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A 4305

:2016

(1)

目  次

ページ

1

  適用範囲  

1

2

  引用規格  

1

3

  用語及び定義  

1

4

  量記号及び単位記号  

3

5

  種類 

3

6

  性能 

4

6.1

  次第ぎき非常止め装置の場合  

4

6.2

  上下 段方式の非常止め装置の場合  

4

6.3

  早ぎき非常止め装置の場合  

4

6.4

  スラックロープ式非常止め装置の場合  

4

7

  構造 

5

7.1

  次第ぎき非常止め装置の場合  

5

7.2

  上下 段方式の非常止め装置の場合  

6

7.3

  早ぎき非常止め装置の場合  

6

7.4

  スラックロープ式非常止め装置の場合  

7

8

  試験方法  

9

8.1

  測定機器の精度  

9

8.2

  次第ぎき非常止め装置の場合  

9

8.3

  上下 段方式の非常止め装置の場合  

12

8.4

  早ぎき非常止め装置の場合  

12

8.5

  スラックロープ式非常止め装置の場合  

15

9

  検査 

16

9.1

  検査方法  

16

9.2

  検査成績書  

16

10

  表示  

18


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まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,一般社団法人日本エレベーター協会(JEA)

及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出

があり,日本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


   

日本工業規格

JIS

 A

4305

:2016

エレベータ用非常止め装置

Safety gear for elevators

適用範囲 

この規格は,トラクション式エレベータ,巻胴式エレベータ及び油圧式エレベータに設置する非常止め

装置の安全条件について規定する。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 7507

  ノギス

JIS B 7512

  鋼製巻尺

JIS B 7516

  金属製直尺

JIS B 7522

  繊維製巻尺

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。

3.1 

非常止め装置(safety gear)

かご,釣合おもり又はバランスウェイトに設置され,かご,釣合おもり又はバランスウェイトの速度が

異常に増大したときに,ガイドレールをつかみ,かご,釣合おもり又はバランスウェイトを制止させる機

械装置。

3.2 

(非常止め装置の)台座(safety gear block)

制動力を与える機構部品(制動子など)を内側に設けるための枠部材。

3.3 

(非常止め装置の)制動子(safety gear gripping parts)

ガイドレールと接触し,制動する部品。

3.4 

(非常止め装置の)適用速度(maximum permissible speed)

非常止め装置の要求性能を満足できる,かご,釣合おもり又はバランスウェイトの下降速度の最大値。

非常止め装置の作動時点での速度を指し示す。一般的に,定格速度が 45 m/min 以下の場合は 68 m/min 以

下,定格速度が 45 m/min を超える場合は定格速度の 1.4 倍以下に設定する。


2

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3.5 

(非常止め装置の)最大試験質量(maximum test mass)

非常止め装置の要求性能を満足できる制動対象の質量の最大値を確認するために,試験を実施する最大

質量。

3.6 

(非常止め装置の)最小試験質量(minimum test mass)

非常止め装置の要求性能を満足できる制動対象の質量の最小値を確認するために試験を実施する最小質

量。

3.7 

(非常止め装置の)適用質量(permissible mass)

最大試験質量と最小試験質量の範囲内で,製造業者が設定した実際に適用する質量又は質量範囲。非常

止め装置の本体には,この値を表示する。

3.8 

エレベータ(elevator)

建築物などに設けられ,人及び/又は物をかごで運搬するための昇降機で,かごの水平投影面積が 1 m

2

を超え,又はかごの天井の高さが 1.2 m を超えるもの。

注記  “エレベーター”と長音符号を用いて表記される場合もある。

3.9 

トラクション式エレベータ(traction type elevator)

かごと釣合おもりとを主索などで連結して,駆動用綱車にかけ,主索と綱車の溝又はドラム平面との摩

擦力を利用して駆動する方式のエレベータ。

3.10 

巻胴式エレベータ(winding drum type elevator)

かごに主索の一端を緊結し,巻上機の駆動用巻胴で主索を巻き取り,かごを昇降させる方式のエレベー

タ。

3.11 

油圧式エレベータ(hydraulic elevator)

油圧ポンプで発生した圧力油を油圧ジャッキのシリンダに送り,プランジャを伸長させてかごを上昇さ

せ,また,シリンダ内の油をタンクに戻すことによって,かごを下降させる方式のエレベータ。

注記  “油圧エレベータ”ということもある。

3.12 

斜行エレベータ 

昇降路の全域又は一部において傾斜部をもつエレベータ。

3.13 

巻上機(hoisting machine)

