報によるリスク低減手段として,表示,マ

ーキング及びユーザマニュアルによる注意及び警告だけが想定されている。

b)

本質的安全設計並びに安全防護及び付加保護方策の適用が適切でなく,アラートだけでリスクを受容

可能なレベルまで低減する場合,ユーザ及び/又はオペレータがアラートに対し,必要な対処を取れ

ることを確実にしなければならない。アラート及びそれに対する必要な対処の情報は,ユーザマニュ

アルに記載しなければならない。

注記 3  意図するユーザがアラートを知覚可能であり,かつ,アラートに反応して適切な時間で必

要な対処が取れることを確実にするのがよい。

c)

5.x

又は 5.x.x に示した危険源に関連するリスクを低減するために,二次的に引き起こされる危険源の

リスクを低減することで代替してもよい。

注記 4  危険源の連鎖的な発展及びそのリスク低減に関する詳細を,附属書 に示す。

d)

ロボットの安全に関わる性能は,定期的な検査,部品交換,調整などによって,製造業者が規定する

範囲内に維持しなければならない。

ロボットを運用する環境は,製造業者が規定する範囲内に維持しなければならない。

ロボットのユーザは,製造業者の規定する適性を満足しなければならない。

注記 5  定期検査の実施間隔及び実施方法,維持しなければならない環境条件及びその管理方法,

満たさなければならないユーザの適性条件及びその管理方法などに関する要求事項は,箇

条 に規定している。

e)

5.x.5

及び 5.x.x.5 に示した試験は,必要に応じて実施しなければならない。検証及び妥当性確認のため

に,製造業者が 5.x.5 及び 5.x.x.5 に規定していない試験の必要性を特定した場合は,その試験を実施

することが望ましい。

5.2 

電池の充電に関連する危険源 

5.2.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.2.1(一般)によるほか,次による。

a)  JIS B 8445

の 5.2.1 の第 1 段落の要求事項は,この規格の 5.3.1 及び 5.15 の要求事項による。

注記 1  感電への防護に関する要求事項は 5.3.1 に,電気火災への防護に関する要求事項は 5.15 

規定している。 

b)  5.15

に適合するために,電気安全に関わる規格への適合を製造業者が選択した場合,ロボット本体に

電気的に接続する充電システムは,その選択した規格に適合しなければならない。

ロボット本体から取り外した電池を充電する充電システムについて,電気安全に関わる規格を適用

する場合は,JIS C 9335-2-29 を利用してもよい。

注記 2  非接触形の充電器に対する規格は,現在国際規格化が検討されている。

c)

充電中の動作を意図しないロボットは,充電中に動作してはならない。充電中の,又は電源ケーブル

が接続されたままの動作を意図するロボットは,接続された電源ケーブルに起因するロボットの不安


6

B 8446-2

:2016

定,断線,電気的接続部の外れなどによる影響を考慮しなければならない。

d)

ロボットへの自動給電が意図されている場合,自動的に電気的な接続が生じることによる影響を考慮

しなければならない。

5.2.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.2.2(本質的安全設計)による。 

5.2.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.2.3(安全防護及び付加保護方策)による。ただし,JIS B 8445 の 5.2.3 の b)  に対応する

方策は,この規格の 5.2.4 に規定する。

5.2.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.2.4(使用上の情報)によるほか,必要に応じて,充電システムは,充電状態を表示する

か,又は満充電となったとき信号を発するようにしなければならない。 

5.2.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.2.5(検証及び妥当性確認)による。 

5.3 

エネルギーの蓄積及び供給による危険源 

5.3.1 

危険なエネルギー部との接触 

5.3.1.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.3.1.1(一般)によるほか,次による。

a)

ロボットは,危険な充電部への偶然の接触から,適切に人を保護する構造を備えなければならない。

b)

ロボットが,危険な電圧をもつ電源(商用電源など)を利用する場合,その危険な電圧に対する基礎

絶縁が絶縁破壊した場合であっても,人が感電しない構造を備えなければならない。

c)

動作状態において,ロボットの漏れ電流は過度になってはならず,かつ,ロボットは十分な耐電圧強

度を備えなければならない。

d)

ロボットが備える電気絶縁物は,ロボットが使用される環境条件下において,絶縁劣化してはならな

い。

e)

ロボットは,製造業者が規定する使用範囲において,液体及び湿気に対する耐性をもっていなければ

ならない。

5.3.1.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.3.1.2(本質的安全設計)による。 

5.3.1.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.3.1.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次のいずれかの方策を

適用しなければならない。

a)

電気安全に関わる規格のいずれかに適合する。

ただし,

各規格の定める感電保護クラス 0 は認めない。

注記  電気安全に関わる規格の例は,5.15.1 による。5.15 に適合するための規格と,5.3.1 に適合す

るための規格とは同一にすることが望ましい。

b)  JIS C 0365

に規定する感電保護クラス I,クラス II 又はクラス III を満たす。

5.3.1.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.3.1.4(使用上の情報)による。 

5.3.1.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.3.1.5(検証及び妥当性確認)による。ただし,JIS B 8445 の 5.3.1.2(本質的安全設計)

の a)  の安全超低電圧を超える電圧を使用する場合は,電気安全に関わる規格の定める漏れ電流試験及び


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B 8446-2

:2016

耐電圧試験を行い,適合しなければならない。漏れ電流試験は,ユーザ及びオペレータが接触可能な部分

に対して行う。

注記  接触可能な部分であるかは,テストプローブによって確認できる。テストプローブの規格には

JIS C 0922

がある。意図する使用に応じて,適切なプローブを利用することが望ましい。例え

ば,3 歳の子供を想定する場合は,テストプローブ 19 を用いる。

5.3.2 

貯蔵エネルギーの制御されていない解放 

JIS B 8445

の 5.3.2(貯蔵エネルギーの制御されていない解放)による。

5.3.3 

動力故障又は遮断 

5.3.3.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.3.3.1(一般)によるほか,上肢の動作アシストを意図したロボットは,アシスト力の意

図しない低下又は停止によって起こるロボットの部分的な落下,把持又は運搬する物体の落下などによる

リスクが受容可能となるよう設計しなければならない。

5.3.3.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.3.3.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。

a)

ユーザだけで支えられる範囲での,ロボットの質量及び質量配分を採用する。

注記 1  例えば,上肢の動作アシストを意図したロボットが停止した場合,ユーザは,ロボットの

部分的な質量,把持若しくは運搬する物体の質量の全て,又は一部を支える必要がある。

これらがユーザの持ち上げられる質量を超えている場合には,落下又は取り落としのリス

クがある。

b)

単一故障状態にあっても,ユーザの抗力を超えないアシスト力を採用する。

c)

単一故障状態にあっても,ユーザの抗力によって動かせる,バックドライバビリティをもつ駆動部を

もつ。

d)

駆動部が,単一故障状態,電源遮断,フェールセーフ機能又はブレーキによってロックされた状態に

おいても,受容できないリスクを生じない設計を採用する。

注記 2  ロックされた状態が受容できないリスクを生じる例として,人による脱装ができなくなる,

ユーザが即座に転倒するなどが考えられる。

5.3.3.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.3.3.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,利用できる内部エネル

ギー又は貯蔵動力(バッテリ容量など)が危険レベルに達したとき,自動的に安全状態に入る方策を適用

しなければならない。

注記 JIS 

8445

の 5.3.3.3 の c)  に対応する方策は,この規格の 5.3.3.3 及び 5.3.3.4 に規定している。

5.3.3.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.3.3.4(使用上の情報)によるほか,必要に応じて,利用できる内部エネルギー又は貯蔵

動力(バッテリ容量など)が一定のしきい値を下回った場合には,ロボットはユーザ及び/又はオペレー

タに,アラートによってその状態を通知しなければならない(8.6 を参照)

5.3.3.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.3.3.5(検証及び妥当性確認)による。


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B 8446-2

:2016

5.4 

ロボットの通常運転における起動及び再起動 

5.4.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.4.1(一般)によるほか,次による。

a)

起動してから装着するロボットは,ユーザが装着したまま起動した場合であっても,危険な動作をし

てはならない。

b)

ユーザが装着してから起動するロボットは,未装着状態で起動された場合であっても,危険な動作を

してはならない。

c)

起動時の出力レベルは,意図する使用を考慮して決定しなければならない。

5.4.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.4.2(本質的安全設計)による。

5.4.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.4.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,ロボットの起動後に,安全関連構成部品

にエラーがないことを確認するために実施する必要最小限の動作において,ロボットの出力は,その出力

によるリスクが受容可能な範囲にとどめられなければならない。

注記 1  起動後に安全関連構成部品にエラーがないことを確認するための必要最小限の動作は,JIS B 

8445

の 5.4.2(本質的安全設計)の最終段落において許容されている。

注記 2  受容可能な範囲のロボットの出力は,5.16.1 及び 5.16.2 が参考になる。

5.4.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.4.4(使用上の情報)による。ただし,JIS B 8445 の 5.4.2(本質的安全設計)の最終段落,

又は 5.4.3 の付加保護方策を適用する場合は,ロボットが正常な状態にあることを確認する起動時の動作

についての情報をユーザマニュアルに記載しなければならない。

5.4.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.4.5(検証及び妥当性確認)による。

5.5 

静電電位 

JIS B 8445

の 5.5(静電電位)による。

なお,JIS B 8445 の 5.5.1(一般)の第 2 段落及び第 3 段落の要求事項は,静電放電に起因するロボット

の暴走状態によって,人及び飼育動物に危害を加えないことを要求している。

5.6 

ロボットの形状による危険源 

5.6.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.6.1(一般)によるほか,ロボット及びロボットから分離可能な構成部品における次の箇

所は,特に注意して設計しなければならない。

−  外郭

−  可動部

−  ロボットの保守・点検時に,保守作業者が防護カバー,扉などを外して作業するために接近する箇所

−  環境との衝突などによって,意図するロボットの動作を妨げるような極端な突出部

5.6.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.6.2(本質的安全設計)によるほか,ロボットの突出部は,意図する動作を妨げないよう

に設計しなければならない。

5.6.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.6.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけれ


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B 8446-2

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ばならない。

a)

環境の状況などに応じて,ロボットの突出部を減らす機構を採用する。

b)

環境との接触又は衝突による衝撃を緩和するための,材料・部材・制御をもつロボットの突出部を採

用する。

5.6.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.6.4(使用上の情報)によるほか,必要に応じて,可動部による挟み込み,押し潰し,巻

き込みが,意図する使用を達成するために,実現可能な設計によって回避できない場合,使用時の注意・

警告をユーザマニュアルに含めなければならない。

注記  実現可能な設計によって回避できない例には,ロボットを下肢に装着したユーザが座る場合に,

ユーザが自らの手を座面とロボットとの間に差し込むことも含む。

5.6.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.6.5(検証及び妥当性確認)による。

5.7 

放射による危険源 

5.7.1 

有害な騒音 

JIS B 8445

の 5.7.1(有害な騒音)による。

5.7.2 

有害な振動 

JIS B 8445

の 5.7.2(有害な振動)による。

5.7.3 

有害な物質及び流動体 

JIS B 8445

の 5.7.3(有害な物質及び流動体)による。

5.7.4 

極端な温度 

5.7.4.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.7.4.1(一般)によるほか,材料及び接触時間ごとの極端な高温及び低温の基準は,それ

