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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

B 0152-1997 

クラッチ及びブレーキ用語 

Clutches and brakes−Vocabulary 

1. 適用範囲 この規格は,クラッチ及びブレーキの基本的用語とそれらの定義について規定する。 

2. 用語の分類 クラッチ及びブレーキ用語の分類は,次による。 

(1) 種類に関する用語 

(2) 部品用語 

(3) 作動用語 

(4) 性能用語 

3. 用語・定義 用語及び定義は,次による。 

なお,参考のために慣用語及び対応英語を示す。 

(1) 種類に関する用語 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

1001 

クラッチ 

同心軸上にある駆動側,被動側間において動力の伝
達・遮断を行う機能をもつ機械要素。 

clutch 

1101 

機械クラッチ 

主として機械的作動によって機能を発揮するクラッ
チ。 

mechanical clutch 

1111 

かみあいクラ
ッチ 

機械的かみあいによって係合を行うクラッチ。 

positive clutch 

1112 

歯車クラッチ 

外歯歯車と内歯歯車とによって係合を行うかみあい
クラッチ(付図1参照)。 

gear clutch 

1113 

ツースクラッ
チ 

相対する円筒端面にある多数の山形の歯部によって
係合を行うかみあいクラッチ(付図2参照)。 

歯形クラッチ, 
歯付クラッチ 

(multiple) tooth 

clutch 

1114 

ジョークラッ
チ 

相対する円筒端面にある角形形状,放射状などの凹
凸部によって係合を行うかみあいクラッチ(付図3
参照)。 

ドッグクラッ
チ 

jaw clutch 

1121 

ワンウェイク
ラッチ 

一定方向にだけ動力を伝達するクラッチ。 

追越しクラッ
チ,フリーホイ
ールクラッチ 

one way clutch, 
over running clutch, 
free wheeling clutch 

1131 

摩擦クラッチ 

摩擦力によって係合を行うクラッチ。 

friction clutch 

1132 

ディスククラ
ッチ 

係合面が円板形状の摩擦クラッチ。 

disc clutch 

1133 

ドラムクラッ
チ 

係合面が円筒形状の摩擦クラッチ。 

drum clutch 

1134 

円すいクラッ
チ 

係合面が円すい形状の摩擦クラッチ(付図4参照)。  

cone clutch 

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B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

1141 

遠心クラッチ 

遠心力を利用して係合するクラッチ(付図5参照)。  

centrifugal clutch 

1201 

電磁クラッチ 

主として電磁作動によって機能を発揮するクラッチ。 

electromagnetic clutch 

1311 

油圧クラッチ 

主として油圧作動によって機能を発揮するクラッ
チ。 

hydraulic clutch, 
oil hydraulic clutch 

1321 

空気圧クラッ
チ 

主として空気圧作動によって機能を発揮するクラッ
チ。 

エアクラッチ 

pneumatic clutch, 
air clutch 

1331 

真空クラッチ 

空気の負圧によって機能を発揮するクラッチ。 

vacuum clutch 

1911 

単板クラッチ 

摩擦面が1枚のクラッチ。 

single disc clutch 

1912 

多板クラッチ 

摩擦面が2枚以上のクラッチ(付図6参照)。 

multiple disc clutch 
(multi-disc clutch) 