モータ,ブレーキ及び駆動用綱車又は巻胴で構成し,主索を巻き上げる装置。

3.14 

釣合おもり(counterweight)

トラクション式エレベータにおいて,主索を介してかごに連結され,その主索を駆動用綱車につるべ状

に掛け,綱車と主索との摩擦によって駆動力(トラクション)を発生させるためのおもり。


3

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3.15 

バランスウェイト(balancing weight)

かごと直接又は綱車を通して連結することでかごの全体質量又は部分質量を打ち消し,かごを駆動する

エネルギーを節約するために使用するおもり。主に巻胴式のエレベータに用いられる。

3.16 

調速機(over speed governor)

かご,釣合おもり又はバランスウェイトの速度が異常に増大したときに,巻上機への動力を自動的に切

り,更に速度が増大したときは,非常止め装置を作動させるための装置。釣合おもり又はバランスウェイ

トに設ける場合は,巻上機への動力を自動的に切る機能がないこともある。

3.17 

ガイドレール(guide rails)

かご,釣合おもり又はバランスウェイトの走行を案内する軌条。

3.18 

かご枠(car frame)

主索及び止め金具,又はつり車とで連結されている,かご室を支える枠(かご室構造の一部の場合もあ

る。

3.19 

かご(car)

人及び/又は物を載せて昇降するもので,かご室,かご枠,床などで構成される搬器。

3.20 

定格速度(rated speed)

かごの定常走行時の設計速度。

3.21 

定格積載量(rated load)

建築基準法で定められた積載荷重を元に設定された許容積載量[単位:キログラム(kg)

。定格積載量

は,かご室内に表示される。

量記号及び単位記号 

この規格で用いるエレベータ速度の単位は,特に規定のない限りメートル毎分(m/min)を用いる。ま

た,自由落下の加速度(標準重力加速度)を g

n

で表し,その値を 1 g

n

=9.8 m/s

2

とする。

種類 

非常止め装置の種類は,構造・機能によって区分し,

表 による。


4

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表 1−種類 

種類

説明

次第ぎき非常止め装置

作動後,徐々に制動力が上昇し,その後一定した制動力を発揮する

ことによって,かご,釣合おもりなどを停止し,保持することがで
きる非常止め装置。

  かご枠などにレール把持部を左右に 1 段設置している。

上下 2 段方式の非常止め装置

かご枠などに左右に設置するレール把持部を上下 2 段に取り付け

て,かご,釣合おもりなどを停止し,保持することができる非常止
め装置。

早ぎき非常止め装置

作動時に制動力を瞬時に作用させ,かご,釣合おもりなどを停止し,
保持することができる非常止め装置。

スラックロープ式非常止め装置

作動時に制動力を瞬時に作用させ,かご,釣合おもりなどを停止し,

保持することができる非常止め装置。

  調速機を用いることなく,かご,釣合おもりなどをつる主索又は
チェーンの全数が切断したときに非常止め装置を作動させる機構

を併せもつ。主索又はチェーンの切断の検知は,任意の 1 本又は全

数をまとめて行う。

性能 

6.1 

次第ぎき非常止め装置の場合 

次第ぎき非常止め装置は,定格積載量を積載したかご,釣合おもり又はバランスウェイトを自由落下さ

せた場合を想定し,8.2 によって試験を行ったとき,次の規定に適合しなければならない。

a)

製造業者が定めた適用速度の最大値において,箇条 10 で規定した適用質量の最大値以上に調整した最

大試験質量,

及び箇条 10 で規定した適用質量の最小値以下に調整した最小試験質量の制動対象を停止

し,保持する能力をもつものとする。

b)

非常止め装置が作動したときの平均減速度は,0.2 g

n

以上 1 g

n

以下とする。ただし,傾斜 63 度以下の

斜行エレベータの場合,非常止め装置が作動したときの水平方向の平均減速度は,0.1  g

n

以上 0.5  g

n

以下とする。

c)

非常止め装置の作動後に,非常止め装置の台座,ばね及び連結装置は,制動性能に影響を生じる有害

な変形及び破損が生じてはならない。

d)

