A 6204:2011
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 種類······························································································································· 3
5 品質······························································································································· 4
5.1 性能 ···························································································································· 4
5.2 塩化物イオン(CI−)量 ·································································································· 6
5.3 全アルカリ量 ················································································································ 6
6 試験方法························································································································· 6
6.1 一般事項 ······················································································································ 6
6.2 コンクリート試験 ·········································································································· 6
6.3 塩化物イオン(Cl−)量 ·································································································· 11
6.4 全アルカリ量 ··············································································································· 12
7 検査······························································································································ 12
7.1 一般事項 ····················································································································· 12
7.2 形式評価試験 ··············································································································· 12
7.3 性能確認試験 ··············································································································· 12
8 表示······························································································································ 13
9 報告······························································································································ 13
附属書A(規定)化学混和剤中に含まれる塩化物イオン(Cl−)量の試験方法 ································· 15
附属書B(規定)化学混和剤中に含まれるアルカリ量の試験方法 ·················································· 18
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,コンクリート用化
学混和剤協会(JCAA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改
正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格であ
る。これによって,JIS A 6204:2006は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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コンクリート用化学混和剤
Chemical admixtures for concrete
1
適用範囲
この規格は,コンクリート用化学混和剤(以下,化学混和剤という。)として用いるAE剤,高性能減水
剤,硬化促進剤,減水剤,AE減水剤,高性能AE減水剤及び流動化剤について規定する。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS A 0203 コンクリート用語
JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法
JIS A 1103 骨材の微粒分量試験方法
JIS A 1105 細骨材の有機不純物試験方法
JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法
JIS A 1109 細骨材の密度及び吸水率試験方法
JIS A 1110 粗骨材の密度及び吸水率試験方法
