B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,日本ねじ研究協会(JFRI)/財団法人日本規
格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調
査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 7085:1999,Mechanical and
performance requirements of case hardened and tempered metric thread rolling screws
を基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
B 1060:2003 (ISO 7085
:1999)
(2)
目 次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
材料
2
4.
機械的性質
2
4.1
概要
2
4.2
熱処理
2
4.3
硬さ
2
4.4
硬化層深さ
2
4.5
破壊トルク
2
4.6
じん性
3
4.7
ねじ山の成形能力
3
4.8
ぜい化
3
4.9
再焼戻し後の心部硬さ
3
4.10
引張破壊荷重
4
5.
試験方法
4
5.1
心部硬さ試験
4
5.2
表面硬さ試験
4
5.3
硬化層深さ試験
4
5.4
ねじり試験
4
5.5
じん性試験
5
5.6
ねじ込み試験
6
5.7
ぜい化試験
6
5.8
再焼戻し試験
6
5.9
引張試験
6
6.
トルクレンチ
6
7.
表示
6
7.1
記号
6
7.2
製品表示
6
7.3
製造業者識別記号の表示
7
日本工業規格
JIS
B
1060
:2003
(ISO 7085
:1999
)
浸炭焼入焼戻しを施したメートル系
スレッドローリングねじの
機械的性質及び性能
Mechanical and performance requirements of case hardened and tempered
metric thread rolling screws
序文 この規格は,1999 年に第 1 版として発行された ISO 7085:1999,Mechanical and performance
requirements of case hardened and tempered metric thread rolling screws
を翻訳し,技術的内容及び規格票の様
式を変更することなく作成した日本工業規格である。
1.
適用範囲 この規格は,浸炭焼入焼戻しを施したメートル系スレッドローリングねじに関する要求事
項について規定する。この規格に適合するスレッドローリングねじは,一般工業分野で使用するねじの呼
び径が 2〜12 mm のメートルねじにはまり合うめねじのねじ山を成形する。
この規格によって製造されたねじには,JIS B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質―第 1
部:ボルト,ねじ及び植込みボルト)は適用しない。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,IDT(一致している)
,MOD
(修正している)
,NEQ(同等でない)とする。
ISO 7085
:1999,Mechanical and performance requirements of case hardened and tempered metric
thread rolling screws (IDT)
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構
成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その
最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 0209-3
一般用メートルねじ−公差−第 3 部:構造体用ねじの寸法許容差
備考 ISO 965-3:1998 ISO general purpose metric screw threads―Tolerances―Part 3:Deviations for
constructional screw threads
が,この規格と一致している。
JIS B 1044
締結用部品―電気めっき
備考 ISO 4042:1999 Fasteners―Electroplated coatings が,この規格と一致している。
JIS B 1045
締結用部品―水素ぜい化検出のための予荷重試験―平行座面による方法
備考 ISO 15330:1999 Fasteners―Preloading test for the detection of hydrogen embrimement―Parallel
bearing surface method
が,この規格と一致している。
2
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
JIS B 1052
鋼製ナットの機械的性質
備考 ISO 898-2:1992 Mechanical properties of fasteners―Part2:Nuts with specified proof load values
―Coarse thread からの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 2244
ビッカース硬さ試験―試験方法
備考 ISO 6507-1:1997 Metallic materials―Vickers hardness test Part 1:Test method からの引用事項
は,この規格の該当事項と同等である
ISO 5954
:1998 Cold-reduced carbon steel sheet according to hardness requirements
3.
材料 スレッドローリングねじは,冷間圧造加工及び表面硬化を施すのに適する鋼を用いて製造しな
ければならない。
表 1 の化学成分は,参考である。
表 1 化学成分
化学成分
% (m/m)
分析
C M
n
溶鋼
0.15
〜 0.25
0.70
〜 1.65
チェック
0.13
〜 0.27
0.64
〜 1.71
備考 ボロン含有量は,非有効ボロンがチタニウム及び/又はアルミニウムの添
加によって制御される条件で,0.005 %まで許容する。
4.