1913 

複板クラッチ 

クラッチ板が1枚で摩擦面が2面のクラッチ。 

double face 

single-disc clutch 

2001 

ブレーキ 

運動体と静止体との相互作用によって運動体を減
速・停止し,又は停止状態に保持する機能をもつ機
械要素。 

brake 

2101 

機械ブレーキ 

主として機械的作動によって機能を発揮するブレー
キ。 

mechanical brake 

2121 

摩擦ブレーキ 

摩擦力によって機能を発揮するブレーキ。 

friction brake 

2122 

ディスクブレ
ーキ 

係合面が円板形状の摩擦ブレーキ(付図7参照)。 

disc brake 

2123 

ドラムブレー
キ 

係合面が円筒形状の摩擦ブレーキ(付図8参照)。 

drum brake 

2124 

円すいブレー
キ 

係合面が円すい形状の摩擦ブレーキ。 

cone brake 

2127 

バンドブレー
キ 

円筒外周面にブレーキバンドを巻き付けて機能を発
揮するドラムブレーキ。 

帯ブレーキ 

band brake, 
strap brake 

2201 

電磁ブレーキ 

電磁作動によって機能を発揮するブレーキ。 

electromagnetic 

brake 

2311 

油圧ブレーキ 

主として油圧作動によって機能を発揮するブレー
キ。 

hydraulic brake, 
oil hydraulic brake 

2321 

空気圧ブレー
キ 

主として空気作動によって機能を発揮するブレー
キ。 

エアブレーキ 

pneumatic brake, 
air brake 

2331 

真空ブレーキ 

空気の負圧によって機能を発揮するブレーキ。 

vacuum brake 

2911 

単板ブレーキ 

摩擦面が1枚のブレーキ。 

single disc brake 

2912 

多板ブレーキ 

摩擦面が2枚以上のブレーキ。 

multiple disc brake 
(multi-disc brake) 

2913 

複板ブレーキ 

ブレーキ板が1枚で摩擦面が2面のブレーキ。 

double face 

single-disc brake 

2921 

リターダ 

ブレーキ装置の補助として,自動車などの速度を減
少又は制限するために,連続的に使用する装置。 

retarder 

(2) 部品用語 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

5001 

クラッチ板 

クラッチの一構成要素で,相対運動面間でトルクを
伝達する部品。 

clutch plate 

5002 

ブレーキ板 

ブレーキの一構成要素で,相対運動面間でトルクを
伝達する部品。 

brake plate 

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B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

5003 

摩擦パッド 

ディスククラッチ及びディスクブレーキの一構成部
品で,摩擦力を発生させるためにディスクに押し付
ける摩擦片。 

lining pad, 
friction pad 

5011 

クラッチディ
スク 

ディスククラッチの一構成部品で,係合作用をさせ
るための摩擦円板。 

clutch disc 

5012 

クラッチフェ
ーシング 

ディスククラッチで,円板面又は円筒端面に張り付
けて使用する摩擦材部品。 

clutch facing 

5013 

クラッチライ
ニング 

クラッチで,円周面に張り付けて使用する摩擦材部
品。 

clutch lining 

5014 

ラップスプリ
ング 

同心軸上にある入力ハブ及び出力ハブと組み合わせ
てトルクの伝達・遮断をするばね。 

wrap spring 

5015 

スプリングク
ラッチ 

ワンウェイクラッチの一種で,コイル状ばねの巻き
込みによって一方向だけにトルクを伝達させるクラ
ッチ(付図9参照)。 

coil spring clutch 

5016 

スプラグ 

ワンウェイクラッチで,トルクを伝達させるために
一方向だけにくい込み作用をさせる繭形部品(付図
10参照)。 

sprag 

5021 

ブレーキディ
スク 

ディスクブレーキの一構成部品で,制動作用をさせ
るための摩擦円板。 

brake disc 

5022 

ブレーキドラ
ム 

ドラムブレーキで,制動作用をさせるためにブレー
キシューを押し付ける円筒状の部品。 

ブレーキホイ
ール,ブレー
キ胴 

brake drum 

5023 

ブレーキシュ
ー 

ドラムブレーキで,制動作用をさせるためにブレー
キドラムに押し付ける部品。 

brake shoe 

5024 

ブレーキバン
ド 

バンドブレーキで,制動作用をさせるためにブレー
キドラムに巻き付ける帯状の部品。 

ブレーキ帯 

brake band 

5025 

ブレーキライ
ニング 

ブレーキで,摩擦面に使用する摩擦材部品。 

brake lining 

5026 

キャリパー 

ディスクブレーキで,ディスク両面に摩擦材を押し
付ける機能をもつ部品。 

caliper 

5031 

自動すきま調
整機構 

摩耗による摩擦面間のすきまの増大を自動的に補正
する機構。オートアジャスター,オートギャップア
ジャスター,オートスラックアジャスターとも呼ぶ。 

autogap mechanism, 
auto-slack adjuster 

(3) 作動用語 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

6001 

係合 
(けいごう) 

クラッチの作動によって,被動側と駆動側との間に
トルクの伝達があること。滑り状態も含み,滑りの
ない連結より広い意味を表す。 

engaging of clutch 

6002 

連結 

クラッチの作動によって,被動側が駆動側に同期す
ること。 

interlocking of clutch 
(slipless engaging) 

