>サイトトップへ >このカテゴリの一覧へ

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

(1)

目  次

ページ

序文

1

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語,定義,略語及び量記号

2

3.1

  用語及び定義

2

3.2

  略語及び量記号

4

4

  振動感覚いき(閾)値の取扱い

5

4.1

  一般

5

4.2

  繰返し測定での平均値

5

4.3

  いき(閾)値の測定−再測定間の変動

5

4.4

  問題となる要因の取扱い

6

4.5

  測定−再測定間の疑わしい変動の増加の取扱い

6

5

  いき(閾)値移動の算出

7

5.1

  一般

7

5.2

  相対的いき(閾)値移動

7

5.3

  基準いき(閾)値移動

7

5.4

  いき(閾)値移動の平均

7

5.5

  タクトグラム

8

5.6

  いき(閾)値移動の一致度

9

5.7

  機械受容器群のいき(閾)値移動の平均

9

6

  振動感覚いき(閾)値及び  いき(閾)値移動の分析方法

10

6.1

  一般

10

6.2

  振動感覚いき(閾)値の測定誤差及び統計学的有意性

10

6.3

  相対的いき(閾)値移動の測定誤差及び統計学的有意性

10

6.4

  健常者における振動感覚いき(閾)値

11

6.5

  健常者の振動感覚いき(閾)値からの偏差

11

6.6

  振動感覚いき(閾)値の変化による生理学的及び臨床的な影響

11

附属書 A(規定)健常者における振動感覚いき(閾)値

12

附属書 B(参考)振動感覚いき(閾)値の変化の影響

17

 


B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本機械学会 (JSME) 及び財団法

人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業

標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責

任はもたない。

JIS B 7763

の規格群には,次に示す部編成がある。

JIS B 7763-1

  第 1 部:指先における測定方法

JIS B 7763-2

  第 2 部:指先における測定値の分析方法


日本工業規格

JIS

 B

7763-2

:2009

(ISO 13091-2

:2003

)

機械振動−

神経損傷の評価のための振動感覚いき(閾)値−

第 2 部:指先における測定値の分析方法

Mechanical vibration-Vibrotactile perception thresholds for the assessment

of nerve dysfunction-Part 2 : Analysis and interpretation of measurements

at the fingertips

序文

この規格は,2003 年に第 1 版として発行された ISO 13091-2 を基に,技術的内容及び対応国際規格の構

成を変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にない事項である。

1

適用範囲

この規格は,振動感覚いき(閾)値及びいき(閾)値変動の分析方法並びに手順について規定する。ま

た,統計学的に有意な振動感覚いき(閾)値の変化を記述する,推奨手順について規定する。

この規格は,JIS B 7763-1 に規定した指先で測定した振動感覚いき(閾)値に適用することができる。

なお,JIS B 7763-1 によって測定したいき(閾)値から求められる,健常者における振動感覚いき(閾)

値を

附属書 に示す。また,振動感覚いき(閾)値の変化の影響を,附属書 に示す。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 13091-2 : 2003

,Mechanical vibration−Vibrotactile perception thresholds for the assessment of

nerve dysfunction−Part 2 : Analysis and interpretation of measurements at the fingertips (IDT)

なお,対応の程度を表す記号 (IDT) は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,一致していることを示

す。

2

引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 0153

  機械振動・衝撃用語

注記  対応国際規格:ISO 2041,Vibration and shock−Vocabulary (MOD)

JIS B 7763-1

  機械振動−神経損傷の評価のための振動感覚いき(閾)値−第 1 部:指先における測定

方法

注記  対応国際規格:ISO 13091-1,Mechanical vibration−Vibrotactile perception thresholds for the

assessment of nerve dysfunction−Part 1 : Methods of measurement at the fingertips (MOD)


2

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

JIS Z 8131

  機械振動及び衝撃−人体暴露−用語

注記  対応国際規格:ISO 5805,Mechanical vibration and shock−Human exposure−Vocabulary (MOD)

3

用語,定義,略語及び量記号

3.1

用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0153 及び JIS Z 8131 によるほか,次による。

3.1.1

等価周波数 (equivalent frequency)

振動感覚の測定中,時間とともに周波数が変化する場合に,測定周波数を代表するものとして選択する

周波数(JIS B 7763-1

  3.1.4 参照)。

3.1.2

健常者 (healthy person)

必要と考えられる身体的検査及びその他の臨床的検査又は客観的検査の結果,医師が末しょう(梢)神

経障害の兆候又は症状が認められないと判断し,神経毒性因子又は振動に暴露されていない者。

3.1.3

集団群 (population group)

一つ又はそれ以上の共通の要因によって定義づけられた群。

例  共通の要因として地理,年齢,性別,食事又は職業を挙げることができる。

3.1.4

機械受容器 (mechanoreceptor)

例えば,振動などによる皮膚の機械的な変形を,神経インパルスに変換するように特化した神経終末(JIS 

B 7763-1

  3.1.8 参照)。

3.1.5

機械受容器固有の振動感覚いき(閾)値,受容器固有の振動感覚いき(閾)値 (mechanoreceptor-specific

vibrotactile perception threshold, receptor-specific vibrotactile perception threshold)

刺激点から一つの機械受容器群によって伝えられた,刺激に対する振動感覚いき(閾)値(JIS B 7763-1

3.1.9

参照)

3.1.6

振動感覚いき(閾)値  (VPT) (vibrotactile perception threshold)

純音性振動刺激の検知における心理測定で,50 %の反応率を得られる皮膚表面の加速度レベル(JIS B 

7763-1

  3.1.24 参照)。

3.1.7

振動感覚いき(閾)値の初期値  (baseline vibrotactile perception threshold)

結果を比較するのに使用する,最初の振動感覚いき(閾)値。

3.1.8

振動感覚いき(閾)値の基準値  (reference vibrotactile perception threshold)

健常者における,振動感覚いき(閾)値。

3.1.9

いき(閾)値移動 (threshold shift)

あらかじめ確定した振動感覚いき(閾)値の,初期値からの振動感覚いき(閾)値の時間的に持続性の


3

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

ある変化(JIS B 7763-1

  3.1.25 参照)。

3.1.10

基準いき(閾)値移動  (reference threshold shift)

同じ周波数又は等価周波数において記録された,対応する振動感覚いき(閾)値の基準値からの永続的

ないき(閾)値移動。

3.1.11

相対的いき(閾)値移動 (relative threshold shift)

同一の測定法によって,同じ人の同じ指について,同じ周波数又は等価周波数において以前に記録され

た,対応する値からの永続的ないき(閾)値移動。

3.1.12

心理物理学的アルゴリズム (psychophysical algorithm)

外部から与えられた皮膚の動きの存在又は特性を知覚するような,既定の感覚反応を誘発するために物

理的刺激を被験者に与える測定の手順(JIS B 7763-1

  3.1.20 参照)。

3.1.13

上昇・下降アルゴリズム (up-down algorithm)

それぞれ一定であるが,異なる強さの短時間の反復刺激を被験者に与えることによって,二つの限界い

き(閾)値(上昇と下降)を測定する,心理物理学的測定の手順(JIS B 7763-1

  3.1.27 参照)。

注記  この手順は,通常,被験者が刺激を検知したことを知らせるまで,強さが連続的に上昇する刺

激を加える[上昇法によるいき(閾)値]

。続いて,被験者がそれ以上刺激を感じられなくなる

まで連続的に刺激の強さを弱める[下降法によるいき(閾)値]

3.1.14

フォン・ベケシー・アルゴリズム  (von Békésy algorithm)

上昇法及び下降法によるいき(閾)値を順次決定するために,強さが連続的に変化する刺激を用いる心

理物理学的測定の手順。時間とともに周波数変化(グライディングトーン)を伴う場合もある(JIS B 7763-1

3.1.28

参照)

3.1.15

適中度 (predictive value)

人の何らかの特性及び機能についての客観的検査の結果による,疾病又は症状のリスクに関する予測。

3.1.16

陽性反応適中度 (positive predictive value)

客観的検査において陽性と判定され,疾病又は症状をもつことが正しく予測された集団群の割合(又は

パーセンテージ)

3.1.17

陰性反応適中度 (negative predictive value)