ぞれ ISO 13732-1 及び ISO 13732-3 による。

注記 1  JIS B 8445 の 5.7.4.1 の注記の 43  ℃は,意図して又は合理的に予見可能な誤使用によって,

人とロボットとが長時間接する場合であっても,人が低温やけどとならないと考えられる温

度上限を示している。

注記 2  温度感覚の弱いユーザ(例えば,高齢者,幼児など)を意図する場合は,接触時間が長くな

る可能性を考慮して設計することが望ましい。

5.7.4.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.7.4.2(本質的安全設計)による。

5.7.4.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.7.4.3(安全防護及び付加保護方策)による。

5.7.4.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.7.4.4(使用上の情報)による。

5.7.4.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.7.4.5(検証及び妥当性確認)によるほか,ロボットの通常使用(充電状態を含む。

)にお

いて,ユーザ及びオペレータが触れる可能性があると製造業者が指定する部位の温度は,計測し,基準を

満たすことを確認しなければならない。

試験を行う場合は,ロボットがユーザに装着されていない状態で行ってよい。試験時の温度計測は,ユ

ーザ及びオペレータが接触可能な部分を対象に行う。ただし,温度計測の対象となる部位には,拘束部を


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B 8446-2

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含まなければならない。試験には,製造業者が意図する通常使用時の最大出力を含む代表的な運転パター

ンを利用してもよい。

5.7.5 

有害な非電離放射 

JIS B 8445

の 5.7.5(有害な非電離放射)による。

5.7.6 

有害な電離放射線 

JIS B 8445

の 5.7.6(有害な電離放射線)による。

5.8 

電磁障害による危険源 

JIS B 8445

の 5.8(電磁障害による危険源)による。

なお,6.1 に規定する制御システムの諸機能に対する電磁イミュニティの要求として,JIS B 8445 の 5.8.2

(本質的安全設計)に規定する IEC 62061:2012 によるほか,IEC 61326-3-2 を適用してもよい。

注記  制御システムの諸機能に対する電磁イミュニティ規格への適合は,JIS B 8445 の 5.8.2 では本質

的安全設計として扱われている。

5.9 

ストレス,姿勢及び使用法による危険源 

5.9.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.9.1(一般)による。

5.9.2 

肉体的ストレス及び姿勢の危険源 

5.9.2.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.9.2.1(一般)によるほか,次による。

a)

製造業者は,拘束部とユーザの身体との相対的な動きによって生じるユーザの皮膚の擦過のリスク,

及び拘束部を過度に圧迫して使用する場合に生じるうっ血,じょくそう(褥瘡)などの傷害のリスク

を,受容可能なレベルにまで低減しなければならない。

注記 1  これらの傷害は,ロボットの通常使用においても生じる可能性がある。

b)

製造業者は,誤装着のリスク並びにユーザの体形差及び個人差を考慮しなければならない。

注記 2  ロボットが製造業者の意図しない位置,方向などでユーザに装着された場合,ロボットが

ユーザの体形に合致しない場合などには,ロボットの誤作動,ユーザの肉体的な苦痛など

につながる可能性がある。

注記 3  JIS B 8445 の 5.9.2.1 の b)  は,一般に,ユーザ,オペレータなどがロボットを操作する場

合に,又は保守作業者がロボットを保守・点検する場合に,無理な姿勢とならないことを

要求している。

5.9.2.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.9.2.2(本質的安全設計)によるが,方策の一つに次も含める。

a)

ユーザの身体と拘束部との相対的な運動を,人体が許容できる限度内に抑える。

b)

外力に起因する拘束部への負荷を,人体が許容できる限度内に抑える。

5.9.2.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.9.2.3(安全防護及び付加保護方策)によるが,方策の一つに次を含める。

a)

拘束部を適切に滑らせる機構,材料などを採用する。

b)

外力に起因する拘束部への負荷を分散させる構造を採用する。

c)

外力に起因する拘束部への負荷を外骨格に負担させる構造を採用する。

d)

拘束部による圧迫の程度を調整できる機構,材料などを採用する。


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B 8446-2

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5.9.2.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.9.2.4(使用上の情報)によるほか,ユーザマニュアルには,次の情報を記載しなければ

ならない。

−  意図する装着状態における,ユーザの身体部位とロボットの部分との位置関係

注記  ユーザが位置関係を保って適切に装着する方法も提供することが望ましい(5.10.6.4 参照)。

−  ユーザの身体部位とロボットの部分との位置関係が誤ったまま装着された場合に備えた注意・警告

−  ユーザがロボットを過剰に連続使用する場合に生じる,身体機能の低下に対する注意及び体性感覚の

変化に対する注意

5.9.2.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.9.2.5(検証及び妥当性確認)による。

5.9.3 

精神的ストレス及び使用法による危険源 

5.9.3.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.9.3.1(一般)による。

5.9.3.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.9.3.2(本質的安全設計)に対応する方策は,この規格の 6.8 及び 8.6 による。

5.9.3.3 

安全防護及び付加保護方策 

安全防護及び付加保護方策は,6.8 及び 8.6 による。

注記  JIS B 8445 の 5.9.3.3(安全防護及び付加保護方策)に,推奨する方策は記載されていない。

5.9.3.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.9.3.4(使用上の情報)に対応する方策は,この規格の 8.3 による。

5.9.3.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.9.3.5(検証及び妥当性確認)による。

5.10 

ロボットの動作による危険源 

5.10.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.1(一般)による。

5.10.2 

機械的な不安定性 

5.10.2.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.2.1(一般)によるほか,次による。

a)

転倒に関わるリスクが受容できない場合,製造業者は,ロボットとユーザとから成る系の機械的安定

性を考慮しなければならない。

b)

この機械的安定性がユーザのバランス能力に依拠する場合は,ロボットはユーザのバランス能力を妨

げてはならない。

c)

つえ(杖)

,歩行器,リフターなど,ユーザの身体を支持する器具・装置の使用を前提とする場合,ロ

ボットとユーザとから成る系が,機械的安定性を備えているとしてもよい。

5.10.2.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.10.2.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。

a)

ロボットの質量を,ユーザの体重に比して十分軽量に設計する。

b)

ロボットの重心を,可能な限り,ユーザの身体の重心と近くなるように設計する。

注記  a)  及び b)  の方策は,ロボットとユーザとから成る系の ZMP を支持多角形内に収め,かつ,ユ


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B 8446-2

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ーザのバランス能力を妨げないことに有用である。

5.10.2.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.10.2.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけ

ればならない。

a)

ユーザのバランス能力を妨げないアシスト力を採用する。

b)

十分なバックドライバビリティをもつ駆動部を採用する。

c)

質量のアンバランスをロボットが相殺する手段を採用する。

d)

質量のアンバランスをユーザが調整する手段を採用する。

e)

転倒防止支援機能を採用する。

注記 1  転倒防止支援機能には,例えば,歩行時の膝折れ防止機能がある。

f)

転倒する可能性を検知して,ゆっくり座ることを支援する機能を採用する。

ただし,e)  又は f)  の機能だけによって転倒防止を実現する場合は,該当する機能を安全関連部とし,

6.6

の要求を満たさなければならない。また,a)f)  の方策を適用した後でも,転倒に関わるリスクが受容

できない場合は,次の方策を適用してもよい。

g)

転倒後の衝突によって,ユーザに印加される衝撃を緩和する手段を採用する。

注記 2  衝突衝撃を緩和する手段には,例えば,エアバッグ,保護具などがある。保護具に関する

要求事項は,箇条 10 に規定している。

5.10.2.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.10.2.4(使用上の情報)によるほか,ユーザの身体を支える器具又は保護具の使用を意図

する場合,それらの情報をユーザマニュアルに記載しなければならない。

注記  もつべき性能などの条件を記載するほか,条件を満たした製品の形名を記載する方法などがあ

る。

5.10.2.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.10.2.5(検証及び妥当性確認)による。

5.10.3 

移動中の不安定性 

JIS B 8445

の 5.10.3(移動中の不安定性)に対応する要求事項は,5.10.2 の要求事項に包含している。

5.10.4 

物体操作中の不安定性 

5.10.4.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.4.1(一般)によるほか,次による。

a)

ロボットを装着したユーザが,運搬,上げ・下ろし,把持,操りなどの物体操作をする場合は,必要

に応じて,ユーザ自身が操作する物体の形状,質量(質量配分を含む。

)及びそれに起因したユーザと

ロボット相互の運動特性の変化による物体の取り落としリスクを考慮しなければならない。

b)

特に,操作する物体が,ユーザだけで支えられる範囲の形状及び質量を超える場合は,十分に考慮し

なければならない。

注記  例えば,運搬する物体を降ろす場合の過渡的な負荷の変化,又はロボットの特定の機能が停止

することで生じるアシスト力の低下によって,ユーザにかかる負荷が急激に変化し,ユーザが

物体を取り落とすおそれがある。

5.10.4.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.10.4.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。


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B 8446-2

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a)

常にユーザがオーバーライド可能なアシスト力を採用する。

b)

十分なバックドライバビリティをもつ駆動部を採用する。

c)

十分な粘性をもつ駆動部を採用する。

d)

荷の形状にかかわらず,意図する作業に関連するユーザの身体の動きを妨げない機構を採用する。

5.10.4.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.10.4.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけ

ればならない。

a)

操作する物体をロボットに固定する器具(ボルト,ラッチなど)に対応した部分(ねじ穴,フック,

ステーなど)を備える。

b)

ロボットが物体を保持するための把持具を備え,かつ,その把持具によって物体を保持する機能を採

用する。

注記 1  JIS B 8445 の 5.10.4.3 の a)  に対応する方策は,上記の a)  及び b)  に規定している。

注記 2  JIS B 8445 の 5.10.4.3 の a)  の方策における,ユーザ,オペレータ及び/又は安全管理者への

要求事項は,この規格の 5.10.4.4 に含まれている。

5.10.4.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.10.4.4(使用上の情報)による。

5.10.4.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.10.4.5(検証及び妥当性確認)による。ただし,試験における最も厳しい条件が,最大質

量及び最高速度ではない場合は,製造業者が最も厳しいと定める条件で試験を実施する。

5.10.5 

衝突時の不安定性 

5.10.5.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.5.1(一般)によるほか,通常使用において,ロボット又はユーザが,アシスト中に環

境中の物体に接触することが想定されている場合,その接触によって生じる過渡的な負荷の変化を考慮し

なければならない。

注記  例えば,歩行アシストロボットの通常使用において,アシスト中に椅子に座る,壁に寄りかか

るなどがある。

5.10.5.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.10.5.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。

a)

ユーザがオーバーライド可能なアシスト力を採用する。

b)

十分なバックドライバビリティをもつ駆動部を採用する。

5.10.5.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.10.5.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけ

ればならない。

a)

接触による外乱に対して,十分なロバスト性をもつ機構・機能を採用する。

b)

接触を検知し,アシスト力を低減又は遮断する機構・機能を採用する。

c)

接触を検知し,ロボットの挙動を抑制する機構・機能を採用する。

注記  接触の検知は,接触センサ,近接センサ,外乱の検出などで行われる。

5.10.5.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.10.5.4(使用上の情報)によるほか,次による。


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B 8446-2

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a)

通常使用において,ロボット又はユーザが,アシスト中に接触してもよい物体(

例  肘置きのないベ

ンチなど)及び行ってよい接触動作(

例  着座動作)をユーザマニュアルに記載しなければならない。

b)

ロボット又はユーザが,アシスト中に環境中の物体と接触し,かつ,その接触によってロボットの挙

動が不安定になることが想定される場合は,その旨を注意としてユーザマニュアルに記載しなければ

ならない。

5.10.5.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.10.5.5(検証及び妥当性確認)による。

5.10.6 

装着時又は脱装時の不安定性 

5.10.6.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.6.1(一般)によるほか,次による。

a)

製造業者は,次の各状況におけるロボットの脱装を実施する主体を定めなければならない。

通常使用時  ユーザ及び/又はオペレータ

緊急時の脱装(ユーザの意識がある場合)ユーザ及び/又はオペレータ,安全管理者,第三者

緊急時の脱装(ユーザの意識がないなど,ユーザが脱装できない場合)オペレータ及び/又は安全

管理者,第三者

b)

ロボットは,特に異常状態などの緊急時において,脱装を実施する主体によって,容易に脱装されな

ければならない。異常状態には,ロボットの駆動部がロックした状態も含む。

c)

ロボットが安全管理者の監視下だけで使用される場合においては,

オペレータ又は安全管理者だけを,

脱装を実施する主体として定めてもよい。

d)

ロボットの質量が 20 kg を超え,かつ,1 名で装着・脱装を行うことを製造業者が意図する場合は,製

造業者はロボットの装着・脱装を補助する手順,又は補助具若しくはロボットを支える器具などの手

段を提供しなければならない。

注記 1  装着・脱装を補助するためのロボットを支える器具には,例えば,リフト,スタンド,フッ

ク,台座などが考えられる。

注記 2  JIS B 8445 の 5.10.6(人間装着型身体アシストロボットの装着又は取外し時の不安定性)の

標題の“取外し”は,3.20 で定義した“脱装”を意味する。

5.10.6.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.10.6.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。

a)

緊急時において,脱装を実施する主体が,容易に出力を停止できる手段(非常停止装置でよい。

)を採

用する。

注記 1  この手段は急な出力の停止につな(繋)がる可能性があるため,通常使用時の誤操作から

保護することが望ましい。

b)

緊急時において,脱装を実施する主体が,工具なしに脱装できる構造を採用する。

注記 2  緊急時に脱装を行う場合,ロボット自体の安定性を損なう場合がある。製造業者は,緊急

時の脱装と安定性とについて,トレードオフを考慮することが望ましい。

5.10.6.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.10.6.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけ

ればならない。

a)

緊急時に脱装を実施する主体だけの力で,ロボットを受動的に動かせる構造を採用する。


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B 8446-2

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b)

緊急時に脱装を実施する主体だけの力で,ロックを解除できる手段を提供する。

c)

傾斜センサなどで転倒などの緊急時を検出して,出力を止める機能を採用する。

5.10.6.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.10.6.4(使用上の情報)によるほか,通常使用時及び緊急時において,想定される姿勢か

ら脱装する手順及び目安の時間をユーザマニュアルに含めなければならない。

注記  製造業者は,ユーザマニュアルの手順に従った脱装を試み,目安の時間を評価することが望ま

しい。

5.10.6.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.10.6.5(検証及び妥当性確認)による。

5.10.7 

人とロボットとの相互作用中の危険な物理的接触 

5.10.7.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.10.9.1(一般)ほか,次による。

JIS B 8445

の 5.10.9(人とロボットとの相互作用中の危険な物理的接触)の要求事項は,上肢の動作ア

シストを意図したロボットの拘束部を除く部分とユーザの身体部位との接触だけに対して適用する。

注記 1  例えば,誤ったアシストが生じた場合に,ユーザの顔部,けい(頸)部,頭部,胸部などに

ロボットの部分が接触するなどが考えられる。

注記 2  拘束部におけるユーザとロボットとの接触に関する要求事項は,5.9.2 に規定している。

ロボットの部分とユーザの身体部位とが接触するリスクを評価する場合は,次の条件を考慮することが

望ましい。

−  ロボットの拘束部を除く部分の運転空間とユーザの身体部位との位置関係

注記 3  互いに干渉する場合,そのロボットの部分とユーザの身体部位は接触する可能性がある。

−  接触するおそれのあるユーザの身体部位

注記 4  同じ接触力であっても,接触力が印加される身体部位によって危害の程度は異なる。

−  接触するおそれのあるロボットの部位及びその接触前の速度

−  接触するおそれのあるロボットの部位の形状及び材料

−  接触するときのロボットの関節特性(剛性,弾性など)

−  接触するときのアシスト力

5.10.7.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.10.9.2(本質的安全設計)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなければならな

い。

a)

ロボットの部分が,ユーザの身体部位に接触するおそれのない構造を採用する。

b)

ロボットの部分の最高速度が,ユーザが避けられる速度を超えない設計を採用する。

c)

接触した場合の接触力が,ユーザの身体部位が許容できる範囲を超えない設計を採用する。

注記  接触力を低減する方法には,最高速度の低減,曲率の低い形状及び柔軟な材料の採用(5.6 を参

照)

,関節特性の柔軟性向上,アシスト力の制限などがある。

5.10.7.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.10.9.3(安全防護及び付加保護方策)によるほか,必要に応じて,次の方策を適用しなけ

ればならない。

a)

関節特性に柔軟性をもつ制御機能を採用する。

b)

接触を検出し,関節特性を柔軟にする機能を採用する。


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B 8446-2

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c)

ユーザの身体部位へ伝達される接触力を緩和又は分散する手段を講じる。

注記  接触力を緩和する手段には,例えば,保護めがね,保護帽などの保護具がある。保護具に関す

る要求事項は,箇条 10 に規定している。

5.10.7.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.10.9.4(使用上の情報)によるほか,保護具の使用を意図する場合,その情報をユーザマ

ニュアルに記載しなければならない。

注記  もつべき性能などの条件を記載するほか,条件を満たした製品の形名を記載する方法などがあ

る。

5.10.7.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.10.9.5(検証及び妥当性確認)による。

5.11 

耐久性不足による危険源 

5.11.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.11.1(一般)によるほか,ユーザの汗の付着,エンクロージャが清掃・消毒されること

によって生じる腐食,ぜい(脆)性破壊などの影響を考慮しなければならない。

5.11.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.11.2(本質的安全設計)によるほか,エンクロージャは,ユーザの汗への耐久性,製造

業者が意図する清掃・消毒方法への耐久性などをもたなければならない。

5.11.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.11.3(安全防護及び付加保護方策)によるが,ロボットのライフサイクルを監視し,保

守時間又は寿命末期に達したとき,それ以上の使用から保護するために停止する方策も含む。

注記  JIS B 8445 の 5.11.3 の d)  に対応する方策は,この規格の 5.11.3 及び 5.11.4 の c)  に規定してい

る。

5.11.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.11.4(使用上の情報)によるほか,次による。

a)

ロボットのエンクロージャが清掃・消毒されることを製造業者が意図する場合,製造業者はその手順

をユーザマニュアルに記載しなければならない。

b)

ロボットに充電池を使用する場合は,耐用年限及び/又は充放電回数の目安をユーザマニュアルに記

載しなければならない。

注記  耐用年限,充放電回数などの目安は,充電池の特性及び代表的な使用条件を考慮して定める

ことが望ましい。

c)

定期的に行う性能の確認内容,並びに交換が必要な消耗部品の使用限度及び/又は交換頻度に関する

情報及び管理方法をユーザマニュアルに記載しなければならない。

また,必要に応じて,ロボットのライフサイクルを監視し,保守時間又は寿命末期に達したとき,その

旨を通知してもよい。

5.11.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.11.5(検証及び妥当性確認)によるほか,通常使用において,破壊が即座に受容できな

いリスクとなるロボットの部分がある場合は,その部分の強度及び耐久性は,次のいずれかの方法によっ

て検証しなければならない。

a)

最大負荷と安全率とを考慮した設計書の点検

b)

強度・耐久性試験


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B 8446-2

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衝撃力が加わる機械要素の破壊が即座に受容できないリスクとなる場合は,その機械要素について,耐

久性試験を行うのがよい。また,耐久性試験の条件(負荷,時間,回数など)は,日常的な点検,並びに

定期的な検査及び保守の間隔を考慮して設定することが望ましい。

注記  義足のように身体を支える構造は,破壊されることで即座に支持が失われ,ユーザの転倒に至

る。義足の強度・耐久性試験の基準は,JIS T 0111 規格群を参照する。

5.12 

動いている部品との接触による危険源 

JIS B 8445

の 5.13(動いている部品との接触による危険源)による。

5.13 

人がロボットに気付かないことによる危険源 

5.13.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.14.1(一般)による。ただし,JIS B 8445 の 5.14.1 の要求事項のうち,アラーム(聴覚的

信号によるアラート)に関する要求事項だけを適用する。

5.13.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.14.2(本質的安全設計)に対応する方策は,この規格の 5.13.4 の a)  及び b)  による。

5.13.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.14.3(安全防護及び付加保護方策)による。

なお,JIS B 8445 の 5.14.3 の a)  及び b)  に対応する方策は,この規格の 5.13.4 の b)  及び a)  による。

5.13.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.14.4(使用上の情報)によるほか,ロボットの存在に対する注意を喚起するために,必

要に応じて,次の方策を適用しなければならない。

a)

ロボットに目立つ外観をもたせる。

注記 1  外観を目立たせるために,警告灯又はその他の光学装置を用いてよい。

b)

有害な騒音レベルにまで達しない,それと分かる音を発する。

注記 2  音響発生器によって,音を発してもよい。

5.13.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.14.5(検証及び妥当性確認)による。

5.14 

危険な環境条件 

5.14.1 

一般 

JIS B 8445

の 5.15.1(一般)によるほか,次による。

a)

ロボットはその意図する使用に応じて,JIS C 0920 の定める保護等級を満たすように設計しなければ

ならない。

注記  JIS B 8445 の 5.15.1 の第 2 段落及び第 4 段落に規定する IP コードに関する要求事項に相当す

る。

b)

ロボットが直射日光にさら(晒)される場合,ロボット表面及び内部の温度上昇,紫外線による表示

及び部材の劣化などによるリスクを考慮しなければならない。

5.14.2 

本質的安全設計 

JIS B 8445

の 5.15.2(本質的安全設計)による。

5.14.3 

安全防護及び付加保護方策 

JIS B 8445

の 5.15.3(安全防護及び付加保護方策)によるが,必要に応じて,次の方策を適用しなけれ

ばならない。

a)