6003 

係合過程 

クラッチの操作開始から係合が完了する(定常状態
に達する)までの過程。 

engaging process 

6004 

緩衝係合 

クラッチで,駆動側から被動側にトルクを徐々に伝
えて,被動側が衝撃なく係合すること。 

shockless engaging 

of clutch 

6005 

緩衝連結 

クラッチで,駆動側から被動側にトルクを徐々に伝
えて,被動側が衝撃なく連結すること。 

shockless 

interlocking of 
clutch 

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B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

6006 

静止係合 

クラッチを静止状態で連結すること。 

stationary 

engagement of 
clutch 

6007 

回転係合 

クラッチの被動側,駆動側間を相対速度のある状態
でトルクを伝達すること。 

rotating engagement 

of clutch 

6011 

制動 

ブレーキを作動状態にすること。 

braking 

6012 

緩衝制動 

ブレーキで,制動対象物を衝撃なく減速又は停止さ
せること。 

shockless braking 

6021 

正作動 

操作入力を加えたときクラッチ又はブレーキが作動
すること。 

positive actuation 

6022 

負作動 

操作入力を除いたときクラッチ又はブレーキが作動
すること。 

逆作動 

negative actuation 

6023 

乾式作動 

クラッチ及びブレーキの摩擦面が乾燥状態で作動す
ること。 

actuation under a dry 

condition 

6024 

湿式作動 

クラッチ及びブレーキの摩擦面が油浴など潤滑状態
で作動すること。 

actuation under a wet 

oilling condition 

6025 

連続すべり作
動 

クラッチ及びブレーキを連続してすべらせながら作
動させること。 

slip service 

6031 

オンブレーキ 

ブレーキの正作動。 

on-braking 

6032 

オフブレーキ 

ブレーキの負作動。 

off-braking 

6033 

アンチロッ
ク・ブレーキ 

制動時に,車輪と路面間の摩擦力低下を引き起こす
車輪の回転停止を自動制御によって回避しながら,
安定した制動を行うこと。 

anti-lock braking 

6041 

トルク干渉 

2個のクラッチ又はブレーキを併用して作動させる
とき,その減衰トルクと発生トルクが相互に干渉し
合い,係合時間,制動時間などに影響を及ぼす現象。 

torque wrap 

(4) 性能用語 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

7001 

摩耗率 

摩擦材の耐摩耗性能を評価するための一指標であっ
て,ある条件の下に摩擦運動をさせたときの比摩耗
量(単位垂直荷重当たり,単位すべり距離当たりの
摩耗量)。 

wear rate of friction 

material 

7002 

静摩擦トルク 

摩擦クラッチ及び摩擦ブレーキで,摩擦面が静摩擦
状態で発生する摩擦トルク。 

static friction torque 

7003 

動摩擦トルク 

摩擦クラッチ及び摩擦ブレーキで,摩擦面が動摩擦
状態で発生する摩擦トルク。 

dynamic friction 

torque 

7004 

ドラグトルク 

クラッチ及びブレーキを作動させていないときに生
じる摩擦トルク。 

つれまわりト
ルク,空転ト
ルク 

drag torque 

7005 

静摩擦係数 

相対運動を行っていない接触面に生じる摩擦力と法
線作用力との比。 

coefficient of static 

friction 

7006 

動摩擦係数 

相対運動を行っている接触面に生じる摩擦力と法線
作用力との比。 

coefficient of 

dynamic friction 

7007 

定格トルク 

クラッチ及びブレーキに保証されているトルクの使
用限度。 

rated torque 

7008 

許容摩擦面圧
力 

摩擦材の摩擦面に生じる法線作用力で,使用上許さ
れる単位面積当たりの力。 

allowable normal 

(surface) pressure 

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B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