JIS A 1115 フレッシュコンクリートの試料採取方法
JIS A 1118 フレッシュコンクリートの空気量の容積による試験方法(容積方法)
JIS A 1119 ミキサで練り混ぜたコンクリート中のモルタルの差及び粗骨材量の差の試験方法
JIS A 1122 硫酸ナトリウムによる骨材の安定性試験方法
JIS A 1123 コンクリートのブリーディング試験方法
JIS A 1128 フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法
JIS A 1129-1 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第1部:コンパレータ方法
JIS A 1129-2 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第2部:コンタクトゲージ方法
JIS A 1129-3 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第3部:ダイヤルゲージ方法
JIS A 1132 コンクリート強度試験用供試体の作り方
JIS A 1137 骨材中に含まれる粘土塊量の試験方法
JIS A 1138 試験室におけるコンクリートの作り方
JIS A 1145 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)
JIS A 1146 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)
JIS A 1147 コンクリートの凝結時間試験方法
JIS A 1148 コンクリートの凍結融解試験方法
2
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JIS A 5002 構造用軽量コンクリート骨材
JIS A 5005 コンクリート用砕石及び砕砂
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0127 イオンクロマトグラフ分析通則
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS R 5210 ポルトランドセメント
JIS Z 8801-1 試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS A 0203によるほか,次による。
3.1
化学混和剤
主として,その界面活性作用及び/又は水和調整作用によって,コンクリートの諸性質を改善するため
に用いる混和剤。
3.2
AE剤
コンクリートなどの中に,多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ,ワーカビリティー及び耐凍
害性を向上させる化学混和剤。
3.3
高性能減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を大幅に減少させるか,又は単位水量を変えることなくスラ
ンプを大幅に増加させる化学混和剤。
3.4
硬化促進剤
セメントの水和を早め,初期材齢の強度を大きくする化学混和剤。
3.5
減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。
3.6
AE減水剤
空気連行性能をもち,所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。
3.7
高性能AE減水剤
空気連行性能をもち,AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をもつ化学混和剤。
3.8
流動化剤
あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し,これをかくはんすることによって,その流動性を増
大させることを主たる目的とする化学混和剤。
3
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3.9
標準形
化学混和剤の種類で,コンクリートの凝結時間をほとんど変化させないもの。
3.10
遅延形
化学混和剤の種類で,コンクリートの凝結を遅延させるもの。
3.11
促進形
化学混和剤の種類で,コンクリートの凝結及び初期強度の発現を促進させるもの。
3.12
基準コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に基準とする化学混和剤を用いないコンクリート。ただし,流動化剤
の性能を試験する場合にはAE剤を使用する。
3.13
試験コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に試験の対象とする化学混和剤を用いたコンクリート。
3.14
形式評価試験
製品を開発した当初に性能確認として行う全項目試験。
3.15
性能確認試験
形式評価試験で確認された性能と同等の性能をもつことを定期的に確認するために,その一部項目につ
いて行う試験。
4
種類
化学混和剤の種類は,性能によって表1,塩化物イオン(Cl−)量によって表2のとおり,それぞれ区分
する。
表1−化学混和剤の性能による区分
AE剤
−
高性能減水剤
−
硬化促進剤
−
減水剤
標準形
遅延形
促進形
AE減水剤
標準形
遅延形
促進形
高性能AE減水剤
標準形
遅延形
流動化剤
標準形
遅延形
4
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表2−化学混和剤の塩化物イオン(Cl−)量による区分
単位 kg/m3
種類
塩化物イオン(Cl−)量
I種
0.02以下
II種
0.02を超え0.20以下
III種
0.20を超え0.60以下
5
品質
5.1
性能
化学混和剤の性能は6.2によって試験を行ったとき,表3に適合しなければならない。
5
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表3−化学混和剤の性能
項目
AE剤
高性能
減水剤
硬化
促進剤
減水剤
AE減水剤
高性能AE減水剤
流動化剤
標準形
遅延形
促進形
標準形
遅延形
促進形
標準形
遅延形
標準形
遅延形
減水率
%
6以上 12以上
−
4以上
4以上
4以上 10以上 10以上
8以上 18以上 18以上
−
−
ブリーディング量の比 %
−
−
−
−
100以下
−
70以下 70以下 70以下 60以下 70以下
−
−
ブリーディング量の差 cm3/cm2
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
0.10以下 0.20以下
凝結時間の
差 分
始発
−60〜
+60
+90
以下
−
−60〜