客観的検査において陰性と判定され,

疾病又は症状をもたないことが正しく予測された集団群の割合

(又

はパーセンテージ)

3.1.18

関連性 (association)

人が一つの特性又は性質とともに,第二の特性又は機能が観測される可能性に関する統計学的尺度。


4

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

3.1.19

心理測定関数 (psychometric function)

被験者によって刺激が検出されたことを示す,正の反応の比率又は百分率と刺激の大きさの物理量との

関係を表す関数(JIS B 7763-1

  3.1.19 参照)。

3.1.20

感受性の指標 (sensibility index)

ある周波数において測定したいき(閾)値と 150 dB の初期値との差を A,同年齢の健常者に対して測定

したいき(閾)値と 150 dB の初期値との差を B としたとき,A/B で定義する比の値をそれぞれ求めて,す

べての測定周波数又は等価周波数について合算した値。

注記 1  鋭敏性の減少に付随して振動感覚いき(閾)値が上昇した場合,感受性の指標が健常者の値

である 1 よりも小さくなる。

注記 2  感受性の指標は,次の式で示すことができる。

( )

( )

( )

( )

=



=

N

f

j

j

j

j

f

T

f

T

f

T

f

T

T

1

 j

base

healthy

base

obs

SEI

3.1.21

タクトグラム (tactogram)

周波数の関数として示したいき(閾)値移動の図による表示。

3.1.22

プローブ (probe)

運動の刺激及び振動の刺激を皮膚表面に伝える手段(JIS B 7763-1

  3.1.12 参照)。

3.1.23

周辺支持部 (surround)

指先が置く固定された堅く平たん(坦)な表面で,皮膚表面に接するプローブが通る穴をもち,これに

よって刺激部位の周辺を支持する部分(JIS B 7763-1

  3.1.13 参照)。

3.2

略語及び量記号

この規格で用いる略語は,次による。

FA I

タイプ I

機械受容器の速い応答特性

FA II

タイプ II  機械受容器の速い応答特性

SA I

タイプ I

機械受容器の遅い応答特性

VPT

振動感覚いき(閾)値

この規格で用いる量記号は,次による。

N

被験者の数

N

F

指の数

p

確率

s(f

j

)

周波数 f

j

における T(f

j

)

ref

のガウス分布パラメータ

T

SEI

感受性の指標

T(f

j

)

base

周波数 f

j

における振動感覚いき(閾)値の初期値

T(f

j

)

i

周波数 f

j

における 番目の振動感覚いき(閾)値

T(f

j

)

M

周波数 f

j

における振動感覚いき(閾)値の平均


5

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

T(f

j

)

obs

周波数 f

j

で測定した振動感覚いき(閾)値

T(f

j

)

ref

周波数 f

j

における振動感覚いき(閾)値の基準値

T(f

j

)

ref,M

周波数 f

j

における振動感覚いき(閾)値の基準値の平均

V

測定−再測定間の変動

Δ

T(f

j

)

ref

周波数 f

j

における基準いき(閾)値移動

Δ

T (f

j

)

ref, i

  周波数 f

j

における 番目の基準いき(閾)値移動

Δ

T (f

j

)

ref,M

  周波数 f

j

における基準いき(閾)値移動の平均

Δ

T (f

j

)

rel

周波数 f

j

における相対的いき(閾)値移動

Δ

T (f

j

)

rel,i

  周波数 f

j

における 番目の相対的いき(閾)値移動

Δ

T (f

j

)

rel, M

  周波数 f

j

における相対的いき(閾)値移動の平均

注記  大文字の記号 は,デシベル(10

6

 m/s

2

基準)で表したいき(閾)値を示す。等価いき(閾)

値をメートル毎秒毎秒で表す場合には小文字の記号 で示す。

ここに,

n

上昇法及び下降法によるいき(閾)値の対の番号

4

振動感覚いき(閾)値の取扱い

4.1

一般

JIS B 7763-1

の規定によって測定した振動感覚いき(閾)値の報告,分析方法に関して必要な情報は,

JIS B 7763-1

の箇条 による。通常,振動感覚いき(閾)値は,被験者一人について 1 回測定する。分析

を容易にするため,別の機会に測定を繰り返し行う予定のある場合(例えば,別の日)には,振動感覚い

き(閾)値の予想可能な変動を把握しておく必要がある。

この規格では,二つの状況を念頭に置く。被験者の振動感覚いき(閾)値が,同じ指先を使って,数日

の間に繰り返し測定した場合,測定値の平均値(デシベルで表示)に適用する測定−再測定間の変動は,

測定値から求められる標準偏差(デシベルで表示)とする。実施した測定から意味をもつ標準偏差を求め

ることが不可能である場合[例えば,被験者の振動感覚いき(閾)値が 1 回しか測定されない場合]には,

振動感覚いき(閾)値の測定−再測定間の変動は,測定に使用した方法に基づく推定値とする。この場合

は,健常者において同じ方法で繰り返し行われた測定に基づいて推定する。

4.2

繰返し測定での平均値

ある周波数又は等価周波数 f

j

において,JIS B 7763-1 の規定によって,指先で繰り返し振動感覚いき(閾)

値の測定を行った場合,振動感覚いき(閾)値の平均値は,測定した振動感覚いき(閾)値(デシベルで

表示,10

6

 m/s

2

基準)の平均として,式 (1) によって計算する。

( )

( )

1

1

M

=

=

n

i

i

j

j

f

T

n

f

T

 (1)

注記  式 (1) で測定したデシベルで表した振動感覚いき(閾)値(10

6

 m/s

2

基準)の測定値の算術平

均から求めた平均値は,メートル毎秒毎秒で表した振動感覚いき(閾)値の測定値の幾何平均

値と等価である。

4.3

いき(閾)値の測定−再測定間の変動

振動感覚いき(閾)値を一人の被験者の同じ指先で,別の機会(例えば,別の日など)に繰り返し測定

する場合は,個人内の測定−再測定間の変動を,その被験者について計算する。デシベルで表した測定−

再測定間の変動 は,繰返し測定で求めたデシベルで表した振動感覚いき(閾)値の平均値から標準偏差

として表す。ある刺激周波数又は等価周波数 f

j

において,繰返し測定で得られた振動感覚いき(閾)値 T(f

j

)

i


6

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

がデシベル(10

6

 m/s

2

基準)で表示される場合には,デシベルで表した測定−再測定間の変動 は式 (2) に

よって計算する。

( ) ( )

(

)

2

1

1

2

M

1

1

=

=

n

i

j

i

j

f

T

f

T

n

V

 (2)

ある被験者について意味をもつ標準偏差を算出することが不可能な場合[例えば,被験者の振動感覚い

き(閾)値について

1

回しか測定されない場合]には,観測された振動感覚いき(閾)値の測定−再測定

間の変動は,使用した測定方法に対して推定する。この場合,同じ測定方法を用いてある一人の健常者の

指先で測定した振動感覚いき(閾)値の標準偏差から推定する。その標準偏差は,少なくとも

10

回の別々

の機会(例えば,別々の

10

日間)に行った振動感覚いき(閾)値の測定に基づくものとする。この測定は,

JIS B 7763-1

の規定によって行われ,デシベルで表した標準偏差は,式

 (2)