ダストの検知及びダストが受容できないレベルに達する前に保護停止を実行する。


18

B 8446-2

:2016

b)

雪・氷・冷気条件の能動的検知,及び雪・氷の堆積量が受容できないレベルに達する前に保護停止を

実行する。

c)

保守のための定期的な運転休止又は停止を確実にする安全防護機能(これには一般に,点検,及び清

掃又は部品交換を含む。

)を備える。運転休止の間隔は,例えば,腐食,砂,ダスト又は雪の堆積によ

って受容できないリスクレベルに到達するまでに要する時間に基づいて決定しなければならない。

注記  JIS B 8445 の 5.15.3 の b)g)  及び h)  に対応する方策は,この規格の 5.14.3 の a)c)  及びこの

規格の 5.14.4 の a)c)  に規定している。

5.14.4 

使用上の情報 

JIS B 8445

の 5.15.4(使用上の情報)によるほか,必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しな

ければならない。

a)  5.14.3

の a)  に規定した保護停止が実行されたとき,必要な方策を講じるようにユーザに通知する。

b)  5.14.3

の b)  に規定した保護停止が実行されたとき,その理由をユーザに通知する。

c)

5.14.3

の c)  に規定した運転休止が実行されたとき,運転休止の目的をユーザに通知する。

5.14.5 

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の 5.15.5(検証及び妥当性確認)による。

5.15 

電気火災による危険源 

5.15.1 

一般 

ロボットは,次を考慮して設計しなければならない。

a)

ロボットは,単一故障又は合理的に予見可能な誤使用において,火災を発生してはならない。

b)

電池は,

長時間の充電及び充電回路の単一故障状態においても,

爆発及び火災を発生してはならない。

電池交換が可能なロボットは,電池交換に関連する合理的に予見可能な誤使用においても,火災を発

生してはならない。

ロボット本体に電気的に接続される全ての部分について,電気安全に関わる規格のいずれかに適合する

ことで,電気火災による危険源からの保護を実現してもよい。

いずれかの電気安全に関わる規格に適合しない場合には,電気火災による危険源からの保護のために,

5.15.2

5.15.4 を適用する。

注記 1  電気安全に関わる規格には,JIS B 9960-1JIS C 9335-1JIS C 6950-1JIS C 6065JIS C 

1010-1

JIS T 0601-1IEC 62368-1IEC 60065 と IEC 60950-1 との集約)などがある。

注記 2  規格ごとに電気火災に対する保護方策の考え方は異なるため,ロボットの意図する使用目的

に合わせた規格を選択することが望ましい。

注記 3  電気火災による危険源からの保護のためには,電気安全に関わる規格の要求事項のうち,関

連する要求事項だけを適用することが望ましい。

注記 4  電気安全に関わる規格の要求事項には,電気火災による危険源からの保護に関連しない要求

事項も含まれる。それらの要求事項に適合することによって,5.25.3.15.55.7.45.7.5

5.8

及び 5.14 の電気安全に関わる要求事項に適合することもできる。

5.15.2 

本質的安全設計 

ロボットは,想定される温度条件下で発火しない部材を採用し,次の事項のうちの一つ以上を満たすよ

うに設計しなければならない。

a)

危険な短絡がない構造とする。

b)

火災の可能性が高い部分を覆うエンクロージャのうち,非金属部の材料の難燃性が,JIS C 60695-11-10


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が規定する V-2(FV-2)以上を満たす。

c)

火災の可能性が高い部分を,防火エンクロージャによって覆う。

注記 1  危険な短絡が起こる可能性がある電気回路は,火災の可能性が高い部分とみなす。

注記 2  防火エンクロージャに対する要求事項は,電気安全に関わる規格に規定されている。

さらに,a)  の方策を適用する場合には,次の方策を適用しなければならない。

d)

端子台のねじなど,外れることで危険な短絡を生じる電気的接続部を,確実に固定するか,又はカバ

ーを設置する。

e)

内部の断線によって危険な短絡を生じる配線を,強度・耐久性を超える屈曲,ねじれ,圧迫,凸部へ

の押し付け,引っ張りなどから保護する。

電池を用いる場合には,次の方策を適用しなければならない。

f)

電池又は電源ケーブルの逆接続をしない設計,又は逆接続によって発火しない設計とする。

注記 3  例えば,汎用と異なる外形及び接続部形状の電池を採用することで,逆接続を防止できる。

また,リチウムイオン蓄電池を用いる場合には,安全性が確認された仕様の電池を使用しなければなら

ない。

注記 4  例えば,JIS C 8712 及び JIS C 8714 などによって,安全性を確認する。

5.15.3 

安全防護及び付加保護方策 

必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

高温になる可能性がある部材は,能動放熱装置(ファン又はその他の冷却装置)によって過度の高温

にならないようにする。

b)

逆接続,指定外の電池の使用などを検知し,通電をしない。

c)

発火を検知し,通電を止める。

5.15.4 

使用上の情報 

ユーザマニュアルには,次の事項を含めなければならない。

−  電池の交換を意図するロボットの場合,正しい電池の交換に必要な情報

−  電池の交換を意図し,かつ,5.15.2 の f)  又は 5.15.3 の b)  を適用しないロボットの場合,誤った電池

交換(逆接続及び指定外の電池の使用)に備えた注意・警告

電池の交換を意図し,かつ,5.15.2 の f)  又は 5.15.3 の b)  を適用しないロボットの場合,正しい電池の

交換に必要な情報をロボット本体に表示しなければならない。

ロボットは発火を検知した場合には,必要に応じて,アラートを発しなければならない。

5.15.5 

検証及び妥当性確認 

電気安全に関わる規格の要求事項のうち,電気火災による危険源からの保護に関連する要求事項に適合

することを確認するか,又は単一故障状態及び合理的に予見可能な誤使用を模擬した試験を実施し,次の

事項を満足することを確認しなければならない。

−  爆発しない。

−  火災が発生しない,又は炎及び溶融金属がエンクロージャから放出しない。

試験はロボットだけで行い,次のいずれかの状態になるまで実施する。

−  ロボットの表面温度が定常状態に達する。

−  電池が放電して停止する。

−  非復帰形の保護装置が作動する。

−  高温,短絡,故障などを検知して停止する。


20

B 8446-2

:2016

単一故障状態及び合理的に予見可能な誤使用を模擬した試験は,

製造業者が定める代表的な条件で行い,

次の事項を一つずつ適用する。ただし,5.15.2 の本質的安全設計がされている部分には適用しない。

−  一つの電源の電圧変動

−  一つの電源ケーブルの逆接続

−  一つの電気的接続部の解放,及び隣接する電気的接続部への接触

−  一つの電気的接続部の誤接続

−  一つの能動放熱装置の停止

−  一つの放熱用の穴の閉鎖

−  一つの駆動部のロック

−  一つの電池の逆接続

−  一つの電池の過充電

5.16 

アシスト力による危険源 

5.16.1 

誤ったアシストによる筋・けん(腱)・じん(靭)帯の傷害 

5.16.1.1 

一般 

ロボットのアシスト力は,ユーザが意図する方向にだけ出力されるよう設計しなければならない。ロボ

ットのアシスト力が,ユーザの意図する方向と逆方向に誤って出力されるおそれがある場合は,その誤っ

たアシストから,ユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯を保護するよう,ロボットを設計しなければなら

ない。

意図する使用において,随意的な筋緊張が起こらず,かつ,意図しない筋緊張が起こらないユーザを想

定する場合には,5.16.1 を適用しない。

注記 1  筋・けん(腱)

・じん(靭)帯の傷害は,ユーザが随意的に筋を収縮させているときに,筋・

けん(腱)

・じん(靭)帯をし(弛)緩・保護する反射が働かない程度の短い時間で,外力に

よって強制的に伸張させられる場合(遠心性等張運動)に起こる。誤ったアシストによって,

ユーザの筋又はけん(腱)に遠心性等張運動が引き起こされ,かつ,その程度が筋,けん(腱)

又はじん(靭)帯の強度を超える場合に傷害に至る可能性が高くなる。

注記 2  筋・けん(腱)

・じん(靭)帯に過負荷が生じたとき,筋・けん(腱)

・じん(靭)帯をし(弛)

緩・保護する反射が働くことが一般に知られている。誤ったアシストによる負荷が持続的に

ユーザの最大発揮力を超える場合,又は持続的な抵抗によって低下した発揮力を超える場合

には,この反射が働くことが期待できる。

5.16.1.2 

本質的安全設計 

必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

ユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯の収縮方向だけにアシスト力を発揮する構造を採用する。

b)

誤ったアシストによって生じるユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯への最大負荷が,静止時におけ

るユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯の最大発揮力を超えない設計を採用する。

c)

誤ったアシストによって生じるユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯への最大負荷が,遠心性等張運

動における筋・けん(腱)

・じん(靭)帯の最大発揮力を超えない設計を採用する。

注記 1  遠心性等張運動時の筋繊維の最大発揮力は,静止時の最大発揮力の 1.8 倍であることが知ら

れている。遠心性等張運動時に最大発揮力を超える負荷が掛かると,筋繊維は断裂する

[26]

なお,実用上は,ユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯への負荷を,その筋・けん(腱)

・じん(靭)

帯が作用する関節への負荷として考えてよい。ユーザの筋・けん(腱)

・じん(靭)帯への負荷を,その筋・


21

B 8446-2

:2016

けん(腱)

・じん(靭)帯が作用する関節への負荷として考える場合,必要に応じて,次の方策のうち一つ

以上を適用しなければならない。

d)

誤ったアシストによって生じるユーザの関節への最大負荷が,静止時におけるユーザの関節の最大発

揮力を超えない設計を採用する。

e)

誤ったアシストによって生じるユーザの関節への最大負荷が,遠心性等張運動における関節の最大発

揮力を超えない設計を採用する。

関節の最大発揮力は,ユーザ及び関節の部位に依存するため,d)  又は e)  の方策を適用する場合,製造

業者は意図するユーザのグループ(

例  年齢,性別,職業など)を定め,必要な関節について,最大発揮

力を見積もらなければならない。

注記 2  最大発揮力を見積る方法には,文献のデータを採用する方法,実際に計測する方法,ユーザ

が通常可能な運動から推定する方法がある。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の

人間特性計測データベース(Human Characteristics Database)は,文献として利用できる。

製造業者が,意図するユーザのグループを定めない場合,又は必要な関節の最大発揮力を見積もらない

場合は,肩,肘,手,股,膝及び足の各関節の最大発揮力として,

表 を用いてよい。

表 1−人の主要な関節の最大発揮力(ユーザのグループを定めない場合) 

