日本工業規格
JIS
B
6518
-1990
モルダの試験及び検査方法
Test methods for performance and accuracy of moulding machine
1.
適用範囲 この規格は,モルダの機能,運転性能及び剛性に関する試験方法並びに静的精度及び工作
精度の検査方法について規定する。
備考1. モルダとは,回転する複数の横かんな胴,立かんな胴(傾斜かんな胴)及び自動送り装置か
らなり,主テーブル(
1
)
を固定し,かんな胴の左右移動,上下移動,又は傾斜ができ,工作物
を直線送りして,任意の断面形状を切削するかんな盤をいう。
2.
この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 6507
木材加工機械の安全通則
JIS B 6521
木材加工機械の騒音測定方法
3.
この規格の対応国際規格を次に示す。
ISO 7947
Woodworking machines−Two-, three-, and four-side moulding machines−Nomenclature
and acceptance conditions
4.
この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考として併記したものである。
注(
1
)
主テーブルが独立していない場合は,定盤全体をいう。
2.
機能試験方法 モルダの機能試験は,表 1 による。
表 1 機能試験
番号
試験項目
試験方法
1
電気装置
運転試験の前後に,各 1 回絶縁状態を試験する。
2
主軸の始動,停止及び
運転操作
適当な一つの主軸回転速度で,始動及び停止を繰返し 10 回行
い,作動の円滑さ及び確実さを試験する。
3
主軸回転速度 の変換
操作
表示のすべての回転速度について主軸回転速度を変換し,操
作装置の作動の円滑さ及び指示の確実さを試験する。
4
送材装置の始動,停止
及び運転操作
適当な一つの送り速度で,始動及び停止を繰返し 10 回行い,
作動の円滑さ及び確実さを試験する。
5
送り速度の変換操作
表示のすべての送り速度,無段変速式のものは最低,中間及
び最高の三つの送り速度について速度を変換し,操作装置の
作動の円滑さ及び指示の確実さを試験する。
6
手送りの操作
手送りハンドルによって,動きの全長にわたって作動の円滑
さ及び均一さを試験し,また微動手送りハンドルを数回回転
し,円滑さ及び均一さを試験する。
2
B 6518-1990
番号
試験項目
試験方法
7
主軸の左右移動,上下
移動及び締付 けの操
作並びに自動 停止の
操作
主軸を左右,上下移動又は傾斜させ,動きの全長にわたって
作動の円滑さ及び均一さを試験し,動きの中央及び両端にお
いて締付けの確実さ及び締付装置の作動の円滑さを試験す
る。
また,動きの両端において,自動停止装置の作動の円滑さ及
び確実さを試験する。
8
可動部分の作動操作
動きの可動範囲に対して,その作動の確実さ及び円滑さを試
験する。
9
かんな刃及び カッタ
の取付け及び取外し
かんな刃及びカッタの取付け及び取外し並びに締付けねじの
円滑さ及び確実さを試験する。
10
加圧装置
機能の円滑さ及び確実さを試験する。
11
安全装置
作業者に対する安全機能及び機械防護機能の確実さを試験す
る。
(JIS B 6507 参照)
。
12
潤滑装置
油密性,油量の適正な配分など,機能の確実さを試験する。
13
油圧装置
油密性,圧力調整など,機能の確実さを試験する。
14
空気圧装置
気密性,圧力調整など,機能の確実さを試験する。
15
附属装置
機能の確実さを試験する。
備考 その機能をもたないモルダでは,表 1 中のこれに対応する試験項目を省略する。
3.
運転試験方法
3.1
無負荷運転試験 各主軸を回転させ,30∼60 分間運転を継続して軸受温度が安定した後,所要電力
及び騒音を測定し,
表 2 の記録様式 1 に規定する各項について記録するとともに,異常振動がないことを
感触によって観察する。
なお,騒音の測定は,JIS B 6521 による。
表 2 記録様式 1
備考1. 主軸回転速度の変速装置があるものは,最大回転速度を含む少なくとも2水準の回転速度
について記録する。
2.
騒音測定条件については,記事欄に記録する。
3.
騒音以外の測定は,すべてのかんな胴について個々に行う。
4.
かんな胴名称は,機種によって変更することができる。
3.2
負荷運転試験 試験材の切削を行い,所要電力及び騒音を測定し,表 3 の記録様式 2 に規定する各
項について記録するとともに,異常振動がないこと及び切削面の状態を感触によって観察する。
所要電力の測定は,送り速度を一定とし,試験材の厚さ若しくは切込み深さを変えるか,又は試験材の
厚さ若しくは切込み深さを一定とし,送り速度を変えて試験を行う。
3
B 6518-1990
表 3 記録様式 2
備考1. 試験材の切削方向及び騒音測定条件について,記事欄に記録する。
2.