を用い,デシベルで表した振

動感覚いき(閾)値の測定値から算出する。ある周波数又は等価周波数における,

3

人以上の健常者から

記録した標準偏差の算術平均を,その周波数又は等価周波数における,個人内の測定−再測定間の変動の

推定値として用いる。

女性の場合は,月経周期中,通常のホルモンの変化によって,

FA II

受容器で最大

20 dB

のいき(閾)値

の変化が起こる。女性の

FA II

のいき(閾)値に関する測定−再測定間の変動を推定する場合,すなわち,

100 Hz

125 Hz

及び

160 Hz

の測定周波数での振動感覚いき(閾)値については,月経周期によってこのよ

うな傾向を示すことを考慮しなければならない。そのいき(閾)値の変化は,排卵前後の数日間に生じる。

4.4

問題となる要因の取扱い

ある状況では,測定者が,いき(閾)値の測定中に解決できない問題となる要因が発生したと考えるか

もしれない。また,問題となる要因は,JIS B 7763-1 で説明しているように,異常のある皮膚面で測定を

行うことで発生することもある。このような状況では,その問題となる要因を説明する情報がある場合に

限って,この規格による方法及び手順を用いた振動感覚いき(閾)値の分析が可能となる。

より信頼性の高い振動感覚いき(閾)値を得ることができると考えられる場合には,JIS B 7763-1 の規

定によって

2

回目の測定を行う。

2

回目の測定で得られた振動感覚いき(閾)値の測定値を,この規格の

規定に従った分析を用いる。

注記

単一の測定部位で,二つ以上の周波数又は等価周波数について,同一の機械受容器群を介して

振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,問題となる要因の存在を確認するため,5.6 によっ

て算出したいき(閾)値移動との一致度を検証することで,問題となる要因の存在を確認して

もよい。

4.5

測定−再測定間の疑わしい変動の増加の取扱い

ある状況では,用いる測定方法に対して適用する測定−再測定間の変動が,ある被験者について適切で

はないと測定者が判断することがある。その判断は,JIS B 7763-1 の 6.3 による上昇法及び下降法でのいき

(閾)値の測定における一貫性の欠如,又はその他の情報に基づいてなされることもある。

このような状況では,その被験者における変動が確定されている場合に限り,この規格による方法及び

手順を用いた振動感覚いき(閾)値の分析が可能となる。個々の被験者における測定−再測定間の変動は,

その被験者で 4.3 による繰り返しいき(閾)値の測定を行うことで確定する。


7

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

5

いき(閾)値移動の算出

5.1

一般

いき(閾)値の測定値の初期値又は基準値からの変化を算出することによって,振動感覚いき(閾)値

の分析が容易になる。いき(閾)値移動は,各周波数又は等価周波数で箇条 によって振動感覚いき(閾)

値を求めた指先について算出する。

5.2

相対的いき(閾)値移動

相対的いき(閾)値移動は,デシベル(

10

6

 m/s

2

基準)で表した振動感覚いき(閾)値の二つの測定値

間の差として算出するか,又はメートル毎秒毎秒で表した振動感覚いき(閾)値の二つの測定値の比とし

て算出する。この場合,一方は振動感覚いき(閾)値の測定値であり,他方は振動感覚いき(閾)値の初

期値となる。その二つの振動感覚いき(閾)値は,一人の被験者について同じ指先で,同じ測定方法及び

同じ測定周波数又は等価周波数で求める。デシベルで表した

j

番目の周波数

f

j

における相対的いき(閾)

値移動

ΔT(f

j

)

rel

は,各測定周波数又は等価周波数において式

 (3)

によって算出する。

( )

( )

( )

base

obs

rel

Δ

j

j

j

f

T

f

T

f

T

=

 (3)

 (3)

と等価な,メートル毎秒毎秒で表したいき(閾)値からの相対的いき(閾)値移動の算出式は,

 (4)

によって算出する。

( )

( ) ( )

[

]

base

obs

10

rel

log

20

Δ

j

j

j

f

t

f

t

f

T

=

 (4)

注記

相対的いき(閾)値移動を算出することで,感覚の変化パターンによって個人差の識別が容易

になる。相対的いき(閾)値移動を算出することは,既知の病理学的過程又は回復過程の個々

について,長期間追跡するような場合に有益である。このような場合では,振動感覚いき(閾)

値の初期値は,通常,その被験者について最初に記録した振動感覚いき(閾)値である。

5.3

基準いき(閾)値移動

基準いき(閾)値移動は,デシベル(

10

6

m/s

2

基準)で表した振動感覚いき(閾)値の測定値とデシベ

ルで表した振動感覚いき(閾)値の基準値との差として算出するか,又は両者がメートル毎秒毎秒で表さ

れる場合はその二つの振動感覚いき(閾)値の比として算出する。デシベルで表した

j

番目の周波数

f

j

おける基準いき(閾)値移動

ΔT(f

j

)

ref

は,各測定周波数又は等価周波数において式

 (5)

によって算出する。

( )

( )

( )

ref

obs

ref

Δ

j

j

j

f

T

f

T

f

T

=

 (5)

 (5)

と等価な,メートル毎秒毎秒で表したいき(閾)値からのいき(閾)値移動の算出式は,式

 (6)

よって算出する。

( )

( ) ( )

[

]

ref

obs

10

ref

log

20

Δ

j

j

j

f

t

f

t

f

T

=

 (6)

注記

基準いき(閾)値移動を算出することで,機械受容器及び神経機能の変化として理解できる感

覚異常のパターンの識別が容易となる。基準いき(閾)値移動と症状の訴えとの間に関連があ

ることが認められるなら,基準いき(閾)値移動は,上肢の神経障害に関連することがある。

5.4

いき(閾)値移動の平均

ある刺激周波数又は等価周波数でいき(閾)値移動を,変化することが予期できない状況下で指先で繰

り返し測定するような場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準のいき(閾)値移動の算術平均値は,

デシベルで表したいき(閾)値移動から算出する。周波数

f

j

における,デシベルで表した相対的いき(閾)

値移動の平均は,式

 (7)

によって算出する。


8

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

( )

( )

=

=

n

i

i

j

j

f

T

n

f

T

1

rel,

M

rel,

Δ

1

Δ

 (7)

周波数

f

j

における,デシベルで表した基準いき(閾)値移動の平均は,式

 (8)

によって算出する。

( )

( )

=

=

n

i

i

j

j

f

T

n

f

T

1

ref,

M

ref,

Δ

1

Δ

 (8)

5.5

タクトグラム

タクトグラムは,

図 のように,横軸を周波数又は等価周波数の対数とし,縦軸をデシベルで表したい

き(閾)値移動として示す。いき(閾)値移動の範囲は,−

20 dB

60 dB

としてもよい。周波数は,機械

受容器群によって伝えられる周波数の範囲をとる。

注記 1

JIS B 7763-1

の規定によって測定した振動感覚いき(閾)値が,

SA I

FA I

FA II

機械受容器

群に関与する周波数の範囲は,JIS B 7763-1 

表 に示されている。

タクトグラムは,個々の指,手,被験者又は被験者の集団について作成してもよいが,該当する相対的

又は基準のいき(閾)値移動を縦軸に図示する。個々の指,手,被験者又は被験者の集団について,異な

る周波数又は等価周波数における該当する値を線で結んでもよい。

タクトグラムがある被験者の片方又は両方の手についてのものである場合,個々の指についてのいき

(閾)値移動は,異なる記号で識別する。右手の指のいき(閾)値移動は丸で,左手の指のいき(閾)値

移動は四角で表示するのが望ましい。

注記 2

指の番号は,次のとおり,それぞれの手に対応する記号内に番号を示すか又は記号の色を変

えることによって,容易に識別できるようにしてもよい。

1

  人指し指

2

  中指

3

  薬指

4

  小指

5

  親指


9

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

図 1−タクトグラム

注記

対応国際規格では,座標と目盛だけを表示した図となっているが,この規格では,理解を助け

るために

図 B.2 のデータも含めて表示した。

5.6

いき(閾)値移動の一致度

一つの測定点において,ある機械受容器群によって伝えられる複数の周波数又は等価周波数(JIS B 

7763-1

の規定による。

)で振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準

いき(閾)値移動の一致度を検査することができる。その一致度とは,一つの機械受容器群によって伝え

られる複数の周波数又は等価周波数(JIS B 7763-1 

表 参照)についての相対的いき(閾)値移動又は

基準いき(閾)値移動のデシベル値の差として表す。一つの機械受容器群でだけ,振動感覚いき(閾)値

の値が 6.5 による健常者の振動感覚いき(閾)値の期待値の範囲から外れるような場合には,一致度が低

下することもある。このような状況下では,この受容器群によって,通常,伝えられる幾つかの周波数に

おけるいき(閾)値が,健常者での期待値の範囲内において,別の振動感覚いき(閾)値の受容器群によ

って伝えられる可能性がある。

注記

JIS B 7763-1

の規定によって測定した,機械受容器別のいき(閾)値移動間での一致度を算出

することは,被験者の測定における問題となる要因を同定することを容易にする。問題となる

要因のない同一の受容器群を介するいき(閾)値移動は等しくなる。

5.7

機械受容器群のいき(閾)値移動の平均

一つの測定点において,ある機械受容器群によって伝えられる複数の周波数又は等価周波数(JIS B 

7763-1

の規定による。

)で振動感覚いき(閾)値を測定した場合には,相対的いき(閾)値移動又は基準

いき(閾)値移動を,機械受容器群のいき(閾)値移動の平均として表してもよい。機械受容器群のいき

(閾)値移動の平均は,振動感覚いき(閾)値が単一の機械受容器群によって伝えられるすべての周波数

又は等価周波数の相対的いき(閾)値移動,又は基準いき(閾)値移動のデシベル値を算術平均した値で

ある。適用可能な測定周波数は,JIS B 7763-1 

表 による。機械受容器群のいき(閾)値移動の平均は,

デシベルで表す。


10

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

機械受容器群における相対的いき(閾)値移動の平均

ΔT(f

j

)

rel,M

は,式

 (9)

