B 2704-3
:2009
(1)
目 次
ページ
1
適用範囲
1
2
引用規格
1
3
用語及び定義
1
4
ばねの材料及び材料の直径
1
5
ばねの形状
1
6
ばね特性の許容差及び寸法の許容差
2
6.1
許容差の等級
2
6.2
ばね特性の許容差
2
6.3
寸法の許容差
3
7
表面状態
4
8
硬さ
4
9
試験
5
9.1
ばね特性
5
9.2
寸法
5
9.3
表面状態
5
9.4
硬さ
6
10
仕様の表し方
6
10.1
ばねの製図
6
10.2
仕様書に記載する事項
6
10.3
仕様書の記載
6
B 2704-3
:2009
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本ばね工業会(JSMA)及び財団法
人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標
準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。これによって,JIS B 2704:2000 は
廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
JIS B 2704
の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS
B
2704-1
第 1 部:圧縮及び引張コイルばね基本計算方法
JIS
B
2704-2
第 2 部:圧縮コイルばねの仕様の表し方
JIS
B
2704-3
第 3 部:引張コイルばねの仕様の表し方
日本工業規格
JIS
B
2704-3
:2009
コイルばね−
第 3 部:引張コイルばねの仕様の表し方
Coil springs
−Part 3: Expression of the specification on
helical extension springs
1
適用範囲
この規格は,JIS B 2704-1 に基づく引張コイルばね(以下,ばねという。
)の材料,形状,ばね特性,寸
法などの仕様の表し方について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 0004
ばね製図
JIS B 0103
ばね用語
JIS B 2704-1
コイルばね−第 1 部:圧縮及び引張コイルばね基本計算方法
JIS G 0558
鋼の脱炭層深さ測定方法
JIS Z 2243
ブリネル硬さ試験−試験方法
JIS Z 2320-1
非破壊試験−磁粉探傷試験−第 1 部:一般通則
JIS Z 2320-2
非破壊試験−磁粉探傷試験−第 2 部:検出媒体
JIS Z 2320-3
非破壊試験−磁粉探傷試験−第 3 部:装置
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS B 0103 による。
4
ばねの材料及び材料の直径
ばねの材料及び材料の直径は,JIS B 2704-1 の箇条 4(材料)に規定するものを使用する。
5
ばねの形状
ばねのフック及びフック端部の形状の例を,
図 1 に示す。
2
B 2704-3
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a)
半丸フック
b)
丸フック
c)
逆丸フック
d)
側面丸フック
e)
角フック
f)
U フック
g)
V フック
h)
絞り丸フック
i)
ねじ込みフック
j)
斜め丸フック
図 1−フック及びフック端部の形状(例)
6
ばね特性の許容差及び寸法の許容差
6.1
許容差の等級
ばね特性の許容差及び寸法の許容差の等級は,熱間成形ばねの場合は 1 等級,冷間成形ばねの場合は 1
級〜3 級の 3 等級とする。この等級は,各項目ごとに使用上の条件によって独立に選定する。
6.2
ばね特性の許容差
ばね特性は,熱間成形ばねの場合は,指定荷重(力)のときの長さ又は指定長さのときの荷重(力)と
し,また,冷間成形ばねの場合は,指定長さのときの荷重(力)とし,使用者が指定する。
3
B 2704-3
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なお,熱間成形ばね及び/又は冷間成形ばねで必要がある場合は,ばね定数を使用者が指定する。
ばね特性の許容差は,冷間成形ばねの場合は,次による。ただし,熱間成形ばねの場合のばね特性の許