参考 

慣用語 

対応英語 

for friction 
material 

7009 

許容スリップ
工率 

連続すべり作動をさせたときの許容される仕事率。 

allowable continuous 

heat dissipation 

7010 

熱放散能力 

クラッチ及びブレーキで,摩擦仕事などによって発
生する熱を放散する能力。 

heat dissipation 

capacity 

7011 

有効摩擦半径 

ディスククラッチ,ディスクブレーキなどで,摩擦
力が一点に集中して作用したとみなしたときの作用
点の半径方向位置。 

effective friction 

radius 

7012 

すべり速度 

すべり状態にあるクラッチ及びブレーキの作動面に
おける相対速度。 

slipping velocity 

7013 

ドラグ 

ドラグトルクによって,クラッチでは被動側が回転
し,ブレーキでは制動がかかること。 

空転,つれま
わり,引きず
り 

drag 

7014 

シャダー 

摩擦クラッチ及び摩擦ブレーキで,その摩擦面と係
合した系が摩擦特性と振動特性との相互作用によっ
て,振動・音響を発生すること。 

チャター,お
どり,鳴き,
ジャダー 

shudder, 
grabbing chatter 

7015 

鳴き 

クラッチ又はブレーキで,摩擦面で発生する振動音。  

squeal 

7021 

係合時間 

クラッチを作動させてからトルク伝達が定常状態に
達するまでの時間。産業機械分野では連結時間とも
いう。 

全立ち上がり
時間 

total build-up time, 
engaging time of 

clutch 

7022 

制動時間 

ブレーキを作動させてから運動を停止するまでの時
間,又は減速を完了するまでの時間。 

braking time 

7023 

解放時間 

作動を止めるための操作入力がクラッチ又はブレー
キに入ってから係合又は制動が解かれるまでの時
間。 

release time 

7031 

許容係合仕事 

摩擦クラッチで,駆動側と被動側とを連結するとき
に許容される摩擦仕事。 

allowable engaging 

energy, 

allowable engaging 

work 

7041 

制動力 

制動対象物を減速・停止し,又は停止状態の位置に
保持する力。 

braking force 

7042 

制動減速度 

ブレーキの作動による運動体の減速度。 

braking deceleration 

7043 

フェード 

ブレーキの効力が摩擦面の摩擦熱又は浸水によって
一時的に低下すること。 

fade 

7044 

リカバリ 

フェードで低下した効力が回復すること。 

recovery 

7045 

許容制動仕事 

摩擦ブレーキで,制動するときに許容される摩擦仕
事。 

allowable braking 

energy, 

allowable braking 

work 

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B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考 作動動作 

番号 

用語 

定義 

対応英語 

クラッチをつなぐ 

クラッチを連結状態にすること。 

to engage 

クラッチを切る 

クラッチを連結状態から解くこと。 

to disengage 

かみあわせる 

かみあいクラッチを連結状態にすること。 

to engage the positive clutch 

ブレーキを掛ける 

ブレーキを作動状態にすること。 

to apply the brake 

ブレーキを外す 

ブレーキの作動をやめること。ブレーキを切ると
もいう。 

to take off the brake 

ブレーキを緩める 

ブレーキに作動している力を緩めること。 

to release the brake 

付図1 歯車クラッチ 

付図2 ツースクラッチ 

付図3 ジョークラッチ 

付図4 円すいクラッチ 

付図5 遠心クラッチ 

付図6 多板クラッチ 

付図7 ディスクブレーキ 

付図8 ドラムブレーキ 

付図9 スプリングクラッチ 

付図10 スプラグ 

B 0152-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

クラッチ及びブレーキ用語改正原案調査作成分科会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

中 原 綱 光 

東京工業大学工学部 

(幹事) 

○ 京 極 啓 史 

東京工業大学工学部 

二 瓶 光 弥 

工業技術院機械技術研究所 

○ 大 島 清 治 

工業技術院標準部 

○ 中 込 常 雄 

中込技術士事務所 

山 川 新 二 

工学院大学 

(小委員会長) 

○ 山 本 隆 司 

東京農工大学工学部 

○ 蓼 沼 愛一郎 

小倉クラッチ株式会社 

田 中 敏 伸 

神鋼電機株式会社 

○ 中 村 秀 樹 

新潟コンバーター株式会社 

松 本 堯 之 

エヌエスケー・ワーナー株式会社 

○ 田 口 末 光 

曙ブレーキ工業株式会社 

○ 沢 辺 達 郎 

株式会社コマツ 

熊 谷 則 道 

財団法人鉄道総合技術研究所 

○ 山 田 良 秋 

株式会社日立製作所土浦工場 

山 城 義 治 

株式会社東芝府中工場 

岩 澤 輝 男 

東芝機械株式会社 

○ 加 藤 芳 章 

日産自動車株式会社 

渡 辺 一 夫 

株式会社本田技術研究所 

井 上 光 弘 

日立化成工業株式会社 

(事務局) 

中 嶌   勉 

社団法人日本機械学会 

○印は,小委員会委員を兼ねる。 

文責 山本 隆司(東京農工大学工学部)