によって算出する。

( )

( )

=

=

m

j

j

j

j

f

T

m

f

T

1

rel,

M

rel,

Δ

1

Δ

 (9)

ここで,同じ受容器群によって伝えられるいき(閾)値を,

m

個の周波数又は等価周波数について加算

する。

任意の機械受容器群における平均の基準いき(閾)値移動

ΔT(f

j

)

ref,M

は,式

 (10)

によって算出する。

( )

( )

=

=

m

j

j

j

j

f

T

m

f

T

1

ref,

M

ref,

Δ

1

Δ

 (10)

ここで,同じ受容器群によって伝えられるいき(閾)値を,個の周波数又は等価周波数についてを加

算する。

この手順は,振動感覚いき(閾)値の値がその測定点での一つの機械受容器群についてだけ 6.5 で定義

した健常者の振動感覚いき(閾)値の期待値の範囲を外れるような場合には,注意深く適用することが望

ましい。このような状況下では,この受容器群によって,通常,伝えられる幾つかの周波数におけるいき

(閾)値が,健常者での期待値の範囲内において,別の振動感覚いき(閾)値の受容器群によって伝えら

れる可能性がある。

注記  機械受容器別に平均いき(閾)値移動を求めることで,機械受容器のわずかな変化,すなわち

感覚の鋭敏さのわずかな変化の識別が容易になる。

6

振動感覚いき(閾)値及び  いき(閾)値移動の分析方法

6.1

一般

指先での振動感覚いき(閾)値及びいき(閾)値移動の値は,検査対象とした上肢における指,手及び

腕における末しょう(梢)感覚神経機能に関する情報を提供する。いき(閾)値変化の大きさは,6.26.5

に示す一つ又は複数の方法のどれかで報告してもよい。

6.2

振動感覚いき(閾)値の測定誤差及び統計学的有意性

指先における振動感覚いき(閾)値が JIS B 7763-1 の規定によって繰り返し測定する場合,デシベルで

表した振動感覚いき(閾)値の平均に適用する測定誤差は,デシベルで表した振動感覚いき(閾)値の測

定値から式 (2) によって算出した標準偏差である。

意味をもつ標準偏差を算出することが困難である場合[例えば,指先における振動感覚いき(閾)値が

1 回だけしか測定されない場合など]では,振動感覚いき(閾)値の測定値に適用できると仮定する測定

誤差は,

4.3

による測定方法で推測できる測定−再測定間の変動とする。

これは,

測定した振動感覚いき

(閾)

値に適用できる標準偏差としてデシベルで表され,統計解析に使用することが望ましい。

6.3

相対的いき(閾)値移動の測定誤差及び統計学的有意性

指先における相対的いき(閾)値移動を繰り返し測定する場合,相対的いき(閾)値移動の平均に適用

する測定誤差は,デシベルで表した相対的いき(閾)値移動の測定値から計算できる,デシベル表示の標

準偏差である。

指先における相対的いき(閾)値移動が 1 回,すなわち二つの振動感覚いき(閾)値からだけしか得ら

れない場合,測定した相対的いき(閾)値移動に適用する測定誤差は,4.3 による測定方法で推測できる測

定−再測定間の変動の 1.414 倍とする。これは,測定した相対的いき(閾)値移動に適用できる標準偏差

としてデシベルで表され,統計解析に使用することが望ましい。


11

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

6.4

健常者における振動感覚いき(閾)値

ある者の指先で測定した振動感覚いき(閾)値を,健常者で構成する対照集団群と比較することがしば

しば必要となる。30 歳の健常者のデシベル(10

6

 m/s

2

基準)で表した振動感覚いき(閾)値及びメートル

毎秒毎秒で表した値を,

附属書 に示す。それらの値は,JIS B 7763-1 に規定したそれぞれの刺激周波数

又は等価周波数について,その集団の 2.5,15,50(平均値)

,85 及び 97.5 パーセンタイル値を表している。

いき(閾)値は,デシベルで表した場合,ガウス分布に近似できる。

附属書 の値は,JIS B 7763-1 によって測定した振動感覚いき(閾)値の分析を用いてもよい。50 パー

センタイル値は,式 (5) の T(f

j

)

ref

及び式 (6) の t(f

j

)

ref

のように,基準いき(閾)値移動の算出及び分析に

おけるいき(閾)値の基準値として用いる。

注記 1  健常者における振動感覚いき(閾)値の平均は,SA I 受容器で伝えられる周波数では 0.03 dB/

歳,FA I 受容器で伝えられる周波数では 0.08 dB/歳,FA II 受容器で伝えられる周波数では 0.25

dB/歳∼0.35 dB/歳の割合で,加齢にともなって上昇する。

注記 2  疫学的研究においては,対照集団群の振動感覚いき(閾)値は対照群から得てもよい。

6.5

健常者の振動感覚いき(閾)値からの偏差

健常者の振動感覚いき(閾)値及び基準いき(閾)値移動からの偏差は,健常者における平均からの偏

差の可能性として評価する。振動感覚いき(閾)値の測定値に関する測定誤差は,6.2 によって決定する。

健常者における,振動感覚いき(閾)値の基準値の平均に関する測定誤差は存在しない。

附属書 で示す,健常者のいき(閾)値の 2.5 パーセンタイル値及び 97.5 パーセンタイル値は,JIS B 7763-1

による測定法を用いて被験者から得た期待値の上限及び下限として用いてもよい。振動感覚いき(閾)値

の測定値が,健常者の 2.5 パーセンタイルが示す値未満,又は 97.5 パーセンタイルが示す値を超える場合

は,期待値の範囲外と考えるのが望ましい。同様に,測定した基準いき(閾)値移動が,健常者が示す基

準いき(閾)値移動の 2.5 パーセンタイル又は 97.5 パーセンタイルの範囲外である場合には,期待値の範

囲外と考えるのが望ましい。

注記  被験者個人について,健常者における平均値又は基準いき(閾)値移動からのいき(閾)値の

偏差の可能性は,必ずしも,末しょう(梢)感覚神経障害に関連すると考えられる症状若しく

は障害又は疾患についての陽性反応適中度,又は陰性反応適中度に一致する必要はない。

6.6

振動感覚いき(閾)値の変化による生理学的及び臨床的な影響

いき(閾)値移動にかかわる生理学的,機能的及び臨床的な影響を,

附属書 に示す。

振動感覚を,全身性であろうと局所性であろうと,疾病,神経毒性的因子,化学的因子及び物理学的因

子への暴露によって引き起こされる,末しょう(梢)神経障害の検出のための客観的検査として用いても

よい。振動感覚いき(閾)値を幾つかの刺激周波数又は等価周波数で測定する場合,感受性の指標を算出

し,タクトグラムを作成することは,測定結果の分析に効果的である。

相対的いき(閾)値移動を繰り返し測定することは,病理学的過程又は回復過程を長期間追跡する場合

に有用である。

振動感覚いき(閾)値及び基準いき(閾)値移動の変化は,感覚機能のある側面に影響を与えることも

あり,潜在疾病を反映してもよい。異なる周波数又は等価周波数において記録された基準いき(閾)値移

動は,タクトグラムとして図示した場合に特有のパターンを示すことが分かっている。例を,

附属書 

示す。


12

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

附属書 A

規定)