容差は,受渡当事者間の協定による。
a)
指定長さのときの荷重(力)の許容差 指定長さのときの荷重(力)の許容差は,指定する許容差の
等級に応じて
表 1 から係数
α
の値と,許容差を指定するばねの有効巻数に応じて
表 2 から係数
β
の値
とを選択し,次の式によって計算する。
ΔA=±[B×
α
+(C−B)×
β
]
ここに,
ΔA: 指定長さのときの荷重(力)の許容差(N)
B
:
初張力(N)
C
:
指定長さのときの荷重(力)
(N)
α
:
初張力のばらつきの大きさを表す係数(
表 1 による。)
β
:
たわみに対する荷重(力)のばらつきの大きさを表す係数(
表
2
による。
)
表 1−冷間成形ばねの初張力のばらつきの大きさを表す係数(
α
)
の値
等級
1 級
2 級
3 級
α
0.10
0.15
0.20
表 2−冷間成形ばねのたわみに対する荷重(力)のばらつきの大きさを表す係数(
β
)
の値
等級
有効巻数
N
a
1 級
2 級
3 級
3 以上 10 以下 0.05 0.10 0.15
10 を超えるもの 0.04 0.08 0.12
b)
ばね定数の許容差 ばね定数の許容差は,有効巻数によって表 3 による。
表 3−冷間成形ばねのばね定数の許容差
単位 N/mm
等級
有効巻数
N
a
1 級
2 級
3 級
3 以上 10 以下
±5
%
±10
%
±15
%
10 を超えるもの
±4
%
±8
%
±12
%
6.3
寸法の許容差
ばねの寸法及び寸法許容差は,次による。
a)
自由長さ ばね特性の指定がない場合の自由長さの許容差は,熱間成形ばねの場合は,±2
%とする。
また,冷間成形ばねの場合は,ばね指数によって
表 4 による。ただし,熱間成形ばね及び冷間成形ば
ねで初張力がない場合の自由長さの許容差は,受渡当事者間の協定による。また,ばね特性の指定が
ある場合は,自由長さは参考値とする。
なお,許容差は,
表 4 に示す各欄の両条件のうち,絶対値の大きい方の値とする。
4
B 2704-3
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表 4−冷間成形ばねの自由長さの許容差
単位 mm
等級
ばね指数
c
1 級
2 級
3 級
4 以上
8 以下
±1.0
%,±0.2
±2.0
%,±0.5
±3.0
%,±0.7
8 を超え 15 以下
±1.5
%,±0.5
±3.0
%,±0.7
±4.0
%,±0.8
15 を超え 22 以下
±2.0
%,±0.6
±4.0
%,±0.8
±6.0
%,±1.0
b)
コイル直径 コイル直径の許容差は,熱間成形ばねの場合は表 5 による。また,冷間成形ばねの場合
は,ばね指数によって
表 6 による。
なお,許容差は,
表 5 又は表 6 に示す各欄の両条件のうち,絶対値の大きい方の値とする。
表 5−熱間成形ばねのコイル直径の許容差
単位 mm
自由長さ H
f
許容差
250 以下
±1.0
%,±1.5
250 を超え 500 以下
±1.5
%,±1.5
500 を超えるもの
受渡当事者間の協定による。
許容差は,片側にとることができる。この場合には,表
中の許容差の範囲を片側にとり, ±1.5 %を %
な
どのように示す。
表 6−冷間成形ばねのコイル直径の許容差
単位 mm
等級
ばね指数
c
1 級
2 級
3 級
4 以上
8 以下
±1.0
%,±0.15
±1.5
%,±0.20
±2.5
%,±0.40
8 を超え 15 以下
±1.5
%,±0.20
±2.0
%,±0.30
±3.0
%,±0.50
15 を超え 22 以下
±2.0
%,±0.30
±3.0
%,±0.50
±4.0
%,±0.70
許容差は,片側にとることができる。この場合には,表中の許容差の範囲を片
側にとり, ±1.5 %を %
などのように示す。
c)
総巻数及びフック ばね特性の指定がない場合の総巻数,フックの対向角,フックの中心ずれ,フッ
クの倒れ及びフック出っ張りの許容差は,受渡当事者間の協定による。
なお,ばね特性の指定がある場合は,参考値とする。
7
表面状態
ばねには,使用上有害なきず,腐食及びその他の欠点があってはならない。
8
硬さ
熱間成形ばねの焼戻し後の硬さは,ブリネル硬さ 388HBW(くぼみの直径 3.10 mm)〜461HBW(くぼみ