機械的性質
4.1
概要 機械的性質及び試験方法の箇条の概要を,表 2 に示す。
表 2 機械的性質
特 性
特性の箇条/表
試験方法の箇条
心部硬さ
4.3 5.1
表面硬さ
4.3 5.2
硬化層深さ
4.4
及び
表 4
5.3
ねじり強さ
4.5
及び
表 3
5.4
じん性
4.6 5.5
ねじ込み性
4.7
及び
表 3
5.6
ぜい性
4.8 5.7
再焼戻し後の心部硬さ
4.9 5.8
引張破壊荷重
4.10
及び
表 3
5.9
3
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
4.2
熱処理 スレッドローリングねじはには,表 3 に示す機械的性質及び性能の要求事項に適合するよ
うに浸炭焼入焼戻しを施す。ただし,焼戻し温度は 340 ℃以上とする。
表 3 機械的性質及び性能の要求事項
ねじの呼び径
mm
破壊トルク
最小
N・m
ねじ込みトルク
最大
N・m
引張破壊荷重(
1
)
最小
N
2
0.5
0.3
1 940
2.5
1.2
0.6
3 150
3
2.1
1.1
4 680
3.5
3.4
1.7
6 300
4
4.9
2.5
8 170
5
10.0
5.0
13 200
6
17.0
8.5
18 700
8
42.0
21.0
34 000
10
85.0
43.0
53 900
12
150.0
75.0
78 400
注(
1
)
引っ張り破壊荷重の最小値は、参考である。
4.3
硬さ 心部硬さは,290 HV10〜370 HV10,表面硬さは,最小 450 HV0.3 とする。
4.4
硬化層深さ 硬化層深さは,表 4 による。
表 4 硬化層深さ
単位 mm
ねじの呼び径
硬化層深さ
最小
最大
2
及び 2.5 0.04
0.12
3
及び 3.5 0.05
0.18
4
及び 5 0.10 0.25
6
及び 8 0.15 0.28
10
及び 12 0.15
0.32
4.5
破壊トルク 破壊トルクの最小値は,5.4 によって試験したとき,表 3 の規定を満足しなければなら
ない。
なお,破壊は,固定具に固定されたねじ部で発生してはならない。
4.6
じん性 5.5 で規定する試験方法によって,頭部座面とねじの軸線に垂直な平面との間に角度 7°の
永久変形を与えたとき,頭部と円筒部との付け根で破壊が生じてはならない。割れが第 1 ねじ山に生じて
も,頭部が折れなければ,この試験に合格したものとする。
4.7
ねじ山の成形能力 スレッドローリングねじは,倍率 10 倍で見たとき,ねじ山それ自身の永久変形
なしに,5.6 で規定する試験方法によって試験用鋼板にはまり合うねじ山が成形できなければならない。ね
じ込み試験の間,ねじ込みトルクは
表 3 に規定する最大値を超えてはならない。
スレッドローリングねじによって試験用鋼板に成形されたねじ山は,JIS B 0209-3 の公差域クラス 6h の
ねじ山をもつねじ部品に適用することができ,更に,JIS B 1052 の強度区分 8 による保証荷重試験に耐え
なければならない。
4
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
ししし
測定位置
4.8
ぜい化 スレッドローリングねじに電気めっきを施した場合には,水素ぜい化による破壊の危険が
ある。そのため,ぜい化に関係する工程が管理されていることを保証する JIS B 1045 の
平行座面による
方法
によって,水素ぜい化を検出する試験を工程検査に導入するものとする。ぜい化が発見されたなら
ば,製造工程の変更が必要である。
電気めっきを施す場合には,JIS B 1044 に従った水素ぜい化除去処理を行うものとする。
参考 ぜい化の危険を避けるために,例えば,ISO 10683 による非電解液を用いる亜鉛フレーク皮膜
を選ぶのがよい。
4.9
再焼戻し後の心部硬さ 5.8 で規定する試験手順によって試験したとき,再焼戻し後の心部硬さは,
ビッカース硬さの値で 20 ポイント以上低下してはならない。
4.10
引張破壊荷重 ねじの長さが 12 mm 又はねじの呼び径の 3 倍以上のねじに対する引張試験は,受渡
当事者間の合意によって行ってもよい。
参考 表 3 の最小引張破壊荷重は,参考値。
5.