+90
+60〜
+210
+30
以下
−60〜
+90
+60〜
+210
+30
以下
−60〜
+90
+60〜
+210
−60〜
+90
+60〜
+210
終結
−60〜
+60
+90
以下
−
−60〜
+90
0〜
+210
0以下
−60〜
+90
0〜
+210
0以下
−60〜
+90
0〜
+210
−60〜
+90
0〜
+210
圧縮強度比
%
材齢1日
−
−
120以上
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
材齢2日 (5 ℃)
−
−
130以上
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
材齢7日
95以上 115以上
−
110以上 110以上 115以上 110以上 110以上 115以上 125以上 125以上 90以上 90以上
材齢28日
90以上 110以上 90以上 110以上 110以上 110以上 110以上 110以上 110以上 115以上 115以上 90以上 90以上
長さ変化比
%
120以下 110以下 130以下 120以下 120以下 120以下 120以下 120以下 120以下 110以下 110以下 120以下 120以下
凍結融解に対する抵抗性
(相対動弾性係数 %)
60以上
−
−
−
−
−
60以上 60以上 60以上 60以上 60以上 60以上 60以上
経時変化量 スランプ cm
−
−
−
−
−
−
−
−
−
6.0以下 6.0以下 4.0以下 4.0以下
空気量
%
−
−
−
−
−
−
−
−
−
±1.5
以内
±1.5
以内
±1.0
以内
±1.0
以内
2
A
6
2
0
4
:
2
0
11
6
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5.2
塩化物イオン(CI−)量
塩化物イオン量は,6.3によってコンクリート中の量を求め,その値が表2に適合しなければならない。
5.3
全アルカリ量
全アルカリ量は,6.4によってコンクリート中の量を求め,その値が0.30 kg/m3以下でなければならない。
6
試験方法
6.1
一般事項
試験は,形式評価試験と性能確認試験とに区分し,それぞれの試験項目は,表6による。
6.2
コンクリート試験
6.2.1
試験に用いる材料
コンクリート試験に用いる材料は,次による。
a) セメント セメントは,任意に選んだ三つの異なる生産者のJIS R 5210に規定する普通ポルトランド
セメントを等量ずつ使用する。
b) 骨材 骨材は,清浄・堅硬で耐久性があり,ごみ,泥,有機不純物,塩化物などを有害量含まないも
ので,粗骨材は砕石,細骨材は砂とし,表4に示す品質をもつものとする。
骨材の粒度は,大小粒が適度に混合しているもので,その粒度は,表5に示す範囲とする。
表4−骨材の品質
骨材の
種類
絶乾密度a)
g/cm3
吸水率a)
%
粒形判定
実積率b)
%
粘土塊量c)
%
微粒分量d)
%
有機不純
物e)
安定性
(5回)f)
%
塩化物
(NaClと
して)g) %
アルカリ
シリカ反
応性h)
粗骨材
2.5以上
2.0以下
57以上
0.25以下
1.0以下
−
10以下
−
無害
細骨材
2.5以上
3.0以下
−
1.0以下
2.0以下
標準色液
より淡い
8以下
0.02以下
無害
注a) JIS A 1109又はJIS A 1110による。
b) JIS A 5005の6.6(粒形判定実積率試験)による。
c) JIS A 1137による。
d) JIS A 1103による。
e) JIS A 1105による。
f) JIS A 1122による。
g) JIS A 5002の5.5(塩化物)の規定による。ただし,試料の量は1 000 gとする。
h) JIS A 1145又はJIS A 1146による。
表5−骨材の粒度
骨材の種類
ふるいを通るものの質量分率 %
ふるいの呼び寸法a) mm
25
20
15
10
5
2.5
1.2
0.6
0.3
0.15
粗骨材
100
90〜100
55〜75
25〜45
0〜5
0〜2
−
−
−
−
細骨材
−
−
−
−
100
85〜100
60〜80
30〜50
15〜25
2〜10
注a) ふるいの呼び寸法は,それぞれJIS Z 8801-1に規定する金属製網ふるいの公称目開き26.5 mm,19.0 mm,
16.0 mm,9.5 mm,4.75 mm,2.36 mm,1.18 mm,600 μm,300 μm及び150 μmに対応する。
c) 水 練混ぜに用いる水は,上水道水とする。
6.2.2
配合
配合は,基準コンクリート及び試験コンクリートについて,次のa)〜e)による。
7
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a) 単位セメント量
1) AE剤,硬化促進剤,減水剤又はAE減水剤を用いたコンクリートの単位セメント量は,300 kg/m3
とする。
2) 高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いたコンクリートの単位セメント量は,350 kg/m3とする。
3) 流動化剤の基準コンクリートの単位セメント量は,320 kg/m3とする。
b) 単位水量
1) AE剤,高性能減水剤,減水剤又はAE減水剤を用いたコンクリートの単位水量は,練上がり時のス
ランプが8±1 cmとなる量とする。
2) 硬化促進剤の基準コンクリートの単位水量は,練上がり時のスランプが8±1 cmとなる量とし,試
験コンクリートも同一の量とする。
3) 高性能AE減水剤を用いたコンクリートの単位水量は,練上がり時のスランプが18±1 cmとなる量
とする。
4) 流動化剤の基準コンクリートの単位水量は,練上がり15分後におけるスランプが8±1 cmとなる量
とする。
c) 1 m3当たりの化学混和剤の使用量 1 m3当たりの化学混和剤の使用量は,製造会社の推奨する量を参
考にして決める。
d) 空気量
1) 流動化剤以外の基準コンクリートの空気量は,2.0 %以下とする。
2) 高性能減水剤,硬化促進剤又は減水剤を用いたコンクリートの空気量は,基準コンクリートの空気
量に1.0 %を加えたものを超えてはならない。
3) AE剤,AE減水剤又は高性能AE減水剤を用いたコンクリートの空気量は,基準コンクリートの空
気量に3.0 %を加えたものに対し0.5 %を超える差があってはならない。
なお,AE減水剤又は高性能AE減水剤を用いたコンクリートの空気量が上記の範囲を外れる場合
は,適切な空気量調整剤を加えて調整する。
注記 通常は,製造会社の推奨する空気量調整剤を使用する。
4) 流動化剤の基準コンクリートの空気量は,練上がり15分後において空気量が(4.5±0.5)%となる
ように定める。