非常止め装置の作動後に復旧を妨げる破損が生じない。

6.2 

上下 段方式の非常止め装置の場合 

上下 2 段方式の非常止め装置は,8.3 によって試験を行ったとき,6.1 の a)d)  の規定に適合しなければ

ならない。

6.3 

早ぎき非常止め装置の場合 

早ぎき非常止め装置は,定格積載量を積載したかご,釣合おもり又はバランスウェイトを自由落下させ

た場合を想定し,次のいずれかの規定に適合しなければならない。

a)  8.4.2

によって求められる最大試験質量が箇条 10 で規定した適用質量の最大値よりも大きい。

b)

製造業者が定めた適用速度の最大値において,8.4.3 の試験を行ったとき,箇条 10 で規定した適用質

量の最大値以上に調整した最大試験質量の制動対象を停止し,保持する能力をもち,かつ,非常止め

装置の作動後に復旧を妨げる破損が生じない。

6.4 

スラックロープ式非常止め装置の場合 

スラックロープ式非常止め装置は,定格積載量を積載したかご,釣合おもり又はバランスウェイトをつ


5

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る主索又はチェーンの全数が切断し,自由落下させた場合を想定し,8.5 によって試験を行ったとき,次の

規定に適合しなければならない。

a)

製造業者が定めた適用速度の最大値において,箇条 10 で規定した適用質量の最大値以上に調整した最

大試験質量の制動対象を停止し,保持する能力をもつか,又は 8.4.2 によって求められる最大試験質量

が箇条 10 で規定した適用質量の最大値よりも大きい。

b)

昇降路におけるかごの位置にかかわらず,確実に作動するものでなければならない。

c)

非常止め装置を作動させる機構部は,製造業者が定めた適用速度の最大値以内で非常止め装置を作動

させなければならない。

d)

非常止め装置の作動後に復旧を妨げる破損が生じてはならない。

構造 

7.1 

次第ぎき非常止め装置の場合 

次第ぎき非常止め装置の構造は,8.2.3 によって試験を行ったとき,次による。

a)

非常止め装置は,調速機ロープと機械的に連結し,調速機ロープに発生する張力によって作動する構

造とする(

図 参照)。

図 1−調速機,非常止め装置及び連結機構部の例 

b)

非常止め装置は,かご枠などの左右に設置するレール把持部と,調速機ロープに発生する張力によっ

て左右のレール把持部を同時に作動させるための機械的な連結機構部で構成する。

c)

連結機構部は,左右のレール把持部の作動タイミングを調整可能な調整部をもつものとする。

d)

レール把持部は,非常止め装置の制動子,制動子に押し付け力を与える弾性体,制動子及び弾性体を

支持する非常止め装置の台座などで構成する。台座に対して相対的に制動子が持ち上げられることで,

ガイドレールに制動子を押し付ける構造とする(

図 参照)。


6

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 a)

  皿ばねを用いた構造例 b)  コイルばねを用いた構造例 c)  字板ばねを用いた構造例 

図 2−次第ぎき非常止め装置レール把持部の構造例 

e)

台座及びばねは,鋳鉄又は鋼製とする。制動子は,鋳鉄,鋼,合金鋼,銅合金,ファインセラミック

ス若しくは炭素材料,又はこれらの複合材料とする。

f)

作動状態の非常止め装置は,かご,釣合おもり又はバランスウェイトを上方向に移動させるだけで開

放し,開放状態を維持できる構造とする。

g)

制動力を調整可能な非常止め装置の場合,調整禁止箇所を明示し,初期調整内容が判別できるような

封印又は合いマークを施した構造とする。例えば,調整後に,位置決め要素と基部材とにまたがるよ

うに塗料などで印を付ける。

7.2 

上下 段方式の非常止め装置の場合 

上下 2 段方式の非常止め装置の構造は,8.3.3 によって試験を行ったとき,次による。

a)  7.1

の a)  及び d)g)  に規定する構造とする。

b)

非常止め装置は,かご枠などの左右に設置するレール把持部を 2 段もち,調速機ロープに発生する張

力によって左右のレール把持部を同時に作動させ,上下のレール把持部を同時,又は下段を先に作動

させるための機械的な連結機構部で構成する。

c)

連結機構部は,左右のレール把持部及び上下のレール把持部の作動タイミングを調整可能な調整部を

もつものとする。

d)

上下のレール把持部は,同等の制動力をもつレール把持部で構成する。制動力の調整機構をもつ場合

は,下段の制動力を大きくしてもよい。

7.3 

早ぎき非常止め装置の場合 

早ぎき非常止め装置の構造は,8.4.4 によって試験を行ったとき,次による。

a)  7.1

の a)c)f)  及び g)  に規定する構造とする。

b)