健常者における振動感覚いき(閾)値

A.1

健常者における振動感覚いき(閾)値

健常者における振動感覚いき(閾)値に関する幾つかの研究では,基本的に JIS B 7763-1 の規定に基づ

いた検査方法を用いてきた。それらの方法を

表 A.1 に示す。すべての研究がこの規格の発行以前のもので

あり,

表 A.1 の注に示すように,JIS B 7763-1 の要求事項から若干離れている部分もある。

いき(閾)値の出典は,

表 A.1 の左側の列による。報告されたプローブの直径及びプローブの周辺支持

部の直径を,第 2 列及び第 3 列に示す。参考文献 [25] の研究では,直接,皮膚の凹みを測定及び制御し

ている。他の研究の静的な皮膚の凹みは,プローブの接触力及び必要に応じてプローブと周辺支持部の接

触力から推定している(第 4 列)

表 A.1 の皮膚刺激装置の接触力を制御するすべての研究では,周辺支持

部が使われた場合には,皮膚の周辺支持部の接触力も制御している。振動感覚いき(閾)値を記録した被

験者の性別(男性,女性)

,人数及び平均年齢とともに,心理物理学的アルゴリズムの類型についても

A.1

に示す。

振動感覚いき(閾)値を得たヒト集団群について,簡単な説明も記載している。医学的スクリーニング

を実施した場合,被験者の兆候,症状及び末しょう(梢)神経障害の病歴又は神経毒性要因若しくは手腕

振動への暴露歴についても記載している。すべての研究において,報告されている振動感覚いき(閾)値

は,健常者についてのものである。

健常な男性及び女性の振動感覚いき(閾)値として,JIS B 7763-1 によって決定した,いき(閾)値の

デシベルで表した値(10

6

 m/s

2

基準)を

表 A.2,メートル毎秒毎秒で表した値を表 A.3 に示す。振動感覚

いき(閾)値は,JIS B 7763-1 

表 で規定する,各刺激周波数又は等価周波数における集団群の 2.5,15,

50(平均値),85 及び 97.5 パーセンタイル値で表す。デシベルで表したいき(閾)値は,ガウス分布で近

似される。平均値以外のパーセンタイルにおけるいき(閾)値は,ある周波数又は等価周波数時 f

j

のデシ

ベル(10

6

 m/s

2

基準)で表した振動感覚いき(閾)値から式 (A.1) によって推定してもよい。

( )

[

]

( )

( )

( )

( )

⎥⎦

⎢⎣

⎥⎦

⎢⎣

=

j

f

s

j

f

T

j

f

T

j

j

f

s

f

T

p

2

2

2

M

ref,

ref

ref

e

1

 (A.1)

ここに,振動感覚いき(閾)値の基準値の平均 T(f

j

)

ref,M

,及び s(f

j

)  は,それぞれ,表 A.2 及び表 A.4 

示す値である。

表 A.2 の振動感覚いき(閾)値は,表 A.1 に記載のデータセットから構成され重み付けされた値であり,

平均年齢 30 歳に調整されている。いき(閾)値の計算に使用された指の総数 N

F

を,刺激周波数又は等価

周波数ごとに示す。

各データセットの重み付けは,

刺激周波数又は等価周波数における指の数で決まるが,

検討中である。正中神経と尺骨神経に介在するいき(閾)値に有意な差がなければ,振動感覚いき(閾)

値は,中指及び薬指(5.5 

注記 を参照)並びに親指で得られたいき(閾)値から求めている。

注記  JIS B 7763-1 に記載している測定方法を交互に使うと,振動感覚いき(閾)値の値にわずかな

違いが生じる可能性がある。

表 A.1 の各研究における,平均振動感覚いき(閾)値と表 A.2 

50 パーセンタイル値との間に残る説明不能な相違は,通常,2 dB 未満である。幾つかの研究で


13

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

は,振動感覚いき(閾)値の上昇(すなわち機能の低下)が尺骨神経支配の指で観察されてい

る。

月経周期における通常のホルモンの変化は,女性の振動感覚いき(閾)値に影響を与えるが,特に FA II

受容器を介する周波数(すなわち 100 Hz,125 Hz,及び 160 Hz)で影響が大きい。これによって,

表 A.4

において男性の s(f

j

)  と比較して女性の s(f

j

)  の方が大きい値であることを説明できる。

健常者の振動感覚いき(閾)値の平均は,年齢とともに上昇するが,その程度は,SA I 受容器を介する

周波数で 1 年につき約 0.03 dB,FA I 受容器を介する周波数で 1 年につき 0.08 dB,FA II 受容器を介する周

波数で 1 年につき 0.25 dB∼0.35 dB となる。FA II 受容器を介するいき(閾)値の加齢による影響は,100 Hz

で測定した振動感覚いき(閾)値の平均の方が,160 Hz の場合より年齢による上昇傾向が少なく測定周波

数に依存するようである。30 歳以外の年齢における健常者の振動感覚いき(閾)値の平均を,このデータ

から推定してもよい。一人一人の年齢によるいき(閾)値の変化は,健常者の振動感覚いき(閾)値の平

均から有意に逸脱する恐れがあるため,このデータから推定すべきではない。

表 A.2 及び表 A.3 の 50 パーセンタイル値は,基準いき(閾)値移動の計算及び分析のためのいき(閾)

値の基準値として用いる。したがって,式 (5) の T(f

j

)

ref

の値及び式 (6) の t(f

j

)

ref

の値は,それぞれ

表 A.2

及び

表 A.3 の 50 パーセンタイル値として示されている。


14

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

表 A.1JIS B 7763-1 に準じた方法を用いて求めた健常者の振動感覚いき(閾)値の文献出典

対象者

出典

プローブの直径

mm

周辺支持部

mm

皮膚の凹み

mm

アルゴリズム

性別

被験者数

平均年齢

対象集団に関する記述

参考文献 [4]

a)

6 10

2.8

b)

ベケシー法

男 10 30.1

手作業者,医学的に選別

参考文献 [4]

a)

6 10

2.8

b)

ベケシー法

女 15 32.3

手作業者,医学的に選別

参考文献 [5]

3

なし 0.9

b)

上下法

男 38 40.8

カフカス人,アジア人の職業人,手作業者,
医学的に選別

参考文献 [24]

6

10

2.8

b)

ベケシー法

男 29 36

手作業者

参考文献 [25]

6

なし 1.0

ベケシー法

c)

男,女 11

約 25

学生及び職業人

参考文献 [29]

6

10

2.8

b)

ベケシー法

男 9

28.8

職業人

参考文献 [36]

6

10

2.8

b)

ベケシー法

d)

男 165  40

職業人及び手作業者,医学的に選別

参考文献 [36]

6

10

2.8

b)

ベケシー法

d)

女 126  40

職業人及び手作業者,医学的に選別

a)

  振動感覚いき(閾)値は,上昇及び下降法による測定値の直線関係から計算された。この場合,1.5 dB の見かけ上の振動感覚いき(閾)値バイアスを生じる

(参考文献 [36] 参照)

b)

  皮膚の圧入量は,接触力から推定した(参考文献 [23] 及び [33] 参照)。

c)

  毎秒 3 dB を超える刺激振幅の時間変化率を,50 Hz 以上の周波数で用いた。その条件下では,振動感覚いき(閾)値の誤差[通常は見かけ上の振動感覚いき

(閾)値の上昇]が生じるおそれがある。

d)

  毎秒 3 dB を超える刺激振幅の時間変化率を用いた。その条件下では,振動感覚いき(閾)値の誤差[通常は見かけ上の振動感覚いき(閾)値の上昇]が生

じるおそれがある。

14

B 7763-2


2009

 (IS

O

 13091-

2


2003)

14

B 7763-2


2009

 IS
O

 13091-2


2003


15

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

表 A.2−デシベル値で表した健常者の振動感覚いき(閾)値(10

6

 m/s

2

基準)

周波数

Hz

年齢

3.15 4  5  20  25 31.5 100 125 160

2.5 パーセンタイル  30 63.8 67.0 71.3 82.0 84.8 89.0 97.7 94.0 97.3 
15 パーセンタイル  30 69.0 72.0 76.0 86.8 89.5  94.3 102.8 100.5 102.3 
50 パーセンタイル  30 75.0 77.5 81.5 92.3 95.0 100.3 108.5 107.8 108.0 
85 パーセンタイル  30 81.0 83.0 87.0 97.8 100.5 106.3 114.3 115.0 113.8 
97.5 パーセンタイル  30  86.3  88.0  91.8 102.5 105.3 111.5 119.3 121.5 118.8