e) 細骨材率
1) 流動化剤以外の基準コンクリートの細骨材率は,40〜50 %の範囲で良好なワーカビリティーが得ら
れる値とする。
2) AE剤又はAE減水剤を用いたコンクリートの細骨材率は,基準コンクリートの細骨材率から1〜3 %
を減じた値とする。
3) 高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いたコンクリートの細骨材率は,基準コンクリートの細骨
材率に2 %を増減した範囲内の値とする。
4) 硬化促進剤を用いたコンクリートの細骨材率は,基準コンクリートの細骨材率と同一の値とする。
5) 減水剤を用いたコンクリートの細骨材率は,基準コンクリートの細骨材率から0〜1 %を減じた値と
する。
6) 流動化剤の基準コンクリートの細骨材率は,40〜50 %の範囲で,流動化後,良好なワーカビリティ
ーが得られる値とする。
8
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6.2.3
コンクリートの作り方
コンクリートは,JIS A 1138によって,温度が20±3 ℃,湿度が60 %以上に保たれた試験室内で作る。
6.2.4
練混ぜ
練混ぜは,次による。
a) ミキサ 練混ぜに用いるミキサは,JIS A 1119によって試験し,強制練りミキサでは1.5分間,重力式
ミキサでは3分間練り混ぜたとき,コンクリート中のモルタルの単位容積質量差が0.8 %以下,コン
クリート中の単位粗骨材量の差が5 %以下となるものでなければならない。
b) 化学混和剤の使用方法 流動化剤以外の化学混和剤は,あらかじめ練混ぜ水に混入し,ミキサに投入
する。また,流動化剤の基準コンクリートは,AE剤をあらかじめ練混ぜ水に混入しミキサに投入す
る。
c) 練混ぜ時間 コンクリートは,全ての材料をミキサに投入した後,強制練りミキサでは1.5分間,重
力式ミキサでは3分間練り混ぜる。
d) 練混ぜ量 コンクリートの練混ぜ量は,化学混和剤の種類及び試験項目に応じてその必要量とし,基
準コンクリート及び試験コンクリートの練混ぜ量は等量とする。ただし,高性能AE減水剤を用いた
コンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量の測定に用いる試験コンクリートの練混ぜ量は,100
Lとする。流動化剤の基準コンクリート及び試験コンクリートの練混ぜ量も,それぞれ100 Lとする。
e) 練混ぜのバッチ数 試験に用いるコンクリートは,1バッチ練り混ぜるものとする。ただし,高性能
AE減水剤又は流動化剤を用いたコンクリートは2バッチ練り混ぜ,この中の1バッチを,それぞれ
6.2.7 h)又はi)のスランプ及び空気量の経時変化量の試験に用いる。
f)
練上がり温度 コンクリートの練上がり温度は,20±3 ℃とする。
6.2.5
コンクリートの流動化
コンクリートの流動化は,次による。
a) 流動化剤の添加量 流動化剤の添加量は,基準コンクリートを流動化した直後のスランプが18±1 cm
となるように定める。
b) 試験コンクリートの空気量 流動化直後の空気量は,(4.5±0.5)%とする。
c) 流動化の方法 基準コンクリートの練上がり15分後に(これまでの間は,試料はミキサ内に静置し,
ミキサの開口部を湿った布などで覆っておく。),所定量の流動化剤をミキサ内のコンクリート表面に
散布し,強制練りミキサでは30秒,重力式ミキサでは60秒かくはんして,基準コンクリートを流動
化する。
6.2.6
コンクリート試料
コンクリートの試料採取方法は,JIS A 1115による。ただし,流動化剤を用いたコンクリートは次によ
る。
a) 基準コンクリートは,練上がり15分後に,強制練りミキサでは15秒間,重力式ミキサでは30秒間練
り混ぜた後,また,試験コンクリートは,流動化直後に,それぞれバッチの全量を練り板上に排出し,
一様になるまでショベルで練り直した後,直ちに試験に供する。
b) 流動化15分後のスランプ及び空気量の試験のための試料は,流動化直後の測定終了後,残りのコンク
リートを練り板上に残しておき,流動化15分後に一様になるまでショベルで練り直した後,直ちに試
験に供する。
6.2.7
コンクリートの試験
コンクリートの試験方法は,次による。
9
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なお,スランプ,空気量及びそれらの経時変化量の試験,ブリーディング量及び凝結時間の試験のため
の試料の採取,並びに供試体の作製は,温度20±3 ℃,湿度60 %以上に保たれた試験室内で行う。
a) スランプ スランプの試験は,JIS A 1101によって,1バッチのコンクリートについて1回行う。
b) 空気量 空気量の試験は,JIS A 1128又はJIS A 1118によって,1バッチのコンクリートについて1
回行う。
c) ブリーディング量 ブリーディング量の試験は,JIS A 1123によって,温度20±2 ℃に保たれた試験
室内で行う。ブリーディング量の試験は,1バッチのコンクリートについて行う。
d) 凝結時間 凝結時間の試験は,JIS A 1147によって,温度20±2 ℃に保たれた試験室内で行う。凝結
時間の試験は,1バッチのコンクリートについて1回行う。
e) 圧縮強度 圧縮強度の試験は,JIS A 1108によってAE剤,高性能減水剤,減水剤,AE減水剤,高性
能AE減水剤及び流動化剤については7日及び28日の各材齢で行う。供試体は,JIS A 1132によって
作製し,型枠を取り外すまでは温度20±2 ℃の室内で乾燥しないように養生し,型枠を取り外した後
は温度20±2 ℃の水中又は霧室で強度試験を行うまで養生する。ただし,硬化促進剤については1日,
2日及び28日の各材齢で行う。材齢1日及び28日の供試体の養生方法は上記と同様に取り扱うが,
材齢2日の供試体は,JIS A 1132によって作製し,直ちに5±2 ℃の室内に移し,乾燥しない状態で2
日間養生を行う。
供試体の数は,各材齢について3個とし,結果の平均値をその種類のコンクリートの圧縮強度とす
る。
f)
長さ変化 長さ変化の試験は,JIS A 1129-1〜JIS A 1129-3のいずれかによる。ただし,供試体は,型
枠を取り外すまでは温度20±2 ℃の室内で乾燥しないように養生し,成形後約24時間で型枠を取り
外した後,温度20±2 ℃の水中で材齢が7日になるまで養生する。基長の測定は,材齢7日で行い,
供試体を水中から取り出した直後に測定する。基長測定後,温度20±2 ℃,湿度(60±5)%の室内
に保存し,長さ変化を測定する。供試体の数は,1種類のコンクリートについて3個とし,保存期間6
か月における試験結果の平均値を,その種類のコンクリートの長さ変化率とする。
g) 凍結融解に対する抵抗性 凍結融解に対する抵抗性の試験は,JIS A 1148による。ただし,試験方法