レール把持部は,非常止め装置の制動子,制動子を支持する非常止め装置の台座などで構成する。台

座に対して相対的に制動子が持ち上げられることでガイドレールに制動子を押し付ける構造とする

図 参照)。

c)

台座は,鋳鉄又は鋼製とする。制動子は,鋳鉄,鋼,合金鋼,銅合金,ファインセラミックス,炭素

材料,又はこれらの複合材料とする。


7

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図 3−早ぎき非常止め装置レール把持部の構造例 

7.4 

スラックロープ式非常止め装置の場合 

スラックロープ式非常止め装置の構造は,8.5.3 によって試験を行ったとき,次による。

なお,スラックロープ式非常止め装置の構成例を

図 4∼図 に示す。

a)

スラックロープ式非常止め装置は,かご枠などの左右に設置するレール把持部,及びかご,釣合おも

り又はバランスウェイトをつる主索又はチェーンの全数が切断したときに非常止め装置を作動させる

機構部で構成する。主索又はチェーンの切断は,任意の 1 本の切断を検知するか,又は全数をまとめ

て検知するものでもよい。

b)

非常止め装置を作動させる機構部は,左右のレール把持部の作動タイミングを調整可能な調整部をも

つものとする。

c)

かご,釣合おもり又はバランスウェイトをつる主索又はチェーンの全数が切断したときに非常止め装

置を作動させる機構部は,主索又はチェーンの張力が減少した場合に作動する機械的な構造とする。

作動力は,ばねなどの弾性体に蓄えられる弾性力を用いる。

d)

レール把持部は,7.1 f)7.1 g)7.3 b)  及び 7.3 c)  に規定する構造とする。

 a)

  通常時 b)  主索切断時 

図 4−油圧エレベータの適用構成例 


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 a)

  通常時 b)  主索切断時 

図 5−釣合おもり用スラックロープ式非常止めの適用構成例 

図 6−速度比 2のロープ式 

エレベータへの適用構成例 

図 7−巻胴式エレベーターへの適用構成例 


9

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図 8−釣合おもり用スラックロープ式非常止め装置の 2

ローピング系の適用構成例 

試験方法 

8.1 

測定機器の精度 

試験には,特に理由のない限り,測定値に対して次の精度をもつ測定機器を用いる。測定値を記載する

桁数は,測定機器の精度に応じた桁数とする。

a)

質量,力,距離,速度:  ±1 %

b)

加速度,減速度:

±2 %

c)

電圧,電流:

±5 %

d)

測定機器,記録装置:0.01 秒ごとに変化する信号を検出できる能力をもつもの

e)

加減速度のカットオフ周波数:30 Hz 以上で測定機器からの出力などに対して適用する。

f)

長さの測定をする場合には,次による。

1)  JIS B 7512

若しくは JIS B 7522 に規定する巻尺又はこれらと同等以上のもの

2)  JIS B 7516

に規定する直尺又はこれと同等以上のもの

3)  JIS B 7507

に規定するノギス又はこれと同等以上のもの

8.2 

次第ぎき非常止め装置の場合 

8.2.1 

試験装置 

試験装置は,次による。試験装置の構成例を

図 に示す。

a)

非常止め装置のレール把持部を設け,試験用おもりを自由落下させ,適用速度の最大値以上で非常止

め装置を作動させることができる装置とする。自由落下させた試験用おもりは,非常止め装置作動ま

での加速時に 0.9 g

n

以上に到達するように,できるだけ低い摩擦でガイドレールで案内される。

b)

自由落下させる試験用おもりには,速度,加速度及び減速度を測定する装置を設ける。ただし,速度,

又は加速度及び減速度を演算によって算出する場合は,速度,又は加速度及び減速度のいずれかを測

定する装置を設ければよい。


10

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図 9−次第ぎき非常止め装置の試験装置の構成例 

8.2.2 

試験手順 

8.2.1

の試験装置を用いて,次の試験手順で試験を 3 回実施する。ただし,2 回は最大試験質量かつ適用

速度の最大値で,1 回は最小試験質量かつ適用速度の最大値で試験を実施する。

a)

非常止め装置のレール把持部を設けた試験用おもりの質量を測定する。

b)  a)