単位  N・m

関節

最大発揮力

43.2

32.4

7.2

72

41.4

25.2

注記  この表は,独立行政法人製品評価技術基盤機構の人間特性計測データベースに

記載された,健常な 75 歳∼79 歳女性(日本人)25 percentile の静止時の最大発

揮力に,1.8 倍(静止時の筋繊維の最大発揮力を,遠心性等張運動時の筋繊維の

最大発揮力に換算する係数)を乗じて算出している。

5.16.1.3 

安全防護及び付加保護方策 

必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

ユーザ又はオペレータが,アシスト力の制限を設定できる機能を採用する。この設定は,アシスト中

又はアシスト停止中のいずれで行ってもよい。

b)

誤ったアシストが起こるおそれが生じた場合に,アシストを停止又はアシスト力を制限する機能を備

える。

c)

誤ったアシストが起こったことを検出して,アシストを停止又はアシスト力を制限する機能を備える。

さらに,a)c)  の方策を適用する場合,それぞれの機能について,最大アシスト力が

表 に定める最大

発揮力を超える度合いに応じた信頼性をもたなければならない。

注記  アシスト力を制限する方法には,単純に出力を飽和させるカットオフによる方法,十分に低い

ゲインからアシストを開始し,ユーザ又はオペレータによってゲインを調整させる方法,制限

の設定範囲内でアシストを達成するアルゴリズムによる方法などがある。


22

B 8446-2

:2016

5.16.1.4 

使用上の情報 

最大アシスト力をユーザマニュアルに記載するほか,5.16.1.3 の a)b)  又は c)  を適用する場合,次の事

項をユーザマニュアルに記載しなければならない,

−  アシスト力制限下での,最大アシスト力

−  アシスト力制限が設定可能であれば,その設定方法

−  アシスト力制限が設定可能であれば,その設定を誤った場合に備えた注意又は警告

−  誤動作,故障などによって,アシスト力制限が働かなくなった場合に備えた注意又は警告

5.16.1.5 

検証及び妥当性確認 

検証及び妥当性確認は,次による。

a)  5.16.1.2

を適用する場合,ロボットの最大アシスト力は,データシート又は仕様書によって検証しても

よい。最大アシスト力は,ロボットが 1 秒間連続して出力可能な値として考えてよい。ロボットが,

最大アシスト力を 1 秒間維持できない場合は,1 秒間での平均を利用してもよい。

b)  5.16.1.3

の a)  を適用する場合は,製造業者が定める代表的な設定において,アシスト力制限が機能す

ることを試験しなければならない。試験の結果,アシスト力が設定の 110 %を下回らなければならな

い。

c)

5.16.1.3

の b)  又は c)  を適用する場合は,製造業者が定めるシナリオに従って,アシスト力制限が機

能することを試験しなければならない。

以上の試験では,装着されない状態のロボットについて,製造業者が定める,通常使用を最も代表する

位置・姿勢を模擬して行ってよい。可能であれば,ロボットの当該部分だけを対象に行ってよい。

5.16.2 

関節可動域を超えたアシストによる関節の傷害 

5.16.2.1 

一般 

ロボットのアシスト力は,ユーザの受動的な関節可動域内においてだけ出力されるよう設計しなければ

ならない。もし,ロボットのアシスト力が,ユーザの受動的な関節可動域を超えるように出力されるおそ

れがある場合は,そのようなアシストから,ユーザの関節を保護するよう,ロボットは設計しなければな

らない。

注記  関節の傷害は,関節の位置が受動的な可動域の端にあるとき,外力によって可動域を超える方

向への負荷が掛かり,その程度が関節の強度を超える場合に起こる(

例  膝の逆折れ)。

5.16.2.2 

本質的安全設計 

必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

ユーザの受動的な関節可動域内にアシストを制限する,機械的な制限を採用する。ただし,この機械

的な制限は,最大アシスト力に対して十分な強度をもたなければならない。

注記 1  アシストに用いる回転関節の軸を,ユーザの関節の軸に合わせる構造をロボットが採用して

いる場合,関節可動域の制限は,回転角度の制限と等しい。

b)

ロボットのアシスト力が,ユーザの受動的な関節可動域を超えるように出力される場合でも,ユーザ

の関節に加わる負荷が,その関節の強度を超えない設計を採用する。

関節の強度は,ユーザ及び関節の部位に依存するため,b)  の方策を適用する場合,製造業者は意図する

ユーザのグループ(

例  年齢,性別,職業)を定め,必要な関節について,強度を見積もらなければなら

ない。

注記 2  人間の関節の強度に関する系統だった情報は現状ない。ただし,人間の関節の強度を見積も

る方法には,ユーザが通常可能な運動から推定する方法(

例  膝関節は正座でも破壊されな


23

B 8446-2

:2016

いことから,膝関節の屈曲側強度は,膝上質量によるトルクに耐えられると推定できる。

)な

どがある。

製造業者が,

意図するユーザのグループを定めない場合,

又は必要な関節の強度を見積もらない場合は,

肩,肘,手,股,膝及び足の各関節の強度として,

表 に定める最大発揮力を用いてよい。

注記 3  人間の関節の強度は,その関節の随意的な最大発揮力に比べて十分大きいことが期待できる

ため,

表 の値を利用できる。

5.16.2.3 

安全防護及び付加保護方策 

必要に応じて,次の方策のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

ユーザの受動的な関節可動域内にアシストを制限する機能を採用する。

b)

ユーザ又はオペレータが,アシスト力の制限を設定できる機能を採用する。この設定は,アシスト中

又はアシスト停止中のいずれで行ってもよい。

c)

ユーザの受動的な関節可動域に近付いたことを検出し,アシストを停止又はアシスト力を制限する機

能を採用する。

d)

ユーザの受動的な関節可動域を超えたことを検出し,アシストを停止又はアシスト力を制限する機能

を採用する。

以上の方策を適用する場合,それぞれの機能について,最大アシスト力が

表 に定める最大発揮力を超

える度合いに応じた信頼性をもたなければならない。

注記  アシスト力を制限する方法には,単純に出力を飽和させるカットオフによる方法,十分に低い

ゲインからアシストを開始し,ユーザ又はオペレータによってゲインを調整させる方法,制限

の設定範囲内でアシストを達成するアルゴリズムによる方法などがある。

5.16.2.4 

使用上の情報 

使用上の情報は,次による。

a)  5.16.2.2

の a),又は 5.16.2.3 の a)  を適用する場合,次の事項をユーザマニュアルに記載しなければな

らない。

−  可動域制限の方式(

例  機械的制限,機能的制限など)

−  可動域制限される範囲

−  可動域制限が設定可能であれば,その設定方法

−  可動域制限が設定可能であれば,その設定を誤った場合に備えた注意又は警告

−  誤動作,故障などによって,可動域制限が働かなくなった場合に備えた注意又は警告

b)  5.16.2.2

の b)  を適用する場合は,最大アシスト力をユーザマニュアルに記載しなければならない。

c)

5.16.2.3

の b)c)  又は d)  を適用する場合,次の事項をユーザマニュアルに記載しなければならない。

−  アシスト力制限が働き始める条件(

例  位置,角度,速度など)

−  アシスト力制限下での,最大アシスト力

−  アシスト力制限が設定可能であれば,その設定方法

−  アシスト力制限が設定可能であれば,その設定を誤った場合に備えた注意又は警告

−  誤動作,故障によって,アシスト力制限が働かなくなった場合に備えた注意又は警告

5.16.2.5 

検証及び妥当性確認 

検証及び妥当性確認は,次による。

a)  5.16.2.2

の a)  を適用する場合は,機械的な関節可動域制限の強度計算によって検証してもよい。強度

計算では,ユーザの発揮する力・トルクは無視してもよいが,制限への衝突による負荷を考慮するこ


24

B 8446-2

:2016

とが望ましい。試験によって検証する場合は,衝突による負荷を模擬する方法で,機械的な関節可動

域制限に 50 回衝突させた後,関節可動域制限の変形が,関節角度について 5 度以内に収まっていなけ

ればならない。

注記  強度計算又は試験のために衝突による負荷を推定する方法には,通常使用における実測値を利

用する方法,衝突時のエネルギーの授受を基準にする方法,運動量の授受を基準にする方法な

どがある。

b)  5.16.2.2

の b)  を適用する場合は,最大アシスト力に関係するデータシート,仕様書などによって検証

してもよい。最大アシスト力は,ロボットが 1 秒間連続して出力可能な値として考えてよい。ロボッ

トが,最大アシスト力を 1 秒間維持できない場合は,1 秒間での平均を利用してもよい。

c)

5.16.2.3

の a)  を適用する場合は,製造業者が定めるシナリオに従って,関節可動域制限が機能するこ

とを試験しなければならない。試験の結果,設定された可動域制限からの行き過ぎが,関節角度につ

いて 5 度以内に収まっていなければならない。

d)  5.16.2.3

の b)  を適用する場合は,製造業者が定める代表的な設定において,アシスト力制限が機能す

ることを試験しなければならない。試験の結果,アシスト力が設定に対して,110 %を下回らなけれ

ばならない。

e)

5.16.2.3

の c)又は d)  を適用する場合は,製造業者が定めるシナリオに従って,アシスト力制限が機能

することを試験しなければならない。

以上の試験では,装着されない状態のロボットについて,製造業者が定める,通常使用を最も代表する

位置・姿勢を模擬して行ってよい。可能であれば,ロボットの当該部分だけを対象に行ってもよい。

安全関連制御システムに対する要求事項 

6.1 

要求安全性能 

6.1.1 

一般 

JIS B 8445

の 6.1.1(一般)による。ただし,JIS B 8445 の 6.5.3(移動表面の検知)及び 6.6(安定性制

御)に関する要求事項は適用しない。

6.1.2 

要求パフォーマンスレベル 

JIS B 8445

の 6.1.3(選択した生活支援ロボットのタイプに対する要求パフォーマンスレベル)による。

6.1.3 

用途に固有のパフォーマンスレベル要求事項 

JIS B 8445

の 6.1.4(用途に固有のパフォーマンスレベル要求事項)による。

6.1.4 

代替方法 

JIS B 8445

の 6.1.5(代替方法)による。

6.2 

ロボットの停止 

JIS B 8445

の 6.2(ロボットの停止)による。

6.3 

運転空間の制限 

JIS B 8445

の 6.3(運転空間の制限)によるほか,次による。

a)

上肢の動作アシストを意図したロボットの部分(ただし,拘束部を除く。

)とユーザとの接触に関わる

リスクを低減するための,運転空間の制限機能に対してだけ適用する[5.10.7.1 及び JIS B 8445 

5.10.9.3

(安全防護及び付加保護方策)の a)  参照]

b)

この運転空間の制限機能だけによって,ロボットとユーザとの危険な接触を防止する場合は,該当す

る機能を安全関連部とし,リスクアセスメントに基づいて適切に特定したパフォーマンスレベルを満


25

B 8446-2

:2016

たさなければならない(6.1.3 参照)

6.4 

安全関連速度制御 

JIS B 8445

の 6.4(安全関連速度制御)によるほか,次による。

a)

上肢の動作アシストを意図したロボットの部分(ただし,拘束部を除く。

)と,ユーザとの接触に関わ

るリスクを低減するための,速度制限機能だけに対して適用する[5.10.7.1 及び JIS B 8445 の 5.10.9.3

(安全防護及び付加保護方策)の b)  参照]

b)