推定に用いた指の数 N

F

  11 110 110 159  11 382 110 283 110

2.5 パーセンタイル 30       80.8   88.3   92.3   
15 パーセンタイル 30       87.3   94.8   100.8   
50 パーセンタイル 30      94.8

101.8

110.0

85 パーセンタイル  30

 102.3   108.8   119.3

97.5 パーセンタイル

30

109.0

115.3

127.5

推定に用いた指の数 N

F

60

186

186

表 A.3m/s

2

で表した健常者の振動感覚いき(閾)値

周波数

Hz

年齢

3.15 4  5  20  25 31.5 100 125 160

2.5 パーセンタイル

30

0.001 5

0.002 2

0.003 7

0.013 0.017 0.028 0.077 0.050 0.073

15 パーセンタイル

30

0.002 8

0.004 0

0.006 3

0.022 0.030 0.052 0.14  0.11  0.13

50 パーセンタイル

30

0.005 6

0.007 5

0.012

0.041 0.056 0.10  0.27  0.25  0.25

85 パーセンタイル 30

0.011

0.014

0.022

0.078

0.11 0.21 0.52 0.56 0.49

97.5 パーセンタイル  30 0.021 0.025 0.039 0.13  0.18 0.38 0.92 1.19 0.87


推定に用いた指の数 N

F

  11  110 110 159  11  382 110 283 110

2.5 パーセンタイル

30

 0.011

 0.026

 0.041

15 パーセンタイル

30

 0.023

 0.055

 0.11

50 パーセンタイル

30

 0.055

 0.12

 0.32

85 パーセンタイル

30

 0.13

 0.28

 0.92

97.5 パーセンタイル

30

 0.28

 0.58

 2.37

推定に用いた指の数 N

F

       60   186  186

15

B 7763-2


2009

 IS
O

 13091-2


2003

15

B 7763-2


2009

 (IS

O

 13091-

2


2003)


16

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

表 A.4−デシベルで表した式  (A.1)  における s(f

j

)  値

周波数

Hz

年齢

3.15 4  5  20  25 31.5 100 125 160

s(f

j

) 30

5.75

5.35

5.25

5.25

5.25

5.75

5.5 7.0 5.5


推定に用いた指の数 N

F

  11 110 110 159  11 382 110 283 110

s(f

j

)

30      7.2  6.85

 9.0


推定に用いた指の数 N

F

60

186

186

16

B 7763-2


2009

 (IS

O

 13091-

2


2003)

16

B 7763-2


2009

 IS
O

 13091-2


2003


17

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

附属書 B

参考)

振動感覚いき(閾)値の変化の影響

B.1

臨床医学における使用

神経学的診断の補助として振動感覚を測定することへの関心については,これまで 100 年以上にわたり

報告されてきている。初期の研究には,糖尿病,末しょう(梢)神経炎及び悪性貧血では振動感覚の低下

[すなわち振動感覚いき(閾)値の上昇]が生じ,パーキンソン病の患者では過敏性[すなわち,振動感

覚いき(閾)値の低下]が生じるという報告がある。最近,振動感覚は,疾患及び化学的又は物理的要因

への暴露によって引き起こされる,一般的な又は特定された種々の末しょう(梢)神経障害を発見するた

めの技術として提案されている。この技術は,手根管症候群,とう(橈)骨管症候群,反復運動過多によ

る損傷,尺骨神経障害,多発神経障害及び手腕振動の基礎疾患を含む,様々な範囲の症状に適用されてき

た。振動感覚いき(閾)値を幾つかの刺激周波数又は等価周波数で測定する場合,感受性の指標を計算す

ること又はタクトグラム[いき(閾)値移動の図]を描くことが,測定結果の分析に効果的であることが

明らかになっている。

相対的いき(閾)値移動の繰返し測定は,同一装置及び同一測定プロトコルを用いて実施するならば,

既知の病理学的プロセスを長期間にわたり追跡する状況において,

有用であることも明らかになっている。

この方法であれば,装置による系統誤差を避けることができ,検査の有用性は最終的に被験者内の測定−

再測定の変動に依存する。糖尿病患者,腎臓の透析患者,化学療法を受けているがん患者,並びに化学的

神経毒性要因及び物理的神経毒性要因にさらされる労働者の疾患の重症度を測る尺度として,相対的いき

(閾)値移動の利用が報告されている。また,相対的いき(閾)値移動は,神経の修復及び手の機能の回

復状況を観察することにも用いられてきた。

臨床医学における客観的検査法としての振動感覚いき(閾)値の使用も有効とされている。これまでに,

振動感覚いき(閾)値及び末しょう(梢)神経機能障害を評価するための他の検査法との関連性,特に神

経伝導と他の一連の定量的な知覚検査との関連性についての報告がなされてきた。これらの報告について

は,次のような考察がされている。

振動感覚いき(閾)値を決定するための標準化された方法がなく,健康な手の標準的な値についての測

定数に限界のあることが,過去において,実際の臨床でその技術が広く採用されることを妨げてきた。こ

れらの制約は,この規格で規定している。刺激周波数又は等価周波数で,機械受容器群の一つだけで介さ

れる振動感覚いき(閾)値が得られる測定法の標準化は,以前に,一般的に利用できた情報よりも多くの

感覚神経機能に関する情報を提供する。また,この追加情報の意味は,この附属書でも考察する。

B.2

感覚生理機能といき(閾)値移動

手の感覚能は,指せん(尖)部に局在する最大で 4 群の分化した神経終末における神経活動に依存する。

通常,異なる機械受容器群は,皮膚の圧入への反応と受容野の範囲によって分類される。受容器群のうち

三つの群の振動感覚いき(閾)値は,JIS B 7763-1 の方法によって測定することができる。第 4 の受容器

群は,その測定方法は JIS B 7763-1 で規定していないが,皮膚の伸展時に信号を送る受容器群である。

振動感覚いき(閾)値を得ることのできる指せん(尖)部の三つの機械受容器群は,次の三つである。

解剖学的にはメルケルの触盤が該当する,遅い応答特性のタイプ I 受容器 (SA I)。解剖学的にはマイスナ


18

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

ー小体が該当する,速い応答特性のタイプ I 受容器 (FA I)。これは,解剖学的にはパチニ小体が該当する,

速い応答特性のタイプ II 受容器 (FA II)。SA I 受容器の機能は,例えば,突起及び質感のような表面の空間

的な特徴の分解能を決定する。一方,FA I 及び FA II 受容器の機能は,主として皮膚表面を横切るような

動きから得られる情報を担う。感覚の認識に加え,指せん(尖)と親指の間で物体をつかむことはその物

体の微細なずれの検出に依存し,主に FAI 受容器がその信号伝達を行う。また,そのような感覚による制

御は,神経筋機能によるものよりも効果的である。

したがって,SA I,FA I 及び FA II 受容器の振動感覚いき(閾)値の変化は,感覚機能及び物をつかんだ

り,巧みに扱ったりする機能に影響を及ぼすことがある。臨床において,これらの振動感覚いき(閾)値

の変化は潜在的な疾患を反映する可能性がある。異なる周波数において指せん(尖)で記録されたいき(閾)