試験方法
5.1
心部硬さ試験 心部硬さは,ねじの先端から十分離れた平行ねじ部を,軸線に対して直角に切断し
た横断面の谷底と軸心とのほぼ中間の位置で測定する。硬さ試験は,JIS Z 2244 によって行う。
5.2
表面硬さ試験 日常の管理(硬化層深さ及びねじの幾何学的形状が許す場合)を目的とする場合は,
表面硬さは,JIS Z 2244 によるビッカース硬さ試験で行い,端面,軸部又は頭部を測定する(
図 1 参照)。
硬さ測定は,皮膜を除去した後,その面で行う。
測定位置
測定位置
図 1 表面硬さの測定位置
判定を目的とする場合には,
呼び径 4 mm 以上のねじに対して HV0.1 のビッカース硬さ試験機を用いる。
この場合,測定は適切に準備された長さ方向の横断面のねじ山形状の試験片の表面から少なくとも 0.05
mm
離れたところで行う。ねじの呼び径が 4 mm 未満のものに対する試験条件は,受渡当事者間で合意さ
れていなければならない。
5
B 1060
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5.3
硬化層深さ試験 硬化層深さは,心部硬さの実測値よりビッカース硬さ(HV0.3)の値で 30 ポイン
ト大きい値に対する表面から垂直な距離とする。
判定を目的とする場合には,正しく用意された金属顕微鏡試験片を用いて,HV0.3 のビッカース硬さを
測定する(
図 2 参照)。
a
:ねじ山形状全体が浸炭されていない場合
図 2 硬化層深さの測定個所
5.4
ねじり試験 供試ねじは,固定具の外側に完全ねじ山を二山以上出し,かつ,ねじの先端部を除く
完全ねじ山が二山以上固定具に適切な方法で確実に固定する(
図 3 参照)。
校正された適切なトルク測定装置によって,ねじが破壊するまでトルクを加える。破壊を引き起こすの
に要したトルクは,破壊トルクとして記録し,
表 3 に規定する最小破壊トルクに等しいか又は大きくなけ
ればならない。
1
:半割りめねじ付きインサート
図 3 ねじり試験装置
5.5
じん性試験 供試ねじを,呼び径が 6 mm 未満のものに対しては,おねじの外径より 0.05 mm 大き
い直径,呼び径が 6〜12 mm のものに対しては,おねじの外径より 0.1 mm 大きい直径のドリル穴をもつ硬
化されたくさびブロック,又は他の適切な装置に挿入し,その後ねじの頭部に軸方向の圧縮荷重を作用さ
せる(
図 4 参照)。負荷は,頭部座面がねじの軸に垂直な平面に対して,永久に角度 7°曲げられるまで続
けなければならない。
この試験は,皿頭のねじには適用しない。
備考 一般的な試験方法は,適切なハンマによる一回,又は数回の打撃によって角度 7°の永久変形
測定位置
6
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
を与える。
1
:くさびブロック
2
:圧縮荷重
図 4 じん性試験
5.6
ねじ込み試験 ねじ込み試験は,鋼へのねじ山の成形能力を明らかにするものである。
供試ねじは,任意の形状のねじ先のねじ山を除いて,平行ねじの 1 ピッチ以上が試験用鋼板(
表 5 参照)
を通過するまでねじ込まなければならない。
ねじ山の成形は,次の軸方向の力を加えることによって始める。
ねじの呼び径が 5 mm 以下の場合 F
max
=50 N
ねじの呼び径が 5 mm を超える場合 F
max
=100 N
判定を目的とする場合には,ねじ込み回転速度は,0.5 s
-1
(30 r.p.m.)を超えてはならない。
この試験中に発生する最大トルク値は,ねじ込みトルクとする。
