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日本工業規格

JIS

 B

6014-

1980

工作機械の安全通則

General Code of Safety for Machine Tools

1.

適用範囲  この規格は,工作機械及び機械加工に附随させる安全防護装置及び安全防護対策に関する

一般的事項について規定する。ただし,国で定めた規制のあるものについては適用しない。

なお,加工中手で保持し又はマグネットスタンドなどで固定して使用する機械についてはこの規格を準

用する。

引用規格: 

JIS B 0105

  工作機械の名称に関する用語

JIS B 6011

  工作機械の操作方向

JIS B 6012

  工作機械の操作表示記号

JIS Z 9110

  照度基準

関連規格:BS 5304  Safeguarding of Machinery

2.

用語の意味  この規格で用いる主な用語の意味は,次による。

(1)

工作機械  JIS B 0105(工作機械の名称に関する用語)に規定する工作機械。

(2)

安全防護  傷害を防止すること。

(3)

製造業者  工作機械又はこれに附随させる安全防護装置又は安全防護対策の設計・製造・修理又は改

造を行う者。

(4)

販売業者  工作機械又はこれに附随させる安全防護装置又は安全防護対策の売買又は賃貸を行う者。

(5)

作業者  自ら工作機械を操作又は監視して加工を行う者。工作機械又はこれに附随する安全防護装置

又は安全防護対策の保全・点検を行う者を含む。

(6)

管理者  作業者に工作機械を使用させ,又は上記の保全・点検を行わせる者。使用させる目的で工作

機械を設置した者を含む。

(7)

他者  作業者以外の者で危険点又は危険域の近傍にいる者。

(8)

危険  傷害の発生が理論的又は経験的に予知できる状況。

(9)

危険部分  工作機械及びその附属装置,工具又は工作物の一部で,傷害を発生させるおそれのある部

分。

(10)

危険点  危険の可能性が極めて高いと予想されるごく限られた場所。

(11)

危険域  危険の可能性があると考えられる区域。

(12)

安全防護装置  安全防護のための機能を持たせた装置。ハードウェア。

(13)

安全防護対策  安全防護のための手段・方法。ソフトウェア。

(14)

安全防護物  危険点に接近し又は危険域内に進入することを防止する機能を持つ囲い(防護さく,安


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全覆いなど)

。安全防護装置の一つ。

3.

工作機械の安全防護通則

(1)

製造業者,販売業者,管理者及び作業者は,工作機械及び機械加工による傷害を防止するために,こ

の規格に基づいた適切な措置を講じなければならない。

(2)

機械加工上必要な部分を除き,工作機械にはのこ(鋸)歯状又は鋭利な縁・突起などの危険部分があ

ってはならない。

(3)

製造業者,販売業者,管理者及び作業者は,工作機械及び機械加工に附随させる安全防護装置及び安

全防護対策について具体的措置を考慮しなければならない。

(4)

安全防護は作業者に対してだけでなく,他者に対しても傷害を防止するものでなければならない。

(5)

何人も工作機械及び機械加工に附随させた安全防護装置及び安全防護対策の効力を正当な理由なく失

わせてはならない。

(6)

管理者は作業者に対して,安全防護に関する教育訓練を行わなければならない。

(7)

管理者は作業者及び他者に対して,安全防護に関して監督を怠ってはならない。

(8)

作業者は作業上守らなければならない規則に従って作業しなければならない。

(9)

保全,点検,修理,調整などに際して,既設の安全防護装置又は安全防護対策が機能を失うおそれが

ある場合は,別の安全防護措置を講じなければならない。

(10)

保全,点検,修理,調整などの作業中に,不用意に運転が開始されないように措置しなければならな

い。

(11)

保全,点検,修理,調整などを行った後には,必ず安全防護装置又は安全防護対策がその機能を回復

したことを確認しなければならない。

(12)

改造・改善を行った場合は新しい危険を伴う可能性があるので,必要があればこれに対する安全防護

装置又は安全防護対策を講じなければならない。

4.