値移動は,独特のパターンをもつことが分かっている。そのパターンは,

図 B.1(異なる被験者から)の 2

本の指で示すように,タクトグラムとしていき(閾)値移動を描くことによって,極めて容易に識別する

ことができる。各症例における基準いき(閾)値移動を示す。

図 B.1−チェンソー取扱い者 名の指の基準いき(閾)値移動のパターンを示したタクトグラム

これらの例が示すように,同じような大きさのいき(閾)値移動は,通常,同じ機械受容器群(例えば,

20 Hz 及び 31.5 Hz における。)によって介された周波数で観察される。幾つかの指では,いき(閾)値移

動は

図 B.1 の例において黒塗り四角(■)によって示すように,すべての受容器群で類似した大きさとな

ることが分かる。しかしながら,いき(閾)値移動は,同じ指せん(尖)の中でも異なる受容器群間で相

違する可能性がある。

図 B.1 の黒塗り丸(●)で示したいき(閾)値移動は,SA I 及び FA I 受容器群では

同じような大きさであるが,FA II 受容器ではより大きな値がみられる。この指における FA II 群とその他

の受容器群の間のいき(閾)値移動の違いは,統計学的に有意である。

いき(閾)値移動のパターンは,感覚神経機能又は神経損傷の変化の質についての情報を提供し,神経


19

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

全体の変化(

図 B.1 の黒塗り四角),又は一つ若しくは二つの受容器群だけが関与している変化のどちらか

が起こっていることを示さ(唆)する。後者は,選択的な遠位の神経線維又は受容器の関与による可能性

がある。

B.3

振動感覚いき(閾)値,通常の臨床検査及び神経伝導検査の間の関連性

これまでに,異なる臨床検査の有効性を評価するための,上肢障害を訴える人を対象とした幾つかの研

究がある。振動感覚及び神経伝導検査の両方を用いた研究では,神経学的な症状は電動工具を使用する造

船所従業員の 98 %から報告された。この集団群では,120 Hz における振動感覚いき(閾)値は,ある産業

集団の健康な手作業労働者の群と比較して一様に高く,また,神経伝導検査を含めた臨床検査で一貫して

最も異常を示した。

他の研究では,診断評価に無関係に参加した患者らにおいて,両手の人差し指と親指で測定した振動感

覚いき(閾)値(5.5 

注記 参照)と,振動感覚[音さ(叉)による。],痛覚(針による。)を含む手と

腕の神経学的検査の結果,固有受容感覚(関節位置覚)及び神経伝導検査を含む,従来用いられている一

連の検査との間に関連性が認められた。

同じ指における振動感覚いき(閾)値と音さ

(叉)のデータの間で,最も強い関連性がみられた  (p<0.001)。

同様に,振動感覚いき(閾)値と固有受容感覚との間にも統計学的に有意な関連がみられ  (p<0.01),更に,

振動感覚いき(閾)値と痛覚との間に弱い関連性が認められた  (p<0.05)。同様の関連性は,同一の指にお

ける振動感覚いき(閾)値と感覚神経複合活動電位及び伝導速度との間でも観察された  (p<0.05)。その関

連性は,正中及び尺骨神経支配の指では同じ大きさであった。

手根管症候群の補助診断としての振動感覚いき(閾)値の使用については,矛盾した結果となった。少

なくとも,理由の一部は,振動感覚いき(閾)値の測定に用いた装置の性能の限界である。その装置は,

JIS B 7763-1

の要求をまったく満たしていなかった。補助診断として振動感覚いき(閾)値を他の目的で

用いた場合に同じく観察されるように,一般的に,それらの関連性は用いた基準値,対象疾患に用いられ

た診断基準に大きく依存する。

一つのテストが,他の検査で発見できなかった生理学的又は病理学的な変化を発見することがあるよう

に,対象群における振動感覚いき(閾)値と他の検査法の結果との間に関係性がないことが明らかとなる

ことは,必ずしも憂慮すべきことではない。

図 B.2 に,神経伝導検査が正常で非特異性の手機能障害をも

つ症例のタクトグラムを示す。この 42 歳の元造船の研磨工は,手関節痛とコンピュータ制御パックの動き

の調整が困難で,両手の SA I 及び FA I 受容器において統計学的に有意な基準いき(閾)値移動がみられ

たが,FA II 受容器ではみられなかった。この被験者は,神経伝導検査では神経学的に正常と評価された。

さらに,いき(閾)値移動は各々の手の薬指と親指で極めて類似しており,同じパターンが両方の手にお

いて観察された。

B.4

いき(閾)値移動と手機能との関連性

振動感覚いき(閾)値の測定は,脳への感覚情報の体性感覚路による伝達に対する評価の定量的方法と

なる。機能的な観点から,求心性神経の出力は,物の感覚の識別,又は感覚運動神経ループの一部として,

物の取扱いの巧ち(緻)性及び制御にとって必要不可欠である。

手作業労働者群に対して実施した質問紙への回答から,指せん(尖)の振動感覚いき(閾)値と巧ち(緻)

性の低下との間に関連性が認められた。

この研究では,

機械受容器別の振動感覚いき(閾)

値は,

JIS B 7763-1

による方法を用いて,指の SA I,FA I 及び FA II 受容器に対して測定している。指と手のしびれ及び衣類


20

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

のボタンをかけるのが難しいという質問に関して肯定的な回答をした人々における SA I 及び FA II 受容器

群の両方又はいずれかにおいて,統計学的に有意な基準いき(閾)値移動が認められた。観察された基準

いき(閾)値移動についての最もよい予測因子は,小さな物の取扱い及びボタンかけの困難さに関しての

質問で,その陽性反応適中度は 90 %∼100 %,陰性反応適中度は 0 %∼2.8 %であった。

また,知覚の機能が低下した患者の機能低下の進展を予防するための,あるいは機能の改善した患者の

神経の修復及び回復についての経過観察のための,相対的いき(閾)値移動及び基準いき(閾)値移動に

よる早期発見の可能性も研究されてきた。手作業労働者(軽量のチェンソーを扱う)の同僚の追跡研究が

行われ,研究開始時点では 30 %の者に感覚神経及び神経筋機能の変化を示さ(唆)する症状が報告されて

いた。振動感覚いき(閾)値は,把握機能のテスト,握力及び腕の筋力,並びに 5 年間にわたる健康診断

の実施結果から確認された症状と比較された。統計学的に有意な基準いき(閾)値移動は,最初の検査に

おいて対象群の手の 3 %,5 年後には 14 %に認められた。5 年間にわたって多くの労働者に症状がないま

まであったにもかかわらず,観察した手の大多数に統計学的に有意ないき(閾)値移動がみられた  (p

0.025)。

図 B.2−造船所労働者の左手の基準いき(閾)値移動を示したタクトグラム

B.5

急性のいき(閾)値移動及び手機能における一過性の変化

場合によっては,急性,すなわち一時的に基準いき(閾)値移動又は相対的いき(閾)値移動が観測さ

れる可能性がある(例えば,手への振動暴露で感覚消失が誘発される。

。手への振動暴露によって手腕の

位置の生体力学的制御が阻害されるという実験室内実験に関する証拠があり,それは物を扱ったりつかん

だりする能力が一時的に阻害されることを意味する。また,手の動きの精度が影響を受けるという知見も

ある。

手持ち電動工具取扱い者の場合には,一時的な相対的いき(閾)値移動,振動暴露の大きさ及び手腕振


21

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

動症候群の神経学的症状の重症度との間に関連性がみられる。振動感覚いき(閾)値の急性変化は,作業

日を通じて仕事への能力発揮を阻害したり,手持ち振動工具の制御ができなくなることによってけがを負

う危険性が増える可能性がある。しかしながら,手への振動暴露と手機能の低下の程度との関係性を検討

した実験室での実験では,この仮説を支持する結果は得られなかった。このような実験によって詳細な分

析を行うためには,暴露によって影響を受けた受容器群と,生じたいき(閾)値移動の大きさを考慮する

必要がある。


22

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

参考文献

[1]

AHREND K.-D. Validierung der Pallästhesiometrie als Screening-Methode zur Diagnostik der beruflichen

Schwingungsbeanspruchung. Teilprojekt : Ermittlung von Normalwerten. Verbundprojekt BMFT 01

HK071/1, Pallästhesiometrie, Abschlussbericht, Mainz, 1994

[2]

BEAUMONT D., NOEUVEGLISE M. and VIABERT M.-L. Practicability of digital tactilometry in

construction industry occupational medicine. In : Dupuis H., Christ E., Sandover J., Taylor W. and Okada A.

(eds.) Proc. 6th Int. Conf. on Hand-Arm Vibration, HVBG (Bonn, Germany), 1992, pp. 835-844

[3]

BLAKE D.T., HSIAO S.S. and JOHNSON K.O. Neural coding mechanisms in tactile pattern recognition :

The relative contributions of slowly and rapidly adapting mechanoreceptors to perceived roughness. J.

Neuroscience, 17, 1997, pp. 7480-7489

[4]

BOVENZI M., APOSTOLI P., GRAZIA A. and VANONI O. Changes over a workshift in pallesthesiometric

and vibrotactile perception thresholds of workers exposed to intermittent vibration from impact wrenches.