潤滑は,規定のトルクを達成するために施してもよい。
試験用鋼板は,硬さ 140 HV30〜180 HV30 の低炭素鋼とする。試験用鋼板の厚さは,ねじの呼び径に等
しくする。試験用鋼板の穴径は,
表 5 による。
表 5 試験用鋼板の板厚及び穴径
単位 mm
ねじの呼び径 2 2.5 3.0 3.5 4 5 6 8 10 12
板厚 2
2.5
3
3.5
4
5
6
8
10
12
最大 1.825
2.275 2.775
3.18 3.68 4.53 5.43 7.336 9.236
11.143
穴径
最小 1.800
2.250 2.750
3.15 3.65 4.50 5.40 7.300 9.200
11.100
備考 ISO 5954 による圧延平板の板厚公差。
5.7
ぜい化試験 ぜい化検出のための試験は,JIS B 1045 による。
5.8
再焼戻し試験 温度 330 ℃で 1 時間の再焼戻しを行い,再焼戻しの前と後とでそれぞれねじの心部
硬さを 3 か所測定し,その平均値の差がビッカース硬さの値で 20 ポイントの差があってはならない。
この試験は,疑義が生じた場合の判定試験で,強制ではない。
7
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)
5.9
引張試験 供試ねじは,最少6山に引張荷重が作用するように引張試験機に取り付け,ねじが破壊
するまで軸方向に荷重を加える。試験速度は,無負荷時のクロスヘッド速度で,25 mm/min を超えてはな
らない。試験機の試験片保持具は,試験片に横方向の力が作用しないように自動調心形にするのがよい。
ねじの引張破壊荷重は,ねじの破壊までに発生する最大荷重である。この試験の要求事項に合格するため
には,破壊は軸部又はねじ山で生じてもよいが,頭部と軸部との付け根で生じてはならない。
6.
トルクレンチ ねじり試験及びねじ込み試験に使用するトルクレンチは,指示トルクが±3 %以内の
精度をもつものとする。
トルクレンチの代わりに,同等な精度のトルク測定器をもつ動力装置を用いてもよい。
疑義が生じた場合の判定目的に対しては,手動式トルクレンチを用いる。
7.
表示
7.1
記号 浸炭焼入焼戻しを施したスレッドローリングねじに対する表示記号は, -0- とする。
7.2
製品表示 浸炭焼入焼戻しを施したスレッドローリングねじは,7.1 で規定する表示記号を凹形又は
凸形で施す。
この表示は,ねじの呼び径 5 mm 以上の六角頭のねじ及びヘクサロビュラ頭のねじに対して必ず施さな
ければならない。
なお,表示は,なるべく頭部に施す。
当事者間で合意されるなら,同一の表示を他の種類の浸炭焼入焼戻しを施したスレッドローリングねじ
に対しても使用する。
7.3
製造業者識別記号の表示 製造業者の識別記号の表示は,表示記号の表示が要求されるすべての製
品に対して施さなければならない。
参 考 文 献
[1]
JIS B 1051
炭素綱及び合金鋼製締結用部品の機械的性質―第 1 部:ボルト,ねじ及び植込みボルト
備考 ISO 898-1:1999,Mechanical properties of fasteners made of carbon steel and alloy steel―Part 1:
Bolts, screws and studs
が,この規格と一致している。
[2]
ISO 10683:2000,Fasteners―Non-electrolytically applied zinc flake coatings
8
B 1060
:2003 (ISO 7085:1999)