は,水中凍結融解試験方法(A法)による。ここで,供試体は,型枠を取り外すまでは温度20±2 ℃
の室内で乾燥しないように養生し,成形後約24時間で型枠を取り外した後,温度20±2 ℃の水中で,
材齢が28日になるまで養生した後,直ちに凍結融解試験を開始する。供試体の数は,1種類のコンク
リートについて3個とする。凍結融解の繰返し300サイクルにおける試験結果の平均値を,その種類
のコンクリートの相対動弾性係数とする。
h) 高性能AE減水剤を用いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量 高性能AE減水剤を用
いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量の試験は,次の1)〜3)によって行う。
1) 6.2.4によって練り混ぜたコンクリートを練り板に排出して練り直した後,直ちにスランプ及び空気
量の試験をそれぞれ1回行う。
2) 残りのコンクリートを公称容量100 Lの重力式ミキサ1) に入れ,軸を水平から20〜30度に傾斜させ
た状態で,毎分2回転の速度で回転させながらかくはんを続ける。
注1) ミキサの内面は,1)のスランプの試験に用いたコンクリートを用い,あらかじめモルタル
が薄く付着した状態としておく。
3) 試験コンクリートの練混ぜ開始から60分後にコンクリートを練り板に排出し,練り直した後,再び
スランプ及び空気量の試験をそれぞれ1回行う。
10
A 6204:2011
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
i)
流動化剤を用いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量 流動化剤を用いたコンクリー
トのスランプ及び空気量の経時変化量試験は,次の1)〜3)によって行う。
1) 6.2.6 a)によって,試験コンクリートのスランプ及び空気量の試験を行う。
2) 6.2.6 b)によって,流動化15分後にスランプ及び空気量の試験を行う。
3) スランプ及び空気量の試験は,1バッチのコンクリートについてそれぞれ1回行う。
6.2.8
計算
試験結果の計算は,次による。
a) 減水率 減水率は,試験コンクリート及び基準コンクリートの単位水量から次の式によって算出し,
算出した値を四捨五入によって整数に丸める。
100
1
2
1
r
×
−
=
W
W
W
W
ここに,
Wr: 減水率(%)
W1: 基準コンクリートの単位水量(kg/m3)
W2: 試験コンクリートの単位水量(kg/m3)
b) ブリーディング量の比 ブリーディング量の比は,6.2.7 c)によって求めたブリーディング量から次の
式によって算出し,算出した値を四捨五入によって整数に丸める。
100
1
2×
=BB
B
ここに,
B: ブリーディング量の比(%)
B2: 6.2.7 c)によって求めた試験コンクリートのブリーディング量
(cm3/cm2)
B1: 6.2.7 c)によって求めた基準コンクリートのブリーディング量
(cm3/cm2)
c) ブリーディング量の差 流動化剤を用いたコンクリートのブリーディング量の差は,6.2.7 c)によって
求めたブリーディング量から次の式によって算出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下2桁
に丸める。
ブリーディング量の差=B4−B3
ここに,
B4: 6.2.7 c)によって求めた試験コンクリートのブリーディング量
(cm3/cm2)
B3: 6.2.7 c)によって求めた基準コンクリートのブリーディング量
(cm3/cm2)
d) 凝結時間の差 凝結時間の差は,6.2.7 d)によって求めた始発及び終結時間から次の式によって算出
し,算出した値を整数で表す。
T=T2−T1
ここに,
T: 凝結時間の差(分)
T2: 6.2.7 d)によって求めた試験コンクリートの始発時間又は終結
時間(分)
T1: 6.2.7 d)によって求めた基準コンクリートの始発時間又は終結
時間(分)
e) 圧縮強度比 圧縮強度比は,6.2.7 e)によって求めた圧縮強度から次の式によって算出し,算出した値
を四捨五入によって整数に丸める。
100
1
2×
=SS
S
11
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ここに,
S: 圧縮強度比(%)
S2: 6.2.7 e)によって求めた試験コンクリートの圧縮強度(N/mm2)
S1: 6.2.7 e)によって求めた基準コンクリートの圧縮強度(N/mm2)
f)
長さ変化比 長さ変化比は,6.2.7 f)によって求めた長さ変化率から次の式によって算出し,算出した
値を四捨五入によって整数に丸める。
100
1
2×
=LL
L
ここに,
L: 長さ変化比(%)
L2: 6.2.7 f)によって求めた試験コンクリートの長さ変化率(%)
L1: 6.2.7 f)によって求めた基準コンクリートの長さ変化率(%)
g) 凍結融解に対する抵抗性 凍結融解に対する抵抗性は,6.2.7 g)によって求めた相対動弾性係数から次
の式によって算出し,算出した値を四捨五入によって整数に丸める。
100
2
0
2
300
×
=
f
f
P
ここに,
P: 凍結融解300サイクルにおける相対動弾性係数(%)
f300: 6.2.7 g)によって求めた凍結融解300サイクルにおけるたわみ
振動の一次共鳴振動数(Hz)
f0: 6.2.7 g)によって求めた凍結融解0サイクルにおけるたわみ振
動の一次共鳴振動数(Hz)
h) 高性能AE減水剤を用いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量 高性能AE減水剤を用
いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量は,6.2.7 h)によって求めたスランプ及び空気量
から次の式によって算出する。
Sd=S0−S60
Ad=A0−A60
ここに,
Sd: スランプの経時変化量(cm)
Ad: 空気量の経時変化量(%)
S0: 6.2.7 h)によって求めた練混ぜ直後のスランプ(cm)
S60: 6.2.7 h)によって求めた練混ぜ60分後のスランプ(cm)
A0: 6.2.7 h)によって求めた練混ぜ直後の空気量(%)
A60: 6.2.7 h)によって求めた練混ぜ60分後の空気量(%)
i)
流動化剤を用いたコンクリートのスランプ及び空気量の経時変化量 流動化剤を用いたコンクリー
トのスランプ及び空気量の経時変化量は,6.2.7 i)によって求めたスランプ及び空気量から次の式によ
って算出する。
Sd=S0−S15
Ad=A0−A15
ここに,
Sd: スランプの経時変化量(cm)
Ad: 空気量の経時変化量(%)