この速度制限機能だけによって,ロボットとユーザとの危険な接触を防止する場合は,該当する機能

を安全関連部とし,リスクアセスメントに基づいて適切に特定したパフォーマンスレベルを満たさな

ければならない(6.1.3 参照)

6.5 

安全関連環境認識 

JIS B 8445

の 6.5(安全関連環境認識)による。ただし,JIS B 8445 の 6.5.3(移動表面の検知)の要求事

項は適用しない。

6.6 

安全関連力制御 

JIS B 8445

の 6.7(安全関連力制御)によるほか,次による。

a)  5.10.2.3

の e)  又は f)  の機能だけによって転倒防止を実現する場合は,該当する機能を安全関連部とし,

パフォーマンスレベル:PLc 以上で実現しなければならない。 

b)  JIS B 8445

の 5.10.9.3(安全防護及び付加保護方策)の c)  の機能だけによって,上肢の動作アシスト

を意図したロボットの部分(ただし,拘束部を除く。

)とユーザとの危険な接触の防止を実現する場合

は,該当する機能を安全関連部とし,リスクアセスメントに基づいて適切に特定したパフォーマンス

レベルを満たさなければならない(5.10.7.1 及び 6.1.3 参照)

6.7 

特異点保護 

JIS B 8445

の 6.8(特異点保護)による。ただし,JIS B 8445 の 6.8 の c)  の警告に関しては,8.6 の要求

事項を満たさなければならない。

6.8 

ユーザインタフェースの設計 

6.8.1 

一般 

JIS B 8445

の 6.9.1(一般)によるほか,表示の見やすさのために,必要に応じて,次の方策を適用しな

ければならない。

a)

適切な照明を装備する。

b)

適切なディスプレイを設計する。

さらに,誤操作に対する保護のためには,次の方法によることが望ましい。

−  操作入力を,適切な範囲に限定する設計を採用する。

−  操作可能な項目及び範囲だけを表示する設計を採用する。

−  操作入力時に入力確認を行い,誤操作を防止する設計を採用する。

−  操作入力を受け付けたことを適切に(例えば,音,光,振動,表示によって)フィードバックする設

計を採用する。

−  誤った入力があった場合に,適切にフィードバックする設計を採用する。

遠隔制御の場合,遠隔制御システムは,次の部分にだけ影響するように設計及び製作しなければならな

い。

−  ロボットの関連する部分

−  ロボットの関連する機能


26

B 8446-2

:2016

注記  JIS B 8445 の 6.9.2(状態表示)に対応する要求事項は,この規格の 6.8.1 及び 8.2 に規定してい

る。

6.8.2 

接続及び切断 

JIS B 8445

の 6.9.3(接続及び切断)による。

6.8.3 

複数ロボットに対する単一操縦装置 

JIS B 8445

の 6.9.4(複数ロボットに対する単一操縦装置)による。

6.8.4 

複数の操縦装置 

JIS B 8445

の 6.9.5(複数の操縦装置)による。ただし,JIS B 8445 の 6.9.5 の a)  及び g)  の表示に関し

ては,この規格の 8.2 の要求事項を満たさなければならない。

6.8.5 

無線又は着脱式操縦装置 

JIS B 8445

の 6.9.6(無線又は着脱式操縦装置)による。

6.8.6 

不正使用の防止 

JIS B 8445

の 6.9.7(不正使用の防止)による。

6.9 

運転モード 

JIS B 8445

の 6.10(運転モード)による。ただし,JIS B 8445 の 6.10.1(一般)に規定する選択されたモ

ードの表示に関しては,この規格の 8.2 の要求事項を満たさなければならない。

6.10 

手動制御装置 

6.10.1 

一般 

JIS B 8445

の 6.11.1(一般)による。

6.10.2 

状態表示 

JIS B 8445

の 6.11.2(状態表示)に対応する要求事項は,この規格の 6.8.1 及び 8.2 に規定する。

6.10.3 

ラベル表示 

JIS B 8445

の 6.11.3(ラベル表示)に対応する要求事項は,この規格の 8.2 に規定する。

6.10.4 

意図しない運転からの防護 

JIS B 8445

の 6.11.4(意図しない運転からの防護)によるほか,操縦装置への誤った接触による意図し

ない運転によって発生するリスクが受容できない場合,その操縦装置を誤った接触から保護しなければな

らない。

注記 1  例えば,停止が受容できない場合の停止ボタンは,誤った接触から保護するのがよい。

注記 2  誤った接触からの保護方策には,ボタンの配置を工夫する,十分な押し時間を設定するなど

がある。

検証及び妥当性確認 

JIS B 8445

の箇条 7(検証及び妥当性確認)によるほか,検証及び妥当性確認のために,5.x.5 及び 5.x.x.5

の試験を行うとき,

試験条件について特に記載のない場合は,

意図する使用の範囲に限定して条件を定め,

その条件を記録に残さなければならない。

注記  検証及び妥当性確認のための試験条件の例を,附属書 に示す。

使用上の情報 

8.1 

一般 

JIS B 8445

の 8.1(一般)によるほか,日付及び時刻の表記,並びに特定のシンボルは,文化圏によって


27

B 8446-2

:2016

異なった理解をされるおそれがあることに注意するのがよい。

注記 1  例えば,警告又は禁止を意図して“×”記号を用いる場合は,文化圏によって肯定と理解さ

れる場合があるため注意するのがよい。

注記 2  日付及び時刻の表記について,情報交換のために適切であれば,JIS X 0301 によることが望

ましい。

8.2 

マーキング又は表示 

JIS B 8445

の 8.2(マーキング又は表示)によるほか,次による。

a)  JIS B 8445

の 8.2 の第 15 段落から

注記 までに対応する要求事項は,この規格の 8.6 に規定する。

b)

手動操作装置には,ISO 7000 に従って,機能を明確に示すマーキング又は表示をしなければならない。

例えば,電源オン,

(現在の)運転モード,故障が検出されたなど,操縦装置の状態は常に明確に表示

しなければならない。この状態は,ユーザ及び/又はオペレータの見やすい場所に表示することが望

ましい。

c)

遠隔制御の場合,各操縦装置は,どのユニットがロボットのどの部分を制御しているのかを明確に見

分けられるようにしなければならない。

d)

表示に用いる色の意味は,JIS C 0448 又は JIS B 9960-1 を用いてもよい。

e)

表示のために,視覚的信号を用いてもよい。

8.3 

ユーザマニュアル 

JIS B 8445

の 8.3(ユーザマニュアル)によるほか,ユーザマニュアルには,使用の限定を含むロボット

の意図する使用を記載しなければならない。

8.4 

サービスマニュアル 

JIS B 8445

の 8.4(サービスマニュアル)による。

8.5 

インストールマニュアル 

インストールマニュアルには,一定の技術知識又は特別な技能を必要とするために,設置作業者だけが

実施する必要のある,ロボットの設置,インフラ工事,初期設定などに関する説明を含めなければならな

い。

設置,インフラ工事及び初期設定に関する説明は,ロボットの安全性,品質及び機能性を製造業者の指

定する水準に維持するために十分な情報を含んでいなければならない。

ロボットと併せて提供する情報には,必要な場合,次の事項を含めなければならない。

a)

搬送,設置,取付け及びインフラ工事に関する明確で包括的な説明

b)

ロボットの初期設定に関する要求事項

c)

必要に応じて,ロボットの物理的環境条件に関する情報(例えば,照明条件など)

d)

次に関する情報(適宜)

−  ロボットの初期設定のデータ

−  搬送手順

−  工事手順

−  初期設定手順

−  ロボットの動作確認方法及びその手順

−  工事などに必要な機器のリスト

−  工事,初期設定などに必要な工具のリスト

e)

協調運転する複数のロボットの場合,安全防護,インタロック機能及び危険源に対するガードのイン


28

B 8446-2

:2016

タロックの記述(相互接続図を含む。

f)

環境システムと連携して動作するロボットの場合,通信経路及び通信プロトコルの確認方法,並びに

通信切断時のロボットの動作の確認方法

g)

ロボットの安全防護策及びその機能確認の方法

h)

安全な設置及びインフラ工事,初期設定に関するリスク及びその保護方策,並びに残存リスクに関す

る情報

8.6 

エラー及びアラート 

危険源の発生,危険状態などのエラーをユーザ,オペレータ,安全管理者及び第三者に知らせるために,

アラート(例えば,視覚的信号,聴覚的信号,触覚的信号)を利用する場合は,必要に応じて,次の方策

のうち一つ以上を適用しなければならない。

a)

エラーの緊急度及び優先度に応じて異なったアラートのパターンを採用する。

b)

ユーザ,オペレータ及び安全管理者が取らなければならない対処方法に応じて異なったアラートのパ

ターンを採用する。

c)

アラートを発することを意図した信号発生装置を,アラート以外にも用いる場合は,アラートの発生

を妨げない設計とする。

d)

緊急度及び優先度が低いアラートが,より緊急度及び優先度が高いアラートの発生を妨げない設計と

する。

e)

エラーの原因が解消されたことをロボットが確認するか,又はユーザ,オペレータ若しくは安全管理

者の操作によって,ロボット若しくはアラートが停止するまで,アラートを継続する。

ロボットに複数のアラートを発する装置がある場合,互いのアラートを識別できることが望ましい。

注記 1  識別のために,エラーごとにアラートを発する装置を一つに限定する方法,又は装置ごとに

パターンを変える方法がある。

注記 2  エラーによっては,複数の装置からアラートを発せざるを得ない場合がある(通信の切断な

ど)

視覚的信号によるアラートに用いる色の意味は,JIS C 0448 又は JIS B 9960-1 を用いてもよい。ただし,

ロボットの意図する使用によっては,他の標準を考慮することが望ましい。

注記 3  例えば,医療機器の警報システムを規定する JIS T 60601-1-8 では,即座に人命が損なわれる

ようなエラーを警告することだけを目的に,赤の点滅を用いると規定されている。

注記 4  例えば,JIS B 9706-1 では,故障状態を示すために,赤を用いると規定されている。

合理的に可能な限り,

持続的な注意を要する時間を短くし,

アラートの数を少なくすることが望ましい。

注記 5  アラートに気付くために,ユーザ及び/若しくはオペレータに持続的かつ長時間の注意が必

要となる場合,又はアラートが多すぎる場合,アラートの有効性を無にするような注意力の

欠如又は混乱をユーザ及び/又はオペレータにもたらすことがある。

適切なアラートのために,必要であれば,エラーの誤検出率及び/又はエラーの検出性能の検証をする

ことが望ましい。

警告装置は,検査が容易に行えるように設計し,配置しなければならない。

注記 6  定期検査に関する要求事項は,9.4 に規定している。


29

B 8446-2

:2016

使用の限定及び管理 

9.1 

一般 

ロボットの使用を限定及び管理することによって,製造業者は,特定の危険源の除去又はリスクの低減

を行うことができる。製造業者は,ユーザ及びオペレータ,使用される環境条件,並びに安全に関わる性

能を維持する期間について,限定及び管理を適切に設定しなければならない。

ロボットの使用を限定する手段には,次の a)c)  のような手段がある。

a)