工作機械及び機械加工に潜在する危険  工作機械及び機械加工において発生する可能性のある危険を

次のように分類し,それぞれについて例を挙げる。

(1)

衝突  運動中の機械部分,加工中の工作物又は工作機械から飛び出す工具やその破片若しくは工作物

と激突して衝撃を受ける危険及びこれに類すること。

(2)

きょう(挾)撃  運動中の機械部分又は加工中の工作物と他の固定構造物との間にはさまれて強く圧

縮される危険及びこれに類すること。

(3)

せん断  運動中の機械部分,工具又は工作物と静止している機械部分,工具又は工作物との間にはさ

まれてせん断を受ける危険及びこれに類すること。

(4)

巻き込み  運動中の機械部分,工具又は工作物に接触して引き込まれ又はこれら運動する物体と静止

している物体との間にはさみ込まれ,若しくは運動する物体同士の間に巻き込まれる危険及びこれに

類すること。

(5)

引っか(掻)き  運動中の機械部分,工作物,工作機械から飛び出す切りくずなどによって引っか(掻)

かれる危険及びこれに類すること。切りくずが高温の場合は火傷を受けることがある。

(6)

切れ  静止又は運動中の工具に触れて傷害を受ける危険及びこれに類すること。


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5.

工作機械の危険部分  工作機械に通常存在する危険点及び危険部分を次のように分類し,それぞれに

ついて例を挙げ,括弧内に主な危険の種類を示す。

5.1

静止している危険部分

(1)

切削工具の切刃(切れ)

(2)

長く突出した機械部分。例えば,機械から突出しているフランジ形電動機,横フライス盤のコラム後

方に突出しているオーバアーム(衝突)

5.2

直線運動をする危険部分

(1)

接近形危険部分

(a)

長手方向に運動して接近してくるもの。例えば,平削り盤のテーブル,形削り盤のラム,平面研削

盤の往復テーブル〔衝突,きょう(挾)撃〕

(b)

突出した機械部分が横方向に運動して接近してくるもの。例えば,横中ぐり盤の主軸頭後部,ひざ

形フライス盤のテーブル(衝突)

(2)

通過形危険部分

(a)

単純な直線運動部分。例えば,運転中のベルト(巻き込み)

(b)

直線運動をする突起。例えば,飛び出しているベルト結合金具〔衝突,引っか(掻)き,巻き込み〕

(c)

運動部分と静止部分との組合せ。例えば,テーブルとベッドとの組合せのように,工作機械の直線

運動をする部分と静止部分との組合せはほとんどこれに属する(構造によっては巻き込み又はせん

断の危険がある)

(3)

直線運動をする刃物。例えば,形削り盤のバイト,金切帯のこ(鋸)盤の帯のこ(鋸)

,ブローチ,ベ

ルトサンダの研摩ベルト(切れ,巻き込み)

5.3

回転運動をする危険部分

(1)

単純な回転運動部分。例えば,軸,旋盤の送り棒,旋削の工作物(巻き込み)

(2)

回転運動をする突起。例えば,チャック外周に突出したつめ,軸の外周に露出したキー又は止めねじ

の頭,軸端に突出した打込みキーの頭,ハンドル車の握り(衝突,巻き込み)

(3)

回転運動をする放射状部分。例えば,ハンドル車,歯車,プーリなどのスポーク(衝突,巻き込み)。

(4)

揺動する機械部分。例えば,かさ歯車歯切盤のクレードル〔構造によってはきょう(挾)撃,巻き込

みの危険がある〕

(5)

運動部分と静止部分との組合せ。例えば,ハンドル車のスポークと機械のベッドとの組合せ(構造に

よってはせん断の危険がある)

(6)

回転運動をする刃物

(a)

刃物単体。例えば,各種フライス,中ぐり工具,といし車,金切丸のこ(鋸)

(切れ)

(b)