刃形は,図示して主要寸法を記入する。
3.
騒音以外の測定は,すべてのかんな胴について個々に行う。
4.
かんな胴名称は,機種によって変更することができる。
4.
剛性試験方法 モルダの剛性試験は,表 4 による。
表 4 剛性試験
番号 試験項目
測定方法
測定方法図
1
主軸系の
曲げ剛性
定置したテストインジケータを主
軸の先端部(側面)に当てて,主
軸に直角方向の荷重 (P) を加え
(
2
)
,主軸のたわみを測定する。
この測定は,互いに 90°をなす 2
方 向 に つ い て 荷 重 を 加 え て 行 う
(
3
)
。
4
B 6518-1990
番号 試験項目
測定方法
測定方法図
2
上かんな
胴とテー
ブルの総
合剛
テーブル上面に固定したテストイ
ン ジ ケ ー タ を 上 か ん な 胴 に 当 て
て,上かんな胴とテーブル上面と
の間に,垂直方向の荷重 (P) を加
え(
4
)
,主軸とテーブル上面との間
の相対変位を測定する。
注(
2
)
荷重を加える位置は,できるだけ主軸端に近い位置とし,その主軸端からの距離を
記録する。
(
3
)
主軸又は主軸スリーブを昇降するものでは,その動きの中央に固定して測定を行う。
(
4
)
荷重を加える位置は,できるだけかんな胴の中央とし,その主軸端からの距離を記
録する。
備考1. 同一設計の機械の剛性試験は,代表的な1台について行った試験結果で代表させ,
他のものについては省略してもよい。
2.
荷重 (P) は,製造業者の推奨する大きさとし,その値を記録する。
3.
この測定は,主軸を回転させ,軸受温度が安定した後に行う。
5.
静的精度検査方法 モルダの静的精度検査は,表 5 による。
表 5 静的精度検査
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
1
各テーブ
ル上面の
真直度
直定規をテーブル上面に対角線上
及び縦方向に置き,すきまをすき
まゲージで測定し,その最大値を
測定値とする(
5
)
。
1 000
について
0.10
2
各テーブ
ルの上面
の整列度
直定規を隣接テーブル上面にまた
がるように対角線上及び縦方向に
置き,すきまをすきまゲージで測
定し,その最大値を測定値とする
(
5
)
。
1 000
について
0.10
3
各テーブ
ルの横方
向の整列
度
各テーブルについて,テーブル上
面に,テストインジケータを置き,
これを隣接する前及び後テーブル
上面に当てて横方向に移動させ,
それぞれテストインジケータの読
みの最大差を測定値とする。
0.03
4
定規面の
真直度と
整列度
直定規を定規面又は各定規面にま
たがるように置き,すきまをすき
まゲージで測定し,その最大値を
測定値とする(
5
)
。
1 000
について
0.10
5
B 6518-1990
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
5
横軸の振
れ
横軸の両端にテストインジケータ
を当てて,横軸を手動で回転し,
回転中のテストインジケータの読
みの最大差のうち大きい方を測定
値とする。
L
<150
0.02
L
≧150
0.03
6
テーブル
上面と横
軸との平
行度
基準テーブル(
6
)
上面にテストイン
ジケータを置き,これを横軸に当
てて,両端におけるテストインジ
ケータの読みの最大差を測定値と
する(
7
)
。
0.05
7
横軸の胴
付面の軸
方向の振
れ
横軸の胴付面にテストインジケー
タを当てて,横軸を手動で回転し,
回転中におけるテストインジケー
タの読みの最大差を測定値とす
る。
0.01
8
横軸の運
動とテー
ブル上面
との平行
度
横軸に固定したテストインジケー
タを基準テーブル(
6
)
上面に当て
て,横軸を最大移動量だけ移動し,
移動中のテストインジケータの読
みの最大差を測定値とする。
0.04
9
横軸の軸
方向の動
き
横軸の先端にテストインジケータ
を当てて,横軸を軸方向に揺すり
(
8
)
,テストインジケータの読みの
最大差を測定値とする。
0.05
10
定規に対
する横軸
の直角度
横軸に固定したテストインジケー
タを定規に当てて振り回し,テス
トインジケータの読みの最大差を
測定値とする。
振回し直径
200
について
0.10
11
立軸の振
れ
立軸のフランジ面から 50mm の位
置にテストインジケータを当て
て,立軸を手動で回転し,回転中
におけるテストインジケータの読
みの最大差を測定値とする。
0.02
6
B 6518-1990
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
12
立軸の胴
付面の軸
方向の振
れ
立軸の胴付面にテストインジケー