S0: 6.2.7 i)によって求めた流動化直後のスランプ(cm)
S15: 6.2.7 i)によって求めた流動化15分後のスランプ(cm)
A0: 6.2.7 i)によって求めた流動化直後の空気量(%)
A15: 6.2.7 i)によって求めた流動化15分後の空気量(%)
6.3
塩化物イオン(Cl−)量
塩化物イオン量は,附属書Aによって化学混和剤中の塩化物イオン量を求め,次の式によってコンクリ
ート中の化学混和剤の塩化物イオン量として算出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下2桁に丸
める。
12
A 6204:2011
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100
a
a
m
−
−
×
=
Cl
m
Cl
ここに, Cl−m: コンクリート中の化学混和剤の塩化物イオン量(kg/m3)
ma: 6.2.2 c)に規定する1 m3当たりの化学混和剤の使用量(kg/m3)
Cl−a: 化学混和剤中の塩化物イオン量(%)
6.4
全アルカリ量
全アルカリ量は,附属書Bによって化学混和剤中の全アルカリ量2) を求め,次の式によってコンクリー
ト中の化学混和剤の全アルカリ量を算出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下2桁に丸める。
100
a
a
m
R
m
R
×
=
ここに,
Rm: コンクリート中の化学混和剤の全アルカリ量(kg/m3)
ma: 6.2.2 c)に規定する1 m3当たりの化学混和剤の使用量(kg/m3)
Ra: 化学混和剤中の全アルカリ量(%)
注2) B.3.5に示すNa2Oeqとする。
7
検査
7.1
一般事項
検査は,合理的な抜取検査によって試料を採取し,箇条6によって試験を行ったとき,箇条5に適合す
るものを合格とする。
7.2
形式評価試験
形式評価試験は,製品の開発当初に,表6に示す形式評価試験項目(○印及び△印)について行う。
7.3
性能確認試験
性能確認試験は,6か月ごとに1回,表6に示す性能確認試験項目(○印)について行う。ただし,圧
縮強度試験は,1年に1回とする。
13
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表6−化学混和剤の種類及び試験項目
項目
AE剤 高性能
減水剤
硬化
促進剤
減水剤
AE減水剤
高性能AE
減水剤
流動化剤
標準形 遅延形 促進形 標準形 遅延形 促進形 標準形 遅延形 標準形 遅延形
減水率
○
○
−
○
○
○
○
○
○
○
○
−
−
ブリーディング量の比
−
−
−
−
△
−
△
△
△
△
△
−
−
ブリーディング量の差
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
△
△
凝結時
間の差
始発
○
○
−
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
終結
○
○
−
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
圧縮強
度比
材齢1日
−
−
○
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
材齢2日
(5 ℃)
−
−
△
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
材齢7日
○
○
−
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
材齢28日
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
長さ変化比
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
凍結融解に対する抵抗
性
△
−
−
−
−
−
△
△
△
△
△
△
△
経時変
化量
スランプ
−
−
−
−
−
−
−
−
−
○
○
○
○
空気量
−
−
−
−
−
−
−
−
−
○
○
○
○
塩化物イオン量
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
全アルカリ量
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
注記 ○:形式評価試験及び性能確認試験で行う項目 △:形式評価試験で行う項目
8
表示
この規格の全ての要求事項に適合した化学混和剤の容器又は送り状には,次の事項を明記する。
a) 名称(商品名)
b) 日本工業規格の番号及び種類[性能による区分及び塩化物イオン(Cl−)量による区分]
例 JIS A 6204 AE減水剤標準形(I種)
c) 正味質量又は容積
d) 製造会社名又はその略号
e) 製造年月又はその略号
f)
取扱い上の注意事項
9
報告
報告書には,次の事項を記載する。報告書の標準様式は,表7による。
なお,用紙の大きさは,日本工業規格A列4番(210 mm×297 mm)とする。
a) コンクリートの試験結果
b) 塩化物イオン(Cl−)量及び全アルカリ量
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表7−報告書の標準様式
年 月〜 年 月度 コンクリート用化学混和剤(JIS A 6204)試験結果報告書
殿 製造会社名
種 類
商品名
1. コンクリートの試験結果
項目
JIS A 6204による
規定値
形式評価試験値
性能確認試験値
フ
レ
ッ
シ
ュ
コ
ン
ク
リ
ー
ト
減水率
%
ブリーディング量の比
%
−
ブリーディング量の差
cm3/cm2
−
凝結時間の差 分 始発
終結
経時変化量
スランプ cm
空気量
%
硬
化
コ
ン
ク
リ
ー
ト
圧縮強度比 %
材齢 1日
材齢 2日(5 ℃)
−
材齢 7日
材齢28日
長さ変化比
%
−
凍結融解に対する抵抗性
(相対動弾性係数 %)
−
注記1 1 m3当たりの化学混和剤の使用量
形式評価試験 kg/m3,性能確認試験 kg/m3
注記2 性能確認試験は6か月ごとに1回実施し,この表に表示している試験値は, 年 月の試験結
果である。ただし,圧縮強度の性能確認試験は1年に1回実施し,この表に表示している試験値は,
年 月の試験結果である。
注記3
この表に表示している形式評価試験は, 年 月に で実施した試験結果である。
2. 塩化物イオン(Cl−)量及び全アルカリ量
項目
JIS A 6204に
よる規定値
形式評価
試験値
性能確認試験
化学混和剤
中の含有量
1m3当たりの化学
混和剤の使用量
試験値
塩化物イオン(Cl−)量
kg/m3
%
kg/m3
kg/m3
全アルカリ量
0.30 kg/m3以下