回転する刃物と静止している機械部分又は直線運動をする工作物との組合せ。例えば,両頭グライ

ンダのといし車とワークレストとの組合せ,フライスと工作物との組合せ(切れ,巻き込み)

5.4

かみ合い部をもつ危険部分

(1)

直線運動と回転運動との組合せ。例えば,ベルトとプーリとの組合せ,チェーンとスプロケットとの

組合せ,ラックとピニオンとの組合せ(巻き込み)

(2)

回転運動と回転運動との組合せ。例えば,互いにかみ合って回転している歯車(巻き込み)

5.5

飛び出しを伴う危険部分

(1)

工具の飛び出し。例えば,締付け不良のチップ,破壊したといし車の破片〔衝突,引っか(掻)き〕。

(2)

工作物の飛び出し。例えば,連続して排出される切くず,破砕されて飛散する切くず,機械から外れ


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て飛び出し又は落下する工作物〔衝突,引っか(掻)き〕

(3)

放射線など。例えば,レーザ加工機のレーザビーム。

6.

機械加工における安全防護の基本  機械加工における安全防護は,工作機械自身のもつ安全防護機能

と,その使用・管理における安全防護とが両立して始めて確保される。

安全防護の基本は,危険点に接近し若しくは危険域内に進入することを阻止する安全防護物を設置する

か,又は危険点に接近し若しくは危険域内に進入した者が傷害を受ける以前に,4.に掲げる危険を取り除

き,又は減少させるような装置・手段・方法を講ずることである。

なお,安全防護に関するすべての装置及び対策は,信頼性が高くなければならない。

また,できる限りフェイルセーフであることが望ましい。更に,事故の先例を安全防護に生かす配慮が

望ましい。

7.

設計・計画段階における安全防護対策

7.1

全般

(1)

工作機械を設計し又は機械加工を計画するに当たっては,可能な限り 5.に掲げる危険部分をなくする

か,又はこれを覆っておくことが望ましい。それが不可能な場合は,機械の一部として設計・計画し

た安全防護物を設置することが望ましい。

(2)

給油や日常点検は,危険域内に立ち入らないで行うことができるよう配慮されていることが望ましい。

(3)

直線運動をする運動部分相互の間,又は直線運動部分と静止部分との間の最小間隔を十分に大きくし,

若しくは最大間隔を十分に小さくして,きょう(挾)撃を防ぐことによって安全防護装置又は安全防

護対策を省略してもよい。

(4)

ブレーキ・クランプなどを設ける場合は,動力又は制御信号が断たれた場合にも作動するフェイルセ

ーフ方式とすることが望ましい。

(5)

始動時又は制動時の衝撃によって,ねじ止めされた部品が緩まないような配慮が必要である。

(6)

高速回転軸では,動力駆動の際にハンドルやハンドル車が回転しないように設計することが望ましい。

これが不可能な場合は,スポーク及び握りのないハンドル車を使用する。

7.2

工作機械の操作装置

(1)

操作装置は,間隔,大きさ,形,色若しくは触感により,又は機能若しくは用途を表す文字・絵記号

を付けて,作業者が明確にかつ即座に識別できるようにする〔JIS B 6012(工作機械の操作表示記号)

参照〕

(2)

非常停止は自動復帰しない形式とし,また,不用意に復帰することのできないものとする。

(3)

操作の向きと運動する部分の運動の向きとは一致させる〔JIS B 6011(工作機械の操作方向)参照〕。

(4)

作業台又は運転台を必要とする場合は,そのプラットフォームは水平で十分な広さを持ち,かつ,安

定していなければならない。

(5)

作業台又は運転台に設けるい(椅)子は十分な強度を持ち,背もたれを設けるなどして作業者の転落

を防ぐ。必要なら足乗せ台を設ける。

(6)

運転台の周囲に手すり(摺)又は囲い板を設ける。

8.