ユーザ及びオペレータの知識及び能力を限定する。

b)

ロボットが使用される環境条件を限定する。

c)

ロボットの安全に関わる性能が維持される期間を限定する。

注記 1  ロボットはその意図する使用において,既に使用の限定が与えられている場合がある。この

場合,使用の限定による危険源の除去を前提としてリスクアセスメントを行える(4.1 参照)

注記 2  ロボットの使用の限定は,JIS B 9700 の 5.3(機械類の制限の決定)に規定されている機械類

の制限に相当する。

さらに,ロボットの使用を管理する方法には,上記の a)c)  に対応して,次の d)f)  のような手段が

ある。

d)

ユーザ及びオペレータの知識及び能力の限定を確実にするために,教育及び訓練を施す。

e)

ロボットが使用される環境条件の限定を確実にするために,環境の整備を行う。

f)

設計寿命の間,ロボットの安全に関わる性能が維持されるために,定期的な検査を実施し,適切な保

守を行う。

注記 3  ロボットの使用が d)f)  の手段などによって管理されている場合,ユーザ又はオペレータが

意図的にロボットの使用の限定を超えて使用することは,合理的に予見可能な誤使用に含ま

ない。

9.2 

教育及び訓練 

製造業者が,特定の危険源の除去又はリスクの低減のために,ユーザ及びオペレータの知識及び能力を

限定し,かつ,それを保障するために,教育及び訓練を設定する場合は,次の a)  及び b)  を満たさなけれ

ばならない。

a)

製造業者は,教育及び訓練しなければならない内容及び手段を特定し,ユーザ,オペレータ,並びに

教育及び訓練を担当する者に伝えなければならない。

b)

製造業者は,教育及び訓練されていないことに起因する,受容できないリスクを明確にし,ユーザ,

オペレータ,並びに教育及び訓練を担当する者に伝えなければならない。

注記 1  安全管理者,設置作業者又は保守作業者が,教育及び訓練を担当する者となる場合がある。

注記 2  教育及び訓練を担当する者は,教育及び訓練を確実にするために,製造業者から提供された

情報に基づいてリスクアセスメントを行い,教育及び訓練の計画を策定し,実施することが

望ましい。

注記 3  教育及び訓練の具体例を,附属書 に示す。

注記 4  教育及び訓練の記録は,文書化し,一定期間保管することが望ましい。該当する者が教育及

び訓練を受けたことを証明する必要がある場合は,ライセンスを発行するなどの方法をとる

ことができる。

9.3 

環境整備 

製造業者が,

特定の危険源の除去又はリスクの低減のために,

ロボットが使用される環境条件を限定し,


30

B 8446-2

:2016

かつ,それを保障するために,安全管理者による環境の整備を設定する場合は,次の a)  及び b)  を満たさ

なければならない。

a)

製造業者は,環境を整備する手段を特定し,安全管理者に伝えなければならない。

b)

製造業者は,環境が整備されないことに起因する,受容できないリスクを明確にし,安全管理者に伝

えなければならない。

注記 1  ユーザ又はオペレータが,環境の整備を担う場合がある。この場合,ユーザ又はオペレータ

は,安全管理者とみなされる。

注記 2  ユーザ又はオペレータが,環境が整備されている場所だけにロボットを移動させる場合又は

安全関連障害物を避けながらロボットを移動させる場合がある。この場合,ユーザ又はオペ

レータは,安全管理者とみなされない。

注記 3  設置作業者があらかじめ環境整備を行うことがある。この場合,設置作業者は安全管理者と

みなされる。

注記 4  安全管理者は,環境の管理・維持を確実にするために,製造業者から提供された情報に基づ

いてリスクアセスメントを行い,運用の計画を策定し,実施することが望ましい。

注記 5  ロボットの耐環境性に関する要求事項は,5.14 に規定している。

注記 6  環境を整備する手段を安全管理者に伝える方法には,ユーザマニュアル,サービスマニュア

ル,インストールマニュアルなどに記載するほか,安全管理者のためのマニュアルに記載す

る方法がある。

9.4 

定期検査及び保守 

製造業者は,ロボットがその設計寿命の間,保守を行わない場合でも安全に関わる性能を維持できるよ

う努力しなければならない。製造業者が,耐久性不足若しくは信頼性不足の危険源の除去,又はリスクの

低減のために,ロボットの安全に関わる性能が維持される期間を限定する場合は,製造業者は,定期的検

査及び/又は保守について,次の a)d)  を満たさなければならない。

a)

製造業者は,定期検査の実施間隔,頻度及びタイミングを特定し,ユーザ,オペレータ,安全管理者,

又は保守作業者に伝えなければならない。

b)

製造業者は,検査及び保守サービスを提供する保守作業者への連絡手段を特定し,ユーザ,オペレー

タ又は安全管理者に伝えなければならない。

c)

製造業者は,保守の必要性を判断する手段及び保守の手段を特定し,保守作業者に伝えなければなら

ない。

d)

製造業者は,適切な検査及び保守が行われないことに起因する,受容できないリスクを明確にし,ユ

ーザ,オペレータ,安全管理者又は保守作業者に伝えなければならない。

注記 1  ロボットの耐久性に関する要求事項は,5.11 に規定している。

注記 2  部分的な検査及び保守が,ユーザ,オペレータ又は安全管理者によって行われる場合がある。

この場合,ユーザ,オペレータ又は安全管理者は,保守作業者とみなされる。

注記 3  検査のタイミングを通知するために,ロボット本体の機能又は遠隔サービスによって,ロボ

ットの劣化を検出・推定し,ユーザ,オペレータ,安全管理者又は保守作業者に通知しても

よい。

注記 4  保守作業者への連絡手段には,保守作業者又は保守作業者の属する組織(製造業者の場合も

ある。

)の住所,電話番号,URL,e メールアドレスなどがある。

注記 5  保守の必要性を判断する手段として,検査における基準を設定するほか,稼働時間又は稼働


31

B 8446-2

:2016

状況を利用する方法もある。

注記 6  ユーザ,オペレータ又は安全管理者は,製造業者から提供された情報に基づいてリスクアセ

スメントを行い,定期検査及び保守の計画を策定し,実施することが望ましい。

注記 7  定期検査及び保守の記録は,保守作業者が文書化し,一定期間保管することが望ましい。こ

の記録の写しは,ユーザ,オペレータ又は安全管理者に渡すことが望ましい。

10 

保護具 

設計による保護方策を講じた後もなお人体が危険なエネルギーにさら

(曝)

されるリスクが受容できず,

製造業者がユーザに保護具の使用を求める場合,製造業者は,そのリスクを受容可能なレベルにまで軽減

する保護具の仕様を特定し,ユーザマニュアルに記載するか,又は仕様を満たす保護具を附属品として提

供しなければならない。

注記  特に頭部への衝撃による危害に対して注意を払うのがよい。


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B 8446-2

:2016

附属書 A

(参考)

危険源の連鎖的な発展及びそのリスク低減

この附属書は,5.1 の“危険源に関連するリスクを低減するために,二次的に引き起こされる危険源のリ

スクを低減することで代替してもよい”という規定の背景となる考え方を示す。

A.1 

用語及び定義 

この附属書で用いる用語及び定義は,次による。

A.1.1 

安全(safety) 

受容できないリスクがない(JIS Z 8051:2004 の 3.1 参照)

A.1.2 

リスク(risk) 

危害の発生確率及びその危害の程度の組合せ(JIS Z 8051:2004 の 3.2 参照)

A.1.3 

危害(harm) 

人の受ける身体的傷害若しくは健康傷害,又は財産若しくは環境の受ける害(JIS Z 8051:2004 の 3.3 

照)

A.1.4 

ハザード(hazard) 

危害の潜在的な源(JIS Z 8051:2004 の 3.5 参照)

注記  この規格の本体では,“危険源”と表記されているが,この附属書では“ハザード”と表記する。

A.1.5 

危険状態(hazardous situation) 

人,財産又は環境が,一つ以上のハザードにさらされる状況(JIS Z 8051:2004 の 3.6 参照)

A.1.6 

リスク低減手段(risk reduction measure) 

ハザードを除去又はリスクを低減する手段又は行動。

注記  この用語は,JIS Z 8051:2004 の 3.8 で定義される保護方策(protective measure)と同一だが,保

護方策はその語感から本質的安全設計及び使用上の情報を含まないと誤解されるおそれがある

ため,リスク低減手段という用語を定義した。

A.1.7 

安全状態(safe state) 

差し迫ったハザードのない状態(JIS B 8445:2016 の 3.9 参照)

注記 1  安全状態は,危険状態と対となる用語でないことに注意する必要がある。

注記 2  ロボットは通常,安全状態から使用されることが想定されている。

注記 3  ロボットの使用において,ハザード又は危険状態が意図的,又は意図せずに発生していると

きに,安全状態に移行することを目的として,リスク低減手段が講じられることがある。こ


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B 8446-2

:2016

のときの安全状態は,通常の使用開始時の安全状態と異なり,再び使用することを意図しな

いものがある。

A.2 

ハザードの連鎖的な発展を考慮したリスクアセスメント 

製造業者がリスクアセスメントを実施する場合,危害に直結する危険状態,及び危険状態に直結するハ

ザードをまず特定し,それらについて,リスク評価を行うことが重要である。受容できないリスクについ

てリスク低減手段を講じ,全体のリスクが許容可能となれば,それ以外の多くの“危険状態に直結しない”

ハザードは,全体のリスクに寄与しないこととなり,リスクアセスメントに伴う労力を軽減することがで

きる。

危険状態に直結しないハザードの例を,次に挙げる。

−  JIS B 8445 の 5.11(耐久性不足による危険源)の“耐久性不足”によるハザードは,それ自体で危険

状態とならず,JIS B 8445 の 5.10.3(移動中の不安定性)の“移動中の不安定性”による転落又は横

転を経て,安全関連物体に倒れ込むという危険状態を招き,その結果として,エネルギーの程度に応

じた危害を安全関連物体に与えることになる。

−  同様に,JIS B 8445 の 5.12(誤った自律的判断及び動作による危険源)の“誤った自律的判断及び動

作”によるハザード,JIS B 8445 の 5.16(位置確認及びナビゲーションの誤差による危険源)の“位

置確認及びナビゲーションの誤差”によるハザードは,それ自体では危険状態とならず,JIS B 8445

の 5.10.8(安全関連障害物との衝突)の“安全関連障害物との衝突”という危険状態を招き,その結

果として,エネルギーの程度に応じた危害を安全関連物体に与えることになる。

これらの例では,JIS B 8445 の 5.11 のハザードのリスクは,

“安全関連物体に倒れ込む”という“二次

的な”危険状態のリスクを低減することによって代替できる。また,JIS B 8445 の 5.12 及び JIS B 8445 

5.16

のハザードのリスクは,

“二次的な”  JIS B 8445 の 5.10.8 のハザードのリスクを低減することで代替

できる。

このようなハザードの連鎖的な発展及びそのリスク低減は,ハザードの発生から危害に至るまでの遷移

を考慮すれば理解しやすい。

A.3 

ハザードの連鎖的な発展を考慮したリスク低減手段 

製造業者は,ロボットの安全を達成するために,受容できないリスクについてリスク低減手段を講じ,

リスクを受容可能なレベルまで低減する必要がある(箇条 参照)