Occup. Environ. Med., 54, 1997, pp. 577-587

[5]

BRAMMER A.J., PIERCY J.E., NOHARA S., NAKAMURA H. and AUGER P.L. Age-related changes in

mechanoreceptor-specific vibrotactile thresholds for normal hands. J. Acoust. Soc. Am., 93, 1993, p.2361

[6]

BRAMMER A.J., PIERCY J.E., NOHARA S., NAKAMURA H. and AUGER P.L. Mechanoreceptor-specific

vibrotactile thresholds : Inter- and intra-subject differences. In : Dupuis H., Christ E., Sandover J., Taylor W.

and Okada A. (eds.). Proc. 6th Int. Conf. on Hand-Arm Vibration, HVBG (Bonn, Germany), 1992, pp.

245-251

[7]

BRAMMER A.J., PIERCY J.E., NOHARA S., NAKAMURA H., AUGER P.L., HAINES A.T., LAWRENCE

M., BRUBAKER R.L.and VAN NETTEN C. Vibrotactile thresholds in operators of vibrating hand-held tools.

In : Okada A., Taylor W., Dupuis H. (eds.). Proc. 5th Int. Conf. on Hand-Arm Vibration, Kyoei Press

(Kanazawa, Japan), 1990, pp. 221-223

[8]

BRAMMER A.J., SUTINEN P., KOSKIMIES K., PYYKKÖ I. and STARCK J. Early detection of

deterioration in tactile acuity : II : A prospective study of forest workers (in preparation)

[9]

CHERNIACK M.G., LETZ C., GERR F., BRAMMER A.J. and PACE P. Detailed clinical assessment of

neurologic function in symptomatic shipyard workers. J. Indust. Med., 47, 1990, pp. 566-572

[10]  CHERNIACK M.G., MOALLI D. and VISCOLI C. A comparison of traditional electrodiagnostic studies,

electroneurometry and vibrometry in the diagnosis of carpal tunnel syndrome. J. Hand Surg., 21 A, 1996, pp.

122-131

[11]  CHERNIACK M.G., PETERSON D. and BRAMMER A.J. Vibrotactile perception thresholds in chronic hand

dysfunction (in preparation)

[12]  COUTU-WAKULCZYK G., BRAMMER A.J. and PIERCY J.E. Association between a quantitative measure

of tactile acuity and hand symptoms reported by operators of power tools. J. Hand Surg., 22A, 1997, pp.

148-154

[13]  DAGALAKIS N.G., MUEHLHOUSE C., WAKAMIYA S. and YANG J.C.S. Loss of control biomechanics of

the human arm-elbow system. J. Biomechanics, 20, 1987, pp. 385-396

[14]  DELLON A.L. Somatosensory testing and rehabilitation. American Occupational Therapy Association,


23

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

Bethesda MD, 1997

[15]  FRASER C.G. and HARRIS E.K. Generation and application of data on biological variation in clinical

chemistry. Critical Reviews in Clinical Lab. Sci., 27, 1989, pp. 409-437

[16]  GERR F., LETZ R., HERSHMAN D., FARRAYE J. and SIMPSON D. Comparison of vibrotactile thresholds

with physical examination and electrophysiological assessment. Muscle and Nerve, 14, 1991 , pp. 1059-1066

[17]  GESCHEIDER G.A., VERRILLO R.T., McCANN J.T. and ALDRICH E.M. Effects of the menstrual cycle on

vibrotactile sensitivity. Percept Psychophys., 36, 1984, pp. 586-592

[18]  GOFF G.D., ROSNER B.S., DETRE T. and KENNARD D. Vibration perception in normal man and medical

patients. J. Neurol. Neurosurg. Psychiat., 28, 1965, pp. 503-509

[19]  GREENING J. and LYNN B. Vibration sense in the upper limb in patients with repetitive strain injury and a

group of at-risk office workers. Int. Arch. Occup. Environ. Med., 71, 1998, pp. 29-34

[20]  JETZER T., CONRAD J.C. and HEITHOFF K. The role of CT scanning and vibrometry testing in the

diagnostic evaluation of carpal tunnel syndrome. Proc. Volvo-IFFSH Conf. Prevention of Brachial Injuries

and Cumulative Trauma Disorders, Stockholm Sweden, 1987, pp. 53-57

[21]  JOHANNSON R.S. and VALLBO A.B. Tactile sensory coding in the glabrous skin of the human hand.

Trends Neurosci., 6, 1983, pp. 27-32

[22]  JOHNSON K.O. and HSIAO S.S. Evaluation of the relative roles of slowly and rapidly adapting afferent

fibers in roughness perception. Can. J. Physiol. Pharmacol., 72, 1994, pp. 488-497

[23]  LINDSELL C.J. Vibrotactile thresholds : Effect of contact force and skin indentation. Proc. U.K. Group

Meeting on Human Response to Vibration, Southampton 1997, pp. 1-11

[24]  LINDSELL C.J. and GRIFFIN M.J. Thermal thresholds, vibrotactile thresholds and finger systolic blood

pressure in dockyard workers exposed to hand-transmitted vibration. Int. Arch. Occup. Environ. Health, 72,

1999, pp. 377-386

[25]  LÖFVENBERG J. and JOHANNSON R.S. Regional differences and interindividual variability in sensitivity

to vibration in the glabrous skin of the human hand. Brain Res., 301, 1984, pp. 65-72

[26]  LUNDBORG G., DAHLIN L., LUNDSTRÖM R., NECKING L. and STRÖMBERG T. Vibrotactile function

in compression and vibration-induced neuropathy : Sensibility index−A new measure. Scand. J. Plast.

Reconstr. Hand Surg., 26, 1992, pp. 275-279

[27]  LUNDSTRÖM R., STRÖMBERG T. and LUNDBORG G. Vibrotactile perception threshold measurements

for diagnosis of sensory neuropathy : Description of a reference population. Int. Arch. Occup. Environ.

Health, 64,1992, pp. 201-207

[28]  MACEFIELD G., HÄGER-Ross C. and JOHANNSON R.S. Control of grip force during restraint of an

object held between finger and thumb : Responses of cutaneous afferents from the digits. Exp. Brain Res.,

108, 1996, pp. 151-171

[29]  MAEDA S. and GRIFFIN M.J. A comparison of vibrotactile thresholds for the finger obtained with different

equipment. Ergonomics, 37,1994, pp. 1391-1406

[30]  MALCHAIRE J., RODRIGUES DIAZ L.S., PIETTE A., GONCALES AMARAL F. and DE SCHAETZEN

D. Neurological and functional effects of short-term exposure to hand-arm vibration. Int. Arch. Occup.

Environ. Health, 71,1998, pp. 270-276

[31]  MARTIN B.J., SALTZMAN J, and ELDERS G. Effects of vibration frequency and duration on eye-hand


24

B 7763-2

:2009 (ISO 13091-2:2003)

coordination in pointing tasks. In : Dupuis H., Christ E., Sandover J., Taylor W. and Okada A. (eds.). Proc.

6th Int. Conf on Hand-Arm Vibration, HVBG (Bonn, Germany), 1992, pp. 185-192

[32]  MEYER S.L. Data Analysis for Scientists and Engineers. John Wiley, New York, 1975

[33]  PIERCY J.E. and BRAMMER A.J. Mean vibrotactile perception thresholds at the fingertips of healthy males.

Proc. U.K. Group Meeting on Human Response to Vibration, Southampton, 2000, pp. 1-10

[34]  SRINIVASAN M.A., WHITEHOUSE J.M. and LAMOTTE R.H. Tactile detection of slip : Surface

microgeometry and peripheral neural codes. J. Neurophysiol., 63, 1990, pp. 1323-1332

[35]  THONNARD J.-L., MASSET D., PENTA M. and PIETTE A. Short-term effect of hand-arm vibration

exposure on tactile sensitivity and manual skill. Scand. J. Work Environ. Health, 23, 1997, pp. 193-198

[36]  WILD P., MASSIN N., LASFARGUES G., BAUDIN V" UNLU D. and DONATI P. Vibrotactile perception

thresholds in four non-exposed populations of working age (submitted for publication)