の直径 2.85 mm)とする。ただし,これ以外の硬さが必要な場合は,受渡当事者間の協定による。
なお,冷間成形ばねの硬さは,箇条 10 の仕様の表し方には規定しない。
+3
0
+3
0
5
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9
試験
9.1
ばね特性
ばね特性の試験は,6.2 で指定した指定荷重(力)のときの長さ,指定長さのときの荷重(力)又はばね
定数を測定する。ただし,ばね特性を測定するときの荷重(力)は,熱間成形ばねの場合は
表 7,冷間成
形ばねの場合は
表 8 の最大試験荷重(力)のときの応力が生じる荷重(力)の 80
%以下とする。
なお,熱間成形ばねのばね特性の試験は,通常,最大試験荷重(力)を 1 回負荷した後に行う。
表 7−熱間成形ばねの最大試験荷重(力)のときの応力
単位 N/mm
2
材料
SUP 6
SUP 7
SUP 9
SUP 9A
SUP 10
SUP 11A
SUP 12
SUP 13
最大試験荷重(力)
のときの応力
490
表 8−冷間成形ばねの最大試験荷重(力)のときの応力
単位 N/mm
2
材料
硬鋼線
ピアノ線
オイルテンパー
線
ステンレス鋼線
黄銅線
洋白線
りん青銅線
ベリリウム銅線
最大試験荷重(力)
のときの応力
引張強さ×0.4
引張強さ×0.44
引張強さ×0.32
引張強さ×0.28
引張強さ×0.32
引張ばねのフック部の曲げ応力を考慮する必要がある場合は,
表 8 より低い応力としてもよい。
なお,最大試験荷重(力)は,次の式による。
0
3
max
8
π
τ
D
d
P
=
ここに,P
max
d
D
τ
0
:ばねの最大試験荷重(力)
(N)
:材料の直径(mm)
:コイル平均径(mm)
:せん断応力(ねじり応力)
(N/mm
2
)
(JIS B 2704-1 の 5.2 参照)
9.2
寸法
自由長さ,コイル直径などの寸法の試験は,直接測定(2 点測定)
,限界ゲージ及びその他の方法によっ
て行う。
9.3
表面状態
表面状態の試験は,目視によって行う。
なお,熱間成形ばねで使用者から要求があった場合は,JIS Z 2320-1〜JIS Z 2320-3 に規定する磁粉探傷
試験及び JIS G 0558 に規定する脱炭層深さ測定を行う。
6
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9.4
硬さ
硬さの試験は,JIS Z 2243 に規定するブリネル硬さ試験を行う。
なお,硬さ試験は,ばねの使用上有害とならない位置で行う。
10
仕様の表し方
10.1
ばねの製図
図 2 のばねの図は,JIS B 0004 による。
10.2
仕様書に記載する事項
仕様書に記載する事項は,使用上の条件に応じて必要な項目を次から選ぶ。
なお,各項目ごとに必要に応じて許容差を等級又は数値で指定する。
a)
ばねの形状(
図 1 の例を参考にしてコイル長さ,フック部長さ,フック対向角などばねの形状を図で
指定する。
)
− コイル平均径
− コイル内径又は外径
− 巻数
− 巻方向(右巻の場合は,省略してもよい。
)
b)
材料及び材料の直径
c)
自由長さ
d)
ばね特性
− ばね定数
− 指定荷重(力)又は指定長さ
− 指定荷重(力)のときの長さ又は指定長さのときの荷重(力)
e)
硬さ
前記 a)〜e)
の項目以外に,表面処理,ばねの用途又は使用条件などの記載が必要な場合は,受渡当事者
間の協定によって記載する。
10.3
仕様書の記載
仕様書の記載例を,
図 2 に示す。
7
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単位 mm
要目表
材料 SW-C
材料の直径(mm) 2.6
コイル平均径(mm) 18.4
コイル外径(mm) 21±0.3
総巻数 11.5
巻方向
右
自由長さ(mm)
(64)
ばね定数(N/mm) 6.26
初張力(N)
(26.8)
長さ(mm) 86
長さのときの荷重(力)
(N) 164.5±10
%
荷重(力)
(N)
−
荷重(力)のときの長さ(mm)
−
指定
応力(N/mm
2
) 531
最大許容引張長さ(mm) 92
フックの形状
丸フック
成形後の表面加工
−
表面処理
防せい油塗布
用途又は使用条件
常温・静荷重(力)
図 2−仕様書の記載例(冷間成形引張コイルばね)