。リスクを低減するためには,危害の程

度を下げるか,又は危害の発生確率を下げる必要がある。

危害の程度を下げるには,危険状態におけるハザードのエネルギーの程度を下げる必要がある。また,

危害の発生確率を下げるには,危険状態の発生確率を下げるか,又はその危険状態から危害への遷移確率

を下げる必要がある。

危険状態の発生確率を下げるには,関連するハザードを除去するか,その発生確率を下げるか,又はそ

のハザードから危険状態への遷移確率を下げる必要がある。

参考のために,通常状態,異常状態,危険状態,危害をノードとした状態遷移図の例を,

図 A.1 に示す。

図 A.1 において,ハザードは通常状態から異常状態への遷移,又は異常状態から危険状態若しくは異なる

異常状態への遷移を意味するエッジとして表現できる。

図 A.1 のようにリスクの構造を表現するとき,あ

るノード X の発生確率を下げるには,ノード X に遷移するエッジの遷移確率を下げるか,又はそのエッジ

の元となるノードの発生確率を下げればよい。


34

B 8446-2

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注記 1  リスク低減手段によるハザードの除去は,該当するエッジを除去するか,又はそのエッジの

遷移確率をゼロにすることで表現できる。

注記 2  危険状態におけるエネルギーの程度を下げることは,危険状態から危害への遷移確率を下げ

ることで表現できる。また,危険状態におけるエネルギーの程度が受容可能な程度より小さ

ければ,危害への遷移確率はゼロと表現できる。

注記 3  ハザードが意図的に,又は意図せずに発生した後,リスク低減手段によって安全状態へ移行

することは,そのハザードの結果として生じる異常状態又は危険状態のノードから,安全状

態のノードへの遷移を表すエッジとして表現できる。

注記 4  ある時間の後に,ある異常状態が別の異常状態又は危険状態に自動的に発展する場合がある。

これは,該当するノード間の遷移を意味するエッジとして表現できる。

注記 5  状態遷移図による表現以外にも,リスクの構造を表現するモデルは多く知られている。

図 A.1 を元にリスク低減手段を検討する場合,例えば,次の技法の適用が考えられる。

− EG の遷移確率をゼロにすることで,G の発生確率をゼロにする。

−  D の発生確率をゼロにする(D につながるエッジの遷移確率をゼロにする)ことで,F に至るノード

を E だけとし,F の発生確率を下げる。

− BD 及び CE の遷移確率を下げ,D 及び E の発生確率を下げる(この場合,A,B 及び C の発生確率,

並びに AB 及び AC の遷移確率の安全への寄与は小さくなる)

−  D 及び E におけるエネルギーの程度を下げ,受容可能な程度にまで,F 及び G の発生確率を下げる(こ

のとき,DF,EF 及び EG の遷移確率はゼロとみなせ,全ての発生確率及び遷移確率の安全への寄与

は小さくなる)

− EF,EG の遷移確率を下げ,F 及び G の発生確率を下げる。

一般に知られているフォールトアボイダンス,フェールセーフ,フォールトトレランス及びフールプル

ーフの技法は,

図 A.1 のようなリスクの構造において,ハザードに機能不全,故障及び誤使用を含めるこ

とで理解できる。

この規格に記載されたリスク低減手段は,リスクの構造を考慮した上で採用することが望ましい。


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B 8446-2

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図 A.1−ハザードの連鎖的な発展及びそのリスク低減を表現する状態遷移図(例) 


36

B 8446-2

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附属書 B

(参考)

ロボットの構造及び各部の名称

ロボットの構造及び各部名称の例を,

図 B.1 及び図 B.2 に示す。

図 B.1−各部の構造及び名称(例 1 

図 B.2−各部の構造及び名称(例 2 


37

B 8446-2

:2016

附属書 C 
(参考)

ロボットの典型的な危害の発生シーン

ロボットの典型的な危害の発生シーンの例を,

表 C.1 に示す。

注記  表 C.1 は,歩行動作をアシストするロボットを想定している。

表 C.1−典型的な危害の発生シーン(例) 

危害の例

危害の発生シーン

原因

関連する

危険源

火災

指定外の電池を使用した。

仕様の違いによる過電圧・過電流

など

5.2

5.15

電池を高温になる場所(火の近くなど)に置いた。 過熱

5.7.4 

商用電源以外で電池を充電した。

過熱

5.2

5.15

充電時,放熱部分を布などで覆ってしまった。

過熱

5.2

5.15

感電

ぬ(濡)れた手で電池を扱った。

短絡

5.2

5.3.1

電池を液体でぬ(濡)らした。

短絡

5.2

5.3.1

筋骨格傷害

不適切なサイズの機器を使用した。

不適切なアシスト力の印加状態

5.9.2 

装着時,ベルトの締付けが不適切だった。

不適切なアシスト力の印加状態

5.9.2 

転倒

指定外の姿勢で機器を起動してしまった。

意図しないアシスト力発生

5.4 

不慣れなうちからアシスト強度を高く設定して

しまった。

予想外のアシスト力による歩行状

態の過剰な変化

5.4 

不適切な装着によって使用中に機器が落下し,つ

まずいた。

不適切な装着

5.10.6 

巻込み

髪の毛,衣服の裾などが回転部位の隙間に挟まれ
る。

回転部位の近傍に髪の毛,衣類が
かかっている

5.6 

挟み込み

機器の隙間に指などを添えたまま着座,もたれか
かりなどしてしまった。

隙間が狭い,着座姿勢で挟み込み
やすい形状など

5.6 


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附属書 D 
(参考)

検証及び妥当性確認のための試験条件の例

検証及び妥当性確認のための試験条件は,特に規定がない限り,次の D.1D.3 を考慮するのがよい。

D.1 

周囲温度 

風の影響がない場所で,通常 20±5  ℃の周囲温度で試験を実施する。ただし,この周囲温度が試験の合

否に影響を与える場合,23±2  ℃の周囲温度で行う。

注記  周囲温度は,機器からの放射熱の影響を受けないように機器周辺を測定した温度をいう。

D.2 

サンプルサイズ 

サンプルについて,関連する全ての試験を実施する。ただし,サンプルの破壊を伴う試験については,

別のサンプルで行ってもよい。

D.3 

サンプルの状態 

製造業者から供給された状態のままのサンプルに対して,試験を実施する。ただし,現地で組立てなど

の設置が必要な場合は,サンプルに附属する文書の指示に従って設置した後に試験を行う。

試験は,サンプルが装着されない状態で実施する。


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附属書 E

(参考)

教育及び訓練の具体例

ロボットの使用に関する教育及び訓練の具体例を示す。

E.1 

一般 

ロボットは,安全な使用を行う上でユーザの体形又は身体能力に応じた調節が必要となる部分があり,

その調節には一定の知識及び技量が求められる。

ユーザ又はオペレータの知識及び技量を担保するために,

ユーザ又はオペレータに E.2E.5 の項目についての教育及び訓練を実施する。

E.2 

機器の選定及び装着・脱装方法 

−  ユーザの体形を測定するなど,適切な機器の選定方法の教育。

−  固定具(バックル,ベルトなど)の適切な操作,調節など,装着及び脱装の訓練。

E.3 

起動及び終了 

−  起動及び終了の手順の教育及び訓練。

−  起動及び終了時にユーザが保持しなければならない姿勢などの教育及び訓練。

E.4 

各種パラメータ設定 

−  ユーザ及びオペレータの機器への慣熟度などに応じたパラメータ設定の方法及び適切なレンジ選択の

教育及び訓練。

E.5 

ユーザ又はオペレータによる定期点検及び保守 

−  機器のねじの緩み及び部品の摩耗の点検方法の教育及び訓練。

−  清掃方法の教育。


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参考文献  

[1]  JIS B 9700

  機械類の安全性−設計のための一般原則−リスクアセスメント及びリスク低減

[2]  JIS B 9706-1

  機械類の安全性−表示,マーキング及び操作−第 1 部:視覚,聴覚及び触覚シグナルの

要求事項

[3]  JIS B 9960-1

  機械類の安全性−機械の電気装置−第 1 部:一般要求事項

[4]  JIS C 0922

  電気機械器具の外郭による人体及び内部機器の保護−検査プローブ

[5]  JIS C 1010-1

  測定用,制御用及び試験室用電気機器の安全性−第 1 部:一般要求事項

[6]  JIS C 6065

  オーディオ,ビデオ及び類似の電子機器−安全性要求事項

[7]  JIS C 6950-1

  情報技術機器−安全性−第 1 部:一般要求事項

[8]  JIS C 8712

  ポータブル機器用二次電池(密閉型小型二次電池)の安全性

[9]  JIS C 8714

  携帯電子機器用リチウムイオン蓄電池の単電池及び組電池の安全性試験

[10] JIS C 9335-1

  家庭用及びこれに類する電気機器の安全性−第 1 部:通則

[11]  JIS T 0111-1

  義肢−義足の構造強度試験  第 1 部  試験負荷原理

[12] JIS T 0111-2

  義肢−義足の構造強度試験  第 2 部  試験試料

[13] JIS T 0111-3

  義肢−義足の構造強度試験  第 3 部  主要構造強度試験方法

[14] JIS T 0111-4

  義肢−義足の構造強度試験  第 4 部  主要構造強度試験の試験負荷パラメータ

[15] JIS T 0111-5

  義肢−義足の構造強度試験  第 5 部  その他の構造強度試験方法

[16] JIS T 0111-6

  義肢−義足の構造強度試験  第 6 部  その他の構造強度試験の試験負荷パラメータ

[17] JIS T 0111-7

  義肢−義足の構造強度試験  第 7 部  試験依頼書

[18] JIS T 0111-8

  義肢−義足の構造強度試験  第 8 部  試験報告書

[19] JIS T 0601-1

  医用電気機器−第 1 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項

[20] JIS T 60601-1-8

  医用電気機器−第 1-8 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項−副通則:

医用電気機器及び医用電気システムのアラームシステムに関する一般要求事項,試験方法及び適用指

 

[21] JIS X 0301

  情報交換のためのデータ要素及び交換形式−日付及び時刻の表記

[22] JIS Z 8051:2004

  安全側面−規格への導入指針

[23] IEC 60065

,Audio, video and similar electronic apparatus−Safety requirements

[24] IEC 60950-1

,Information technology equipment−Safety−Part 1: General requirements

[25] IEC 62368-1

, Audio/video, information and communication technology equipment − Part 1: Safety

requirements

[26] Choi, et.al.:

“Eccentric contraction-induced injury to type I, IIa, and IIa_IIx muscle fibers of elderly adults,”

AGE, Vol.34, pp.215-226, 2012