の試験用おもりを自由落下させて,適用速度の最大値で非常止め装置を作動させた後,試験用おも

りが停止し,保持されるか否かを確認する。このとき,試験用おもりが加速を開始する開始点から試


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験用おもりが完全に停止するまでの速度,加速度及び減速度を測定し,検査成績書に記録する。ただ

し,速度,又は加速度及び減速度を演算によって算出する場合は,速度,又は加速度及び減速度のい

ずれかを測定すればよい。

c)

平均減速度を次のいずれかの方法によって求める。

1)

非常止め装置の減速開始点から減速終了点までの時間の,減速度の時間平均値とする。ここで,非

常止め装置の減速開始点は,加速度が 0 m/s

2

となる時点とし,減速終了点は,最初に減速度が 0 m/s

2

になる時点とする(

図 10 参照)。

2)

非常止め装置の減速開始時の速度を,減速開始点から減速終了点までの時間で除した値とする。こ

こで,非常止め装置の減速開始点及び減速終了点は 1)  による(

図 10 参照)。

3)

ガイドレール上の制動距離及び非常止め装置の減速開始時の速度を用いて,次の式から算出した値

とする。ガイドレール上の制動距離は,次第ぎき非常止め装置の減速開始から試験用おもりが停止

するまでの距離として,レール面上に付く痕跡の平均長さを直接又は間接的に測定した値とする。

(

)

h

V

a

n

2

S

2

60

/

g

=

ここに,

a

平均減速度(

g

n

V

S

次第ぎき非常止め装置の減速開始時の速度(

m/min

h

ガイドレール上の制動距離(

m

図 10−減速特性データの例(下方向の速度及び減速度を正として表した場合) 

d)

b)

の試験を行った後,試験用おもりを上に上げ,制動子が作動前の位置に戻ることを目視確認するこ

とで非常止め装置の作動後に復旧を妨げる破損が生じるか否かを確認する。

e)

d)

の試験を行った後,目視によって正常な動作を妨げる変形及び破損が生じるか否かを確認する。


12

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8.2.3 

構造試験 

7.1

に規定する構造に適合しているか否かを構造図,外形図などによって確認する。

8.3 

上下 段方式の非常止め装置の場合 

8.3.1 

試験方法 

上下

2

段方式の非常止め装置の試験方法は,次のいずれかによる。

a)

上下

2

段方式の非常止め装置を一つの試験体として,8.2.2 の試験手順で試験を実施する。

b)

非常止め装置を作動させたときに,上下段のレール把持部によって生じるレール面上の痕跡が重なら

ない場合は,8.3.2 によって,試験を実施する。

8.3.2 8.3.1 

b) 

の場合の試験方法 

8.3.2.1 

試験装置 

試験装置は,8.2.1 による。

8.3.2.2 

試験手順   

8.3.2.1

の試験装置を用いて,次のいずれかの試験手順で試験を実施する。

a)

上下段で制動力を同等に設定したレール把持部を用いる場合

1)

上下段のいずれかのレール把持部に対して,8.2.2 の試験手順で試験を実施し,レール把持部の性能

を確認する。

2)

適用質量の最大値及び適用質量の最小値は,1)

の試験で用いたレール把持部の適用質量の最大値及

び適用質量の最小値の

2

倍とする。

3)

適用速度の最大値は,1)

の試験で用いた値とする。

b)

下段に制動力を大きく設定したレール把持部を用いる場合

1)

上段及び下段の両方のレール把持部に対して,8.2.2 の試験手順で試験を実施し,上段及び下段のレ

ール把持部の性能を確認する。

2)

適用質量の最大値は,1)

の試験で用いた上段のレール把持部の適用質量の最大値と下段のレール把

持部の適用質量の最大値とを足し合わせた値とする。

3)

適用質量の最小値は,1)

の試験で用いた上段のレール把持部の適用質量の最小値と下段レール把持

部の適用質量の最小値とを足し合わせた値とする。

4)

適用速度の最大値は,1)

の試験で用いた値とする。

8.3.3 

構造試験 

7.2

に規定する構造に適合しているか否かを構造図,外形図などによって確認する。

8.4 

早ぎき非常止め装置の場合 

8.4.1 

試験方法 

早ぎき非常止め装置の試験方法は,次のいずれかによる。

a) 

圧縮試験機による試験  8.4.2 によって,試験する。

b) 