kg/m3
%
kg/m3
kg/m3
注記1 性能確認試験は6か月ごとに1回実施し,この表に表示している試験値は, 年 月の試験結
果である。
注記2 この表に表示している形式評価試験は, 年 月に で実施した試験結果である。
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附属書A
(規定)
化学混和剤中に含まれる塩化物イオン(Cl−)量の試験方法
A.1 一般事項
この附属書は,化学混和剤中に含まれる塩化物イオン量をイオンクロマトグラフ法及び電位差滴定法に
よって分析する試験方法について規定する。分析方法について共通する一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0113
及びJIS K 0127による。
電位差滴定法による場合は,共存イオンとして臭素イオン,よう素イオン,チオシアン酸イオン,硫化
物イオン,シアンイオン又は還元性物質が共存するとそれらが妨害し,正確な塩化物イオン量として定量
できないため,それらを多量に含んだ試料の分析についてはイオンクロマトグラフ法による。
A.2 試料
試料は1 kg又は1 Lとし,分析する化学混和剤を代表するものとする。
A.3 塩化物イオン(Cl−)量の分析方法
A.3.1 イオンクロマトグラフ法
高速液体クロマトグラフ分析法の一種で,イオン交換樹脂を充塡した分離カラムに試料溶液を通して
個々のイオンに分離し,分離したイオンを電気的に検出する。
A.3.1.1 イオンクロマトグラフ
イオンクロマトグラフは,次による。
a) 検出器 電気伝導度検出器。
b) 溶離液 使用するイオンクロマトグラフ用陰イオン交換樹脂に適した溶離液。
c) カラム用管 内径3〜6 mm,長さ5〜30 cmのガラス,エポキシ樹脂又はステンレス製の管。
d) カラム充塡物 ポリスチレン,シリカ又はポリアクリレートを基材としたイオンクロマトグラフ用陰
イオン交換樹脂。
e) 送液ポンプ JIS K 0127の4.2(各構成部)のb)[送液部(ポンプ)]による。
A.3.1.2 試薬
試薬は,次によって調製する。
a) 水 JIS K 0121の7.1(水)による。
b) 塩化物イオン標準原液(Cl−として0.5 mg/mL) 塩化ナトリウム(標準試薬)をあらかじめ550〜600 ℃
で40〜50分間加熱し,硫酸デシケーター中で放冷した後,0.824 gをとり,水に溶かして全量フラス
コ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。
この標準原液の塩化物イオン濃度は,次の式によって算出する。
100
1
607
.0
)
(
824
.0
×
×
×
=
−
S
NaCl
Cl
ここに,
Cl−: 標準原液の塩化物イオン濃度(mg/mL)
0.824: 塩化ナトリウム(標準試薬)の採取量(g)
NaCl(S): 標準試薬の純度(%)
0.607: 塩素の原子量(35.453)を塩化ナトリウムの分子量
16
A 6204:2011
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(58.443)で除して求めた値
c) 塩化物イオン標準液(Cl−として0.01 mg/mL) 塩化物イオン標準原液(Cl−として0.5 mg/mL)20 mL
を全量フラスコ1 000 mLにとり,水を標線まで加える。
d) 溶離液及び除去液 使用するイオンクロマトグラフに必要な溶液を調製する。
A.3.1.3 操作
試料約1 gを0.1 mgまで正しくはかり,水に溶かして全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで
加える。この液を更に薄めて,最終的に塩化物イオン濃度が0.2〜5.0 mg/Lの範囲となるように調製して試
料溶液とする。
上記試料溶液をイオンクロマトグラフに注入し,クロマトグラムを得る。得られたクロマトグラムのピ
ーク面積(又はピーク高さ)を測定する。
A.3.1.4 検量線の作成
塩化物イオン標準液(Cl−として0.01 mg/mL)を使って,塩化物イオン濃度0.1〜5.0 mg/Lの範囲に調製
した検量線作成用溶液で,A.3.1.3と同様な操作を行い,クロマトグラムのピーク面積(又はピーク高さ)
と塩化物イオン濃度との関係線を作成して検量線とする。
A.3.1.5 計算
A.3.1.4で作成した検量線から試料溶液中の塩化物イオン濃度を求め,試料中の塩化物イオン量を,次の
式によって算出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下2桁に丸める。
100
2
Cl
1
Cl
a
×
=
−
C
C
Cl
ここに, Cl−a: 化学混和剤中の塩化物イオン量(%)
CCl1: 検量線から読み取った試料溶液中の塩化物イオン濃度(mg/L)
CCl2: 測定時の試料濃度(mg/L)
A.3.2 電位差滴定法
試料溶液を硝酸で酸性にして,塩化物イオン選択性電極又は銀電極を指示電極とした電位差滴定装置を
用い,硝酸銀標準液で滴定する。
A.3.2.1 電位差滴定装置
電位差滴定装置は,塩化物イオン選択性電極又は銀電極を指示電極とし,液絡部に硝酸カリウム溶液を
用いたものとする。
A.3.2.2 試薬
試薬は,次によって調製する。
a) 水 A.3.1.2 a)による。
b) 0.1 mol/L塩化ナトリウム標準液 塩化ナトリウム(標準試薬)をA.3.1.2 b)と同様に処理して5.845 g
とり,水に溶かして全量1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。この標準液のファクター(fna)
は,次の式によって算出する。
100
0.1
443
.
58
)
(
845
.5
na
×
×
×
=
S
NaCl
f
c) 0.1 mol/L硝酸銀標準液 硝酸銀試薬約17 gを水に溶かして1 000 mLとし,0.1 mol/L塩化ナトリウム
標準液を用いて標定を行い,ファクター(fag)を求めておく。
d) 硝酸 硝酸試薬をそのまま用いる。
17
A 6204:2011
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A.3.2.3 操作
試料0.5〜1 gを0.1 mgまで正しくはかり,約50 mLの水及び2 mLの硝酸を加えて溶解する。これに0.1
mol/L塩化ナトリウム標準液を正確に5 mL加え,さらに,水を加えて液量を約150 mLとして,電位差滴
定装置によって0.1 mol/L硝酸銀標準液で滴定する。
A.3.2.4 計算
次の式によって試料中の塩化物イオン量を算出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下2桁に丸
める。
1000
73
.