タを当てて,立軸を手動で回転し,
回転中におけるテストインジケー
タの読みの最大差を測定値とす
る。
0.01
13
テーブル
に対する
立軸の直
角度
直角定規を立軸テーブル上面又は
主テーブル上面に置き,立軸に固
定したテストインジケータをテー
ブル上面に当てて振り回し,テス
トインジケータの読みの最大差を
測定値とする。
振回し直径 200 につい
て
0.10
14
立軸上下
運動とテ
ーブル上
面との直
角度
立軸に固定したテストインジケー
タをテーブル上面に定置(
9
)
した直
角定規に当てて,立軸の最大移動
量だけ移動し,テストインジケー
タの読みの最大差を測定値とす
る。
0.05
15
立軸の軸
方向の動
き
立軸の先端にテストインジケータ
を当てて,立軸を軸方向に揺すり
(
8
)
,テストインジケータの読みの
最大差を測定値とする。
0.05
16
テーブル
上下運動
の平行度
前テーブル上面に精密水準器を主
軸と平行及び直角に置き,下降位
置から約 10 mm 上昇させ,その間
における精密水準器の読みの最大
差を測定値とする。
0.06/m
17
テーブル
ロールの
振れ
テーブルロールの両端にテストイ
ンジケータを当てて,テーブルロ
ールを手動で回転し,回転中にお
けるテストインジケータの読みの
最大差を測定値とする。
0.05
7
B 6518-1990
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
18
テーブル
とテーブ
ルロール
との平行
度
テーブルロール後のテーブル上面
にテストインジケータを置き,テ
ーブルロールの両端の最上部にお
けるテストインジケータの読みの
最大差を測定値とする。
0.05
19
テーブル
に対する
ロール上
の送り込
みキャタ
ピラの平
行度
直定規をテーブルとロール上の送
り込みキャタピラの上部にまたが
るように対角線上及び両端に置
き,キャタピラ最上部と直定規の
すきまをすきまゲージで測定し,
その最大値を測定値とする(
5
)
。
1 000
について
0.20
注(
5
)
測定距離が基準より小さい場合には,測定の許容値の数値を距離に比例して換算する。この場合,特に
指定がない限り,換算した許容値の数値が0.005mm 未満の場合には,0.005mm とする。
(
6
)
基準テーブルは,上横軸では直下のテーブルを,下横軸では後テーブルをいう。
(
7
)
この測定は,横軸の全長について,振れの最も少ない位置を基準として行う。
(
8
)
軸方向に揺する力は,約 150N{約 15kgf}とする。
(
9
)
定置する位置は,互いに直交する 2 か所とする。
備考 その機能をもたないモルダでは,表 5 中のこれに対応する検査項目を省略する。
6.
工作精度検査方法 モルダの工作精度検査は,表 6 による。
表 6 工作精度検査
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
1
切削面の
縦方向の
真直度
試験材の 4 面を切削して,その切
削面に 1 000mm の直定規を相対し
て置き,すきまをすきまゲージで
測定し,その最大値を測定値とす
る。
1 000
について
0.30
2
切削面の
幅と厚さ
の精度
上記試験材の中央及び両端の幅及
び厚さをノギスで測定し,その最
大差を測定値とする。
0.10
8
B 6518-1990
単位 mm
番号 検査項目
測定方法
測定方法図
許容値
3
切削面の
直角度
上記試験材の隣接する 2 面に直角
定規を当てて,すきまをすきまゲ
ージで測定する。
この測定は,試験材の中央及び両
端の 3 か所で行い,その最大値を
測定値とする。
50
について
0.10
備考 試験材は,あらかじめ必要な前加工をする。
関連規格:JIS B 6501 木材加工機械の試験方法通則
JIS Z 8203
国際単位系 (SI) 及びその使い方
丸のこ盤及びかんな盤関係 JIS 原案作成委員会 構成表(敬称略)
氏名
所属
(委員長)
福 井 尚
東京農業大学農学部
桑 原 茂 樹
通商産業省機械情報産業局
吉 田 藤 夫
工業技術院標準部
木 下 敍 幸
農林水産省林野庁森林総合研究所
喜多山 繁
東京農工大学農学部
池 田 順 一
財団法人日本規格協会
菊 地 俊 一
大進工業株式会社
佐 藤 久
社団法人全国家具工業連合会
谷 口 丑五郎
有限会社谷口建具店
児 玉 実
木材加工技術コンサルタント
谷 野 八 郎
庄田鉄工株式会社技術部
合 瀬 豊
飯田工業株式会社開発部
堀 井 衛
有限会社永和工業所
世 古 禎 徳
株式会社菊川鉄工所設計部
近 藤 昌 三
株式会社太洋製作所
墨 岡 勇
株式会社平安鉄工所
村 上 勝
社団法人全国木工機械工業会