自由落下による試験  8.4.3 によって,試験する。

8.4.2 

圧縮試験機よる試験方法 

8.4.2.1 

試験装置 

試験装置は,早ぎき非常止め装置の最大吸収エネルギーを測定するために,ガイドレールの引抜き力及

びガイドレールの滑り量を計測できる装置とする。

非常止め装置に挟まれたガイドレールの引抜き力及び滑り量を測定できる引張圧縮試験装置を用いなけ

ればならない。この装置は,急激な速度変化なしで動かなければならない。


13

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8.4.2.2 

試験手順 

この試験は,適用速度の最大時における最大試験質量を決定するために次の要領で試験を実施する。

a)

8.4.2.1

に示す試験装置を用い,8.4.2.3 によってガイドレール引抜き力及びガイドレール滑り量を計測

する。

b)

8.4.2.4

によって,計測結果から非常止め装置の最大吸収エネルギーを求める。

c)

8.4.2.5

によって,最大吸収エネルギーから適用速度の最大時における制動可能な質量を計算する。

d)

8.4.2.6

によって,制動可能な質量から安全率を考慮した最大試験質量を決定する。

8.4.2.3 

ガイドレール引抜き力及びガイドレール滑り量の計測 

次の試験手順で試験を

1

回実施し,

最大吸収エネルギーを求めるための引抜き力及び滑り量を測定する。

a)

ガイドレールをレール把持部にくわえさせる。

b)

ガイドレールを押し下げ(引き上げ)

,ガイドレールの滑り距離及び押し下げ荷重(引き上げ荷重)を

測定する。測定は,レール把持部が壊れるとき,又は滑り距離の増加に対して荷重が増加しなくなる

状態まで実施する。

8.4.2.4 

試験結果の表し方とエネルギーの算出 

8.4.2.3

で得られる測定結果を最大引抜き力と滑り距離との関係を示すグラフで示す。非常止め装置が吸

収可能な最大吸収エネルギーは,a)

又は b)

のいずれかの方法によって求める。

a)

永久変形がない場合,荷重の最大点を

A

,滑り距離を とする。この非常止め装置が吸収できるエネ

ルギーは,扇形

0A

S

で囲まれる面積で表される[

図 11 a)

参照]

。面積を近似的に三角形

0A

S

とし

てもよい。

b)

永久変形及び破壊を生じた場合は,荷重が線形増加とみなせる範囲の荷重の最大点を

A

1

,滑り距離を

S

1

,最大荷重を

A

2

,滑り距離を S

2

とする。次の 1)

及び/又は 2)

によってグラフを作成し,非常止

め装置が吸収できるエネルギーを求める。

1)

弾性限界に到達するまでの範囲:弾性限界に到達するまでに吸収できるエネルギーK

1

は,扇形

0A

1

S

1

で囲まれる面積で表される[

図 11 b)

参照]

。面積を近似的に三角形

0A

1

S

1

としてもよい。

2)

最大荷重に対応する値までの範囲:最大荷重までに吸収できるエネルギーK

2

は,扇形

0A

2

S

2

で囲ま

れる面積で表される[

図 11 c)

参照]

。一般的には,滑り距離(S)−荷重(F)の曲線は,上に凸の

形状を示すので,このような場合は最大吸収エネルギーを求めるに当たり,面積を近似的に三角形

0A

2

S

2

としてもよい。


14

A 4305

:2016

   

 a)

  永久変形のない場合 b)  永久変形及び破断を生じる c)  永久変形及び破断を生じる 

場合で弾性限界に到達するまで 

場合で弾性限界を超える範囲を 

の範囲を用いる場合 

用いる場合 

図 11−圧縮試験機による試験測定図の例 

8.4.2.5 

適用速度の最大値における制動可能な質量の計算 

8.4.2.4

で得られる最大吸収エネルギーから,次に示す計算例又は同等の計算方法によって,適用速度の

最大値における制動可能な質量を計算する。

計算に用いる自由落下の距離 は,非常止め装置の適用速度の最大値で計算したものを用い,次の計算

式によって算出する。

(

)

03

.

0

10

.