安全防護物  安全防護物の構造及び機能は,次による。

(1)

安全防護物は作業中に生じる力や環境条件に十分耐え得るようがん丈であり,安易に調整したり撤去


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したりできない構造としなければならない。

(2)

安全防護物はそれ自身,のこ(鋸)歯状又は鋭利な縁・突起などの危険部分を持ってはならない。

また,安全防護物は,はさみ込み部やせん断部を持たないことが望ましい。

(3)

安全防護物は,原則として固定式とする。

(4)

安全防護物を通して工作物を出し入れする必要がある場合は,安全防護物に開口部を設ける。開口部

と危険点との間は安全防護上必要かつ十分な距離とし,工作物と開口部との間に巻き込みの危険がな

いように開口の大きさに注意する。場合によっては開口の位置及び大きさを調節式とする。

(5)

作業の性質上危険点に接近し,又は危険域内に進入する必要がある場合は,安全防護物を開くことと

機械の停止とを連動させることが望ましい。

(6)

惰性による運動時間の長い機械では,上記の連動機構として,惰性運動の停止を確認するまで安全防

護物をロック(施錠)するか,予想される惰性運動時間中,安全防護物をロック(施錠)するか,又

は安全防護物を開くか若しくは動力を断つことによってブレーキがかかって惰性運動を速やかに停止

させるなどの機能を持つものが望ましい。

(7)

上記(5)の場合に,安全防護物を設置することが適当でないときは,引っ張る,押す,触れる,光線を

さえぎるなどの動作によって動力をしゃ断する機能を持つ装置を設けることが望ましい。

9.

作業環境における安全防護対策

9.1

工作機械の周囲空間  工作機械の周囲の空間は,次による。

(1)

工作機械の周囲には,次に述べる作業空間を確保しなければならない。ただし,この作業空間には工

具箱,ロッカなどを置くための空間は含まない。

なお,ローダ,アンローダなどは,工作機械の一部とみなす。

(a)

所要の加工を行うために必要な空間。

(b)

保全,点検,調整,清掃などのために必要な空間。

(2)

上記作業空間は,素材の置き場や車両の通路として使用してはならない。

(3)

上記作業空間は,滑りやすい状態にしておいてはならない。

(4)

作業の必要上ピットを設ける場合は,転落防止の措置を講じなければならない。

(5)

複数の工作機械又は複数の作業者に対して共通の作業空間を設ける場合も上記各項に準じる。

9.2

照明  照明は,次による。

(1)

作業場全体の照明以外に,作業者の安全と作業能率向上のために,局部照明を用意することが望まし

い。照度は,JIS Z 9110(照度基準)による。

(2)

光源によっては,回転体が静止して見えたり,ちらついて見えるので危険であるから注意しなければ

ならない。


6

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工作機械部会  工作機械専門委員会  構成表

氏名

所属

(委員会長)

本  田  巨  範

幾徳工業大学

伊  藤      鎮

上智大学

渡  部      典

日本国有鉄道

吉  田  嘉太郎

工業技術院機械技術研究所

棚  橋  祐  治

通商産業省機械情報産業局

仲井真  弘  多

工業技術院標準部

益  子  正  巳

武蔵工業大学

竹  中  規  雄

日本大学

山  内  明  之

三菱重工業株式会社

沢  田      潔

東芝機械株式会社

高  橋      豊

社団法人日本工作機械工業会

相  原  健  三

池貝鉄工株式会社

森  泉  悦  江

株式会社津上

菅  田      稔

株式会社牧野フライス製作所

和井田  洋次郎

株式会社和井田製作所

日下部      猛

豊田工機株式会社

石  川  義  智

アヅミ株式会社

黒  坂      章

トヨタ自動車工業株式会社

立  花      至

日産自動車株式会社

大  橋  克  彦

川崎重工業株式会社

糸魚川  克  郎

東京芝浦電気株式会社

右  田  昇  一

黒田精工株式会社

青  木  誠  二

株式会社荏原製作所

西  牧  準  夫

株式会社園池製作所

(事務局)

矢  島  武  憲

工業技術院標準部機械規格課

加  山  英  男

工業技術院標準部機械規格課