17
545
.3
na
ag
ag
a
×
×
−
×
×
=
−
M
f
V
f
Cl
ここに, Cl−a: 化学混和剤中の塩化物イオン量(%)
fna: 0.1 mol/L塩化ナトリウム標準液のファクター
fag: 0.1 mol/L硝酸銀標準液のファクター
Vag: 0.1 mol/L硝酸銀標準液の滴定量(mL)
M: 試料採取量(g)
18
A 6204:2011
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附属書B
(規定)
化学混和剤中に含まれるアルカリ量の試験方法
B.1
一般事項
この附属書は,化学混和剤中の全アルカリ量(Na2O+0.658×K2O)を求めるために,その混和剤中のナ
トリウム量及びカリウム量を原子吸光法によって分析する試験方法について規定する。分析方法について
共通する一般事項は,JIS K 0050及びJIS K 0121による。
B.2
試料
試料は,1 kg又は1 Lとし,分析する化学混和剤を代表するものとする。
B.3
全アルカリ量の分析
B.3.1 原子吸光分析装置
原子吸光分析装置は,JIS K 0121の5.(原子吸光分析)に規定するフレーム原子化方式による。
B.3.2 試薬
試薬は,次によって調製する。
a) 水 JIS K 0121の7.1(水)による。
b) アルカリ標準原液(Na2O,K2Oとして1 mg/mL) 塩化ナトリウム(標準試薬)を500〜650 ℃で40
〜50分間保った後,硫酸デシケーター中で放冷し,また,塩化カリウム(標準試薬)を110 ℃で2〜
3日間保った後,硫酸デシケーター中で放冷する。塩化ナトリウム1.886 g及び塩化カリウム1.583 g
を水に溶解し,全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。これをポリエチレン製の容
器に保存する。
c) アルカリ調合原液(Na2O,K2Oとして10〜100 mg/L) アルカリ標準原液(Na2O,K2Oとして1 mg/mL)
から10〜100 mLを段階的に分取し,全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,標線まで加える。これをポ
リエチレン製の容器に保存する。
d) カルシウム原液(CaOとして10 mg/mL) 炭酸カルシウム(アルカリ分析用試薬)17.8 gを水100 mL
に分散させる。これをかき混ぜながら塩酸(1+1)100 mLを加えて溶解し,全量フラスコ1 000 mL
に移し入れ,水を標線まで加える。これをポリエチレン製の容器に保存する。
e) 酸化カルシウム溶液(0.1 mgCaO/mL) カルシウム原液(CaOとして10 mg/mL)から10 mLを正確
に分取し,全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。これをポリエチレン製の容器に
保存する。
f)
トリエタノールアミン(1+1) トリエタノールアミン試薬50 gを水に溶解して100 gとし,ポリエチ
レン製の容器に保存する。
g) 水酸化カリウム溶液(3 mol/L) 水酸化カリウム200 gを水に溶かして1 000 mLとする。
h) カルシウム用指示薬 2-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシ-4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-3-ナフトエ酸0.5 g
と硫酸カリウム50 gとを混合粉砕して均一にし,褐色瓶に保存する。
i)
0.02 mol/L EDTA標準液 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム7.5 gを適量の水に溶かして,全量フ
ラスコ1 000 mLに入れ,水を標線まで加えて振り混ぜ,ポリエチレン製の容器に保存する。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
B.3.3 操作
操作は,次による。
a) 試料約1 gを0.1 mgまで正しくはかり,水でうすめて全量フラスコ250 mLに移し入れ,水を標線ま
で加える。この溶液を試料溶液(A)とする3),4)。
注3) 試料が完全に溶解していない場合には,JIS P 3801に規定する5種Bのろ紙を用いてろ過し,
残さ(渣)を水で8回洗浄し,ろ液と洗液とを合わせて全量フラスコ250 mLに移し入れ,水
を標線まで加える。
4) 試料に多量のカルシウムが存在する場合は,c)の操作を行い,試料中のカルシウム量を測定
する。
b) 試料溶液(A)から分取し,Na2O,K2Oとして0.4〜4 mg/Lの範囲となるように水でうすめる。これ
を試料溶液(B)とし,原子吸光分析装置によってナトリウム(589.0 nm)及びカリウム(766.5 nm)
における吸光度を測定する。
c) 試料溶液(A)から20 mLを分取してビーカー300 mLに入れ,水を加えて100 mLとし,トリエタノ
ールアミン(1+1)を2 mL加える。水酸化カリウム溶液(3 mol/L)を加えて,pH値を12.7〜13.2に
調製する。2〜3分放置した後,カルシウム用指示薬0.1 gを加え,タングステンランプ照明器に載せ
て0.02 mol/L EDTA標準液で滴定し,赤紫色から赤みが全く消えて青色を呈するときを終点とする。
試料溶液(A)に含まれている酸化カルシウムの量は,次の式によって算出する。
250
000
1
20
250
ca
ed
×
×
×
=
E
V
CaO
ここに, CaO: 酸化カルシウムの含有量(mg/L)
Ved: EDTA標準液の滴定量(mL)
Eca: EDTA標準液1 mL当たりの酸化カルシウム相当量(mg)
B.3.4 検量線の作成
アルカリ調合原液10 mLを全量フラスコ250 mLに移し入れ,水を標線まで加える5)。この溶液につい
て,原子吸光分析装置によって,ナトリウム(589.0 nm)及びカリウム(766.5 nm)における吸光度を測
定する。
注5) 試料中にカルシウムが多量に存在する場合,B.3.3 b)の試料溶液(B)中の酸化カルシウム量と
なるようにB.3.4の全量フラスコ250 mLに酸化カルシウム溶液を添加した後,水を標線まで加
える。
添加する酸化カルシウム溶液の量は,次の式から求める。
ca
ca
1
4
1
C
n
CaO
V
×
×
=
ここに,
Vca: 添加する酸化カルシウム溶液の量(mL)
CaO: B.3.3 c)で求めた酸化カルシウムの含有量(mg/L)
n: 試料溶液(B)の希釈倍率
Cca: 酸化カルシウム溶液の濃度(CaO,mg/mL)
B.3.5 計算
B.3.4で作成した検量線から,試料溶液中の酸化ナトリウム及び酸化カリウム量を求める。試料中の酸化
ナトリウム及び酸化カリウムの含有率は,次の式によって算出し,算出した値を四捨五入によって小数点
以下2桁に丸める。
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100
b
b
2
2
×
=CB
O
K
O
Na
又は
ここに, Na2O又はK2O: 酸化ナトリウム又は酸化カリウムの含有率(%)
Bb: 試料溶液(B)中の酸化ナトリウム又は酸化カリウ
ムの量(mg/L)
Cb: 試料溶液(B)の濃度(mg/L)
求めた酸化ナトリウム及び酸化カリウムの含有量によって全アルカリ量(Na2Oeq)を次の式によって算
出し,算出した値を四捨五入によって小数点以下1桁に丸める。
Na2Oeq=Na2O+0.658×K2O
ここに, Na2Oeq: 全アルカリ量(%)
Na2O: 酸化ナトリウム含有量(%)
K2O: 酸化カリウム含有量(%)