0

2

60

/

n

2

1

+

+

=

g

V

h

ここに,

h

自由落下の距離(

m

V

1

非常止め装置の適用速度の最大値(

m/min

0.10

応答時間中の移動距離(

m

0.03

制動子とガイドレールとの間のクリアランス分の移動
距離(

m

二つの非常止め装置が吸収できる全エネルギー(エレベータ

1

台分に相当するエネルギー量)は,次の

式によって求める。

2K

M

g

n

h

ここに,

K

非常止め装置によって吸収されるエネルギー(

図 11 

従って計算)

J

K

1

又は

K

2

を用いる場合は,

K

K

1

又は

K

2

に読み替える。

M

制動可能な質量(

kg

h

自由落下の距離(

m

上の式を変形すると次の式を得る。

h

K

M

n

2

g

=

8.4.2.6 

最大試験質量の決定方法 

8.4.2.5

で得られる適用速度の最大値における制動可能な質量から,次に示すいずれかの計算によって最

大試験質量を決定する。


15

A 4305

:2016

a)

弾性限界を超えていない場合,8.4.2.4 a)

で定義した範囲の積分によって計算するエネルギー

K

を用

い,制動可能な質量に対して安全率を

2

として,次の式によって計算する。

h

K

m

n

2

2

g

=

ここに,

m

最大試験質量(

kg

b)

弾性限界を超過した場合,次の二つの計算を行い,大きい方を最大試験質量とする。

1)

弾性限界に到達するまで 8.4.2.4 b) 1)

で定義した範囲の積分によって計算するエネルギー

K

1

を用い,

制動可能な質量に対して安全率を

2

として計算する。

h

K

m

n

1

2

2

g

=

2)

弾性限界を超過した場合,8.4.2.4 b) 2)

で定義した範囲の積分によって計算するエネルギー

K

2

を用

い,制動可能な質量に対して安全率を

3.5

として計算する。

h

K

m

n

2

.5

3

2

g

=

8.4.3 

自由落下による試験 

8.4.3.1 

試験装置 

試験装置は,8.2.1 による。

8.4.3.2 

試験手順 

最大試験質量に調整した 8.4.3.1 の試験装置を用いて,次の試験手順で試験を

1

回実施する。適用速度の

最大値で実施しなければならない。

a)

非常止め装置のレール把持部を設けた試験用おもりの質量を測定する。

b)

試験用おもりを自由落下させて,適用速度の最大値で非常止め装置を作動させた後,試験用おもりが

停止し,保持されるか否かを確認する。このとき,試験用おもりが加速を開始する開始点から試験用

おもりが完全に停止するまで,速度,加速度及び減速度を測定し,検査成績書に記録する。ただし,

速度,又は加速度及び減速度を演算によって算出する場合は,速度,又は加速度及び減速度のいずれ

かを測定すればよい。

c)

更に試験用おもりを上に上げ,制動子が作動前の位置に戻ることを目視確認することで非常止め装置

の作動後に復旧を妨げる破損が生じるか否かを確認する。

8.4.4 

構造試験 

7.3

に規定する構造に適合しているか否かを構造図,外形図などによって確認する。

8.5 

スラックロープ式非常止め装置の場合 

8.5.1 

試験装置 

スラックロープ式非常止め装置のレール把持部の試験方法及び試験装置は,8.4 による。主索又はチェー

ンの一部又は全数が切断したときに,非常止め装置を作動させる機構部の試験装置は,次による。

a)

被試験体の非常止め装置を設けた試験用おもり,適用するエレベータの種類及びローピング方式に応

じた主索又はチェーン,及び滑車を備える。主索又はチェーン,及び滑車は,同等の作用をもつ付加

質量に置き換えてもよい。レール把持部の早ぎき非常止め装置は,試験装置扱いとし,試験対象では

ない。

b)

定格速度から試験を行う場合は,主索又はチェーンを駆動する装置を設ける。

c)

主索又はチェーンを切断する装置又は切断を模擬する装置をもつ。主索又はチェーンの切断位置は,


16

A 4305

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次の条件を考慮し主索又はチェーンの緩み検出にとって,最も厳しい条件とする。

図 4∼図 に主索

又はチェーンの切断位置の例を示す。

1)

主索又はチェーン長さの違いによるアンバランス質量

2)

シーブ上の滑り抵抗などの作動抗力

3)

かご又は釣合おもりの位置

d)

試験用おもりには,速度を測定する装置を設ける。ただし,加速度及び減速度によって速度を算出す

る場合は,加速度及び減速度を測定する装置を設ければよい。

8.5.2 

試験手順 

試験手順は,次による。

a)

非常止め装置を設けた試験用おもりの質量が無積載状態のかご質量と同等であることを確認する。

b)

停止状態又は定格速度での走行状態から,主索又はチェーンを切断し,非常止め装置を作動させる。

c)

試験用おもりが加速を開始する開始点から試験用おもりが完全に停止するまでの速度を記録する。

d)

主索又はチェーンの張力を正常状態に戻し,非常止め装置を作動させる機構部が復旧するか否かを確

認する。

e)

非常止め装置を作動させる機構部に正常な動作を妨げる変形及び破損が生じるか否かを目視確認する。

8.5.3 

構造試験 

7.4

に規定する構造に適合しているか否かを構造図,外形図などによって確認する。

検査 

9.1 

検査方法 

検査は,形式検査とし,箇条 に規定した試験を行い,箇条 及び箇条 に適合したものを合格とする。

なお,検査に用いる値は,試験結果に対して測定機器の精度を含めたものとする。

9.2 

検査成績書 

9.2.1 

次第ぎき非常止め装置の場合 

形式検査成績書には,少なくとも次の内容を記載する。

a)

非常止め装置の形式

b)

製造業者名及びその住所

c)

規格番号及び年号

d)

検査成績書番号及び作成日

e)

試験日及び試験場所

f)

非常止め装置の種類

g)

適用質量の最大値及び最小値

h)

定格速度の最大値及び最小値,並びに適用速度の最大値及び最小値

i)

試験で使用したガイドレールの種類[規格,呼びなど(例:

ISO 7465-2007

T127-1/B

,レール潤滑

油の有無]

j)

適用するガイドレールの種類(規格,呼びなど)

k)

把持部の構造及び作動機構を示す構造図及び外形図,並びに連結機構部を示す構造図及び外形図例

(ばね力を調整して適用質量の範囲を変更する非常止め装置の場合は,調整方法を記載する。

l)

使用した測定機器及びその精度の一覧

m)

試験条件及び試験結果(最大試験質量,最小試験質量,落下距離,制動距離,最大速度,平均減速度,


17

A 4305

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速度,加速度及び減速度の測定波形など)

9.2.2 

上下 段方式の非常止め装置の場合 

形式検査成績書は,9.2.1 による。

9.2.3 

早ぎき非常止め装置の場合 

形式検査成績書には,少なくとも次の内容を記載する。

a)

非常止め装置の形式

b)

製造業者名及びその住所

c)

規格番号及び年号

d)

検査成績書番号及び作成日

e)

試験日及び試験場所

f)

非常止め装置の種類

g)

適用質量の最大値

h)

適用速度の最大値

i)

試験で使用したガイドレールの種類(規格,呼びなど)

j)

適用するガイドレールの種類(規格,呼びなど)

k)

把持部の構造及び作動機構を示す構造図及び外形図,並びに連結機構部を示す構造図例及び外形図例

l)

使用した測定機器及びその精度の一覧

m)

試験条件及び試験結果(制動可能な質量及び吸収エネルギー並びに最大試験質量,又は落下距離,最

大速度及び最大試験質量)

9.2.4 

スラックロープ式非常止め装置の場合 

形式検査成績書には,少なくとも次の内容を記載する。

a)

非常止め装置の形式

b)

製造業者名及びその住所

c)

規格番号及び年号

d)

検査成績書番号及び作成日

e)

試験日及び試験場所

f)

非常止め装置の種類

g)

適用質量の最大値

h)

定格速度の最大値及び適用速度の最大値

i)

試験で使用したガイドレールの種類(規格,呼びなど)

j)

適用するガイドレールの種類(規格,呼びなど)

k)

把持部の構造及び作動機構を示す構造図及び外形図,並びに連結機構部及び作動機構部を示す構造図

及び外形図例

l)

使用した測定機器及びその精度の一覧

m)

試験条件及び試験結果(落下距離,最大速度,加速度及び減速度の測定波形など)

n)

レール把持部の試験条件及び試験結果(制動可能な質量及び吸収エネルギー並びに最大試験質量,又

は落下距離,最大速度及び最大試験質量)

o)

適用条件(主索又はチェーン,滑車等の大きさ,長さなど)


18

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10 

表示 

非常止め装置には,少なくとも次の事項を見やすい箇所に,容易に消えない方法で表示しなければなら

ない。

a)

規格番号及び年号

b)

非常止め装置の製造業者名又はその略号

c)

非常止め装置の形式

d)

適用質量の最大値及び最小値(早ぎき非常止め装置又はスラックロープ式非常止め装置の場合は,最

大値だけ)

e)

